ニュース
「低脂肪食」が女性の健康に大きく貢献 がんや糖尿病、心臓病のリスクが減少
2019年09月18日

低脂肪の食事をこころがけ、野菜や果物を十分に摂る食事スタイルを長期的続けると、女性の健康にとって大きなメリットを得られることが、20年以上にわたる大規模な研究で明らかになった。
加齢と閉経にともない女性に増える病気を解明
これまでマウスなど使った実験で、低脂肪の食事を与えたマウスは、高脂肪の食事を与えたマウスにくらべ、がんや腫瘍を発症する割合が少ないことが確かめられている。
ヒトを対象とした小規模な研究でも、低脂肪食により乳がんの診断を受けた女性の健康と寿命を改善できることが示されている。
女性を対象としたより大規模な研究で、低脂肪食の効果について確かなことは分かっていなかった。米国のフレッド ハッチンソンがん研究センターのロス プレンティス氏らはこの課題に取り組んだ。
研究は、米国立衛生研究所(NIH)が資金提供している研究プロジェクト「ウイメンズ ヘルス イニシアチブ(WHI)」の一環として行われた。このプロジェクトは、加齢と閉経にともない女性に増える病気の治療と予防について探る目的で、50歳以上の女性を対象に1993年に開始された。
低脂肪食は女性に恩恵をもたらす
研究チームは、低脂肪食の乳がん、結腸直腸がん、心臓病のリスクに対する影響を調べるために、約5万人の閉経後の女性を、20年以上にわたり追跡て調査した。
1993年に「食事改善試験(DM)」と名付けた研究を開始した。米国に住む閉経後の女性4万8,835人を登録し、その40%を野菜、果物、穀物の摂取量を増やすことを目的とした低脂肪食群に、残りの60%を通常の食事をとる対照群にそれぞれ割り当てた。
8.5年後(中央値)に大腸がん、乳がん、冠状動脈性心疾患のそれぞれのリスクに関して、介入群と対照群の間に有意差はみられなかったが、追跡期間を19.6年後(中央値)に延長した結果、研究チームは次のことを発見した。
・ 乳がんと診断された女性では、野菜、果物、穀物を十分に摂り、低脂肪の食事スタイルを続けると、全死因による死亡リスクが15〜35%減少した。
・ 低脂肪食を摂った女性では、インスリン依存性の糖尿病を発症するリスクが13〜25%減少した。
・ 開始時に高血圧または心血管疾患の既往がなかった女性は、追跡期間中に冠状動脈性心臓病を発症するリスクが15〜30%減少した。
食事の影響は長期にわたり検証する必要が
「女性の栄養と病気の予防に焦点をあてた今回の研究では、健康を維持するために食事が重要であることを裏付ける結果になりました。野菜、果物、穀物を十分に摂る低脂肪の食事スタイルには、健康上の多くの利点があり、しかも副作用はみられませんでした」と、プレンティス氏は言う。
今回の研究では、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を区別せず、また、穀物でも全粒穀物をとくに推奨しなかった。「女性の健康を維持するために、どのような栄養素が重要なのか、今回の研究では解明できませんでした」と、付け加えている。
それでも、「野菜、果物、穀物の増加にともなう脂肪の減少は、乳がん、心臓病、糖尿病を予防・改善するために有利であり、有害な影響はないことが明らかになったことは大きい」と、研究者は結論付けている。
「今回の研究は低脂肪食の長期的な健康への影響を科学的に検証したものです。減量などの短期的な利益を求めている人が、新しいダイエット法や栄養トレンドに飛びつくことは多くみられますが、食事の影響は長期にわたり検証していく必要があります」と、フレッド ハッチンソンがん研究センター公衆衛生学部のガーネット アンダーソン氏は述べている。
New study confirms the long-term benefits of a low-fat diet(フレッド ハッチンソンがん研究センター 2019年9月4日)Low-Fat Dietary Pattern among Postmenopausal Women Influences Long-Term Cancer, Cardiovascular Disease, and Diabetes Outcomes(Journal of Nutrition 2019年6月8日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2022 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「保健指導リソースガイド」に関するニュース
- 2021年05月26日
- 2021年度版【保健指導アトラス】を公開!保健指導に携わる人が知っておきたい法律・制度
- 2021年05月17日
- 5月31日は世界禁煙デー、6月6日まで禁煙週間禁煙で新型コロナに負けないカラダになろう!
- 2021年01月01日
- ※※テストページです※※【よろず相談センター】実際に届いた相談内容をご紹介(1)
- 2020年10月08日
- 10月8日は「糖をはかる日」ー「新型コロナウイルス感染症と糖尿病」「血糖コントロールとQOL]をテーマに Web講演会公開中(視聴無料)
- 2020年10月01日
- 【書籍プレゼント】加倉井さおり氏「勇気づけ保健指導®&健康教育ハンドブック」を10名の方に
- 2020年09月18日
- 【健やか21】AI健康アドバイスアプリを利用した肥満妊産婦への共同研究を開始(国立成育医療研究センター・リンクアンドコミュニケーション社)
- 2020年09月15日
- 【レポート】オンラインセミナー「コロナで変わる保健指導の"いま"を語ろう」開催報告!
- 2020年09月03日
- 【9/8開催】オンラインセミナー「コロナで変わる保健指導の"いま"を語ろう」※見逃し配信決定!
- 2020年06月11日
- 保健指導リソースガイド「第1回オンラインセミナー」開催報告
- 2020年05月26日
- 保健指導の情報提供に大活躍!「健診・予防3分間ラーニング」をYouTubeにて公開
最新ニュース
- 2022年08月16日
- 食事指導を個別化し肥満やメタボを改善 1人ひとりの好みやスタイルに合わせた食事プログラム
- 2022年08月16日
- 中年女性の肥満を予防・改善するための新しいガイドライン 保健指導は女性にも必要 早期の介入が効果的
- 2022年08月16日
- 【新型コロナ】「子供のメンタルヘルス」を改善 大人のワクチン接種や社会経済的な環境が影響
- 2022年08月16日
- 【新型コロナ】家庭内暴力など家族の問題が増加 児童虐待の不安はどういう人に起こりやすい?
- 2022年08月16日
- 【新型コロナ】感染後3ヵ月で糖尿病と心血管疾患のリスクが上昇 生活スタイル改善のアドバイスが必要
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ