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アルコール問題は「ワーク・ライフ・バランス」が上手くいっていない人に多い コロナ禍で問題飲酒が増加
2024年03月18日
仕事のストレスや仕事のパフォーマンス、仕事と家庭のバランスなど、「ワーク・ライフ・バランス」が上手くいっていない人は問題飲酒が多いことが、富山大学の研究で明らかになった。
とくに男性では、仕事のパフォーマンスが低いと自己評価している人、さらに女性では、親しい友人が少ない人に、それぞれ問題飲酒が多いことが分かった。
コロナ禍によるストレスや、在宅勤務の増加などにより、飲酒量が増加している人が多く、「職場で労働者を問題飲酒から守るとともに、労働環境の悪循環の改善をはかるための取り組みを行う必要がある」と、研究者は述べている。
「ワーク・ライフ・バランス」が上手くいっていない人は問題飲酒が多い
コロナ禍によるストレスや、在宅勤務の増加などにより、飲酒量が増加している人が、コロナ禍前に比べて多いことが報告されており、問題飲酒は世界的に課題になっている。 世界保健機関(WHO)は、問題飲酒が世界中の人々の健康に対する主要な危険因子のひとつであり、持続可能な開発目標(SDGs)の多くの健康関連の目標に、直接影響をおよぼすと報告している。 なかでも、労働者の問題飲酒の割合は、学生や主婦などに較べて高く、労働者の問題飲酒がプレゼンティーズムやアブセンティーズムを引き起こし、業務効率が落ちたり、仕事の休業・欠勤が増えるなど、労働生産性の低下の原因になっているおそれがある。 さらに過剰な飲酒は、全死因での死亡リスク、とくにがんや脳血管性死亡リスクを増加させることも明らかになっている。 そこで富山大学の研究グループは、労働者での問題飲酒を防ぐための方策を得るために、労働者の問題飲酒の要因を、仕事の側面だけでなく、家庭生活や社会活動の観点からも包括的に明らかにする研究を行った。男性の24%、女性の10%が問題飲酒 仕事と生活のバランスが影響
調査では、3,136人の公務員のデータを解析。その結果、問題飲酒の関連要因として、「ワーク・ライフ・バランス」の重要性が明らかとなった。 問題飲酒の割合は、男性で24.3%、女性で10.3%だった。問題飲酒は、男性では、「家庭が原因で仕事に影響がある」とう人は、ない人に比べて1.54倍、「仕事が原因で家庭に影響がある」人は、ない人に比べて1.63倍、「主観的な仕事のパフォーマンスが悪い」人は、良い人に比べて1.34倍、それぞれ多いことが明らかとなった。 さらに女性では、「仕事が原因で家庭に影響がある」という人は、ない人に比べて2.45倍、「親しい友人が少ない(3人未満)」人は、多い人(3人以上)に比べて1.59倍、問題飲酒が多いことが明らかになった。
労働者の問題飲酒に関連する要因
出典:富山大学、2024年
関連情報
「酒をやめるべきだと感じたことがある」などアルコールの問題を調査
「問題飲酒」は、アルコール依存症およびアルコール乱用や有害な飲酒、アルコールに関連した問題や結果を抱えていること、またはそのような問題のリスクがあることをさす。 厚生労働省の2019年国民健康・栄養調査によると、「生活習慣病のリスクを高める量の飲酒をしている者」の割合は、40歳代の男性で21.0%、女性で13.9%となっている。 研究グループは今回、公務員を対象としたストレスや健康に関する国際共同研究である「日本公務員研究」の2014年の3,136人のデータを解析。 問題飲酒について、CAGEスコアを用いて評価した。具体的には、「今までに酒をやめるべきだと感じたことはあるか」「あなたの飲酒が批判されて困ったことはあるか」「自分の飲酒に関して罪悪感を感じたり悪いと感じたことはあるか」「朝一番(目が覚めた後)、二日酔いや持続的な気分の悪さから飲酒をしたことがあるか」の4項目のうち、2項目以上該当する場合に問題飲酒と定義した。 調査項目は、基本属性(性別や年齢など)、飲酒習慣(飲酒頻度や飲酒量、問題飲酒の有無)、仕事の特性(仕事のストレスや主観的な仕事のパフォーマンスなど)、ワーク・ライフ・バランス(婚姻状況や仕事と家庭のバランス)、社会活動(知人と関わる頻度や親しい友人の数など)の計17項目とした。労働者を問題飲酒から守るための対策が必要
研究は、富山大学学術研究部医学系の茂野敬助教、立瀬剛志助教、関根道和教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Alcohol」に掲載された。 「労働者の問題飲酒を予防することは、世界的に重要な課題であると言えます。これまで仕事の特性や、家庭生活、社会活動の有無が、それぞれ労働者の問題飲酒のリスク要因であることは、明らかとなっていますが、仕事のストレスや仕事のパフォーマンス、仕事と家庭のバランス、家庭以外での他者との関わりを含めて、男性と女性での問題飲酒のリスク要因を詳細かつ包括的に明らかにした研究はありませんでした」と、研究者は述べている。 「本研究で明らかとなった要因を考慮することで、職場で労働者を問題飲酒から守るとともに、労働環境の悪循環の改善をはかるための取り組みが適切に行われようになることが期待されます」。 なお、今回の研究で分析に使用したデータは2014年のコロナ禍前のものであり、「コロナ禍にともなうストレスや在宅勤務などにより、飲酒量が増加したという報告があることから、今後、コロナ禍前後での飲酒習慣の違いや、それをふまえて縦断的にデータの分析を継続することで、労働者の問題飲酒のリスク要因の特定をはかりたい」としている。 富山大学学術研究部医学系 成人看護学2講座富山大学学術研究部医学系 疫学・健康政策学講座
Examination of Factors Related to Problem Drinking Among the Working Population: The Japanese Civil Servants' Study (Alcohol 2024年2月8日)
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