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「ノンアルコール飲料」を利用すると飲酒量が減少 男⼥ともに飲みすぎを減らすきっかけに 筑波大学

 ノンアルコール飲料を利用することで飲酒量が減少することが、筑波大学が20歳以上の男女を対象に実施した試験で明らかになった。

 男性では飲酒日の飲酒量が減少し、女性では飲酒頻度が減少した。ノンアルコール飲料の利用の影響に性差があることも分かった。

 「ノンアルコール飲料が、男⼥問わず飲酒量を低減するきっかけになる可能性があります。過剰なアルコールの飲みすぎによる健康被害を抑えるために、性差をふまえた対策も必要と考えられます」と、研究者は述べている。

アルコールの飲みすぎを防ぐのが目標

 過度のアルコール摂取について、世界保健機関(WHO)などは、アルコール依存症などの健康問題を引き起こすだけでなく、家庭内暴力や飲酒運転による交通事故など、他の深刻な問題にもつながると指摘している。

 国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」でも、アルコールの有害な摂取を含む、乱用の防止・治療を強化することがターゲットのひとつに掲げられている。

 飲酒の肥満に対する影響は、男性は女性に比べ大きいことが知られている。男性は一般的に、飲酒量が増えやすく、アルコール摂取にともないカロリーを過剰に摂取しやすい。

 健康日本21では、適度な飲酒は1日にアルコール20g程度まで(ビール500mL、日本酒1合に相当)で、1日に40gのアルコールは「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」とされている(女性の適度な飲酒量は男性の1/2~2/3程度)。

ノンアルコール飲料の利用は飲みすぎを防ぐのに効果的

 アルコールの飲みすぎを防ぐために、アルコールテイスト飲料、いわゆるノンアルコール飲料の利用が期待されている。

 筑波大学の研究グループはこれまで、アルコール依存症の患者などを除いた20歳以上の成人対象に、ノンアルコール飲料を提供する介入群と対照群の2つの群に無作為に分けて、飲酒量の推移を観察するランダム化比較試験を実施している。

 その結果、介入開始前からの飲酒量減少率は、介入群が対照群よりも有意に上回っており、ノンアルコール飲料の提供が飲酒量を減らす対策として有効であることを実証した。

ノンアルコール飲料の効果を性差の観点から検討

 一方、ノンアルコール飲料を効果的に利用するのは有用という報告が増えているものの、その有効性には個人差が大きくみられる。

 そこで研究グループは今回、ノンアルコール飲料の提供が飲酒量におよぼす影響について、これまでに実施したランダム化比較試験を二次解析し、性差の観点から検討した。

 その結果、ノンアルコール飲料を12週間提供した介入群では、対照群に比べ、飲酒量が大幅に減少した。

 また、介入開始前から研究期間中の飲酒量の平均変化率については、介入群は対照群よりも有意に低値を示したが、介入による飲酒量の減少率に性差はみられなかった。

 一方で、飲酒頻度と飲酒日に限った飲酒量の推移をみると、飲酒頻度は主に女性で有意に減少し、介入群の男性よりも女性の方が、有意に飲酒量が減少していた。飲酒日の飲酒量については、男性のみ介入による有意な減少はみられなかった。

ノンアルコール飲料の利用により飲酒量が大幅に減少
男性では飲酒日の飲酒量が減少し、女性では飲酒頻度が減少した

出典:筑波⼤学、2024年

ノンアルコール飲料は男⼥ともに飲酒量を減らすきっかけに

 これらの結果から、ノンアルコール飲料の利用は、男女ともに、飲酒量を減少するのに効果的であることが明らかになった一方で、そのプロセスは男女で異なることも示された。

 「本研究により、ノンアルコール飲料が、男⼥問わず飲酒量を低減するきっかけになる可能性が示されました。同時に、ノンアルコール飲料の提供による飲酒量減少のプロセスには性差があることも分かりました。今回の研究は、性差をふまえた過剰飲酒対策を推進するうえで重要な知⾒となると期待されます」と、研究者は述べている。

 「今後は、アルコール摂取量の低減に対するノンアルコール飲料の利⽤効果を⾼める⽅略について検討するとともに、その効果がどの程度持続するのかを追加して検証していく予定です。また、今回対象に含まれなかった20歳未満の⼈やアルコール依存症の⼈への影響についても考慮する必要があります」としている。

ノンアルコール飲料の効果を調べるランダム化比較試験を実施

 今回の試験の対象となったのは、アルコール依存症の患者、妊娠中や授乳中の人、過去に肝臓の病気と言われた人を除いた20歳以上で、週に4回以上飲酒し、その日の飲酒量が男性で純アルコール40g以上、女性で同20g以上、ノンアルコール飲料の使用が月1回以下の参加者123人(女性69人、男性54人)。

 参加者を、ノンアルコール飲料を提供する介入群と対照群の2つの群に無作為に分け、介入群には、12週間にわたり、4週間に1回(計3回)、ノンアルコール飲料を無料で提供した。

 両群とも、アルコール飲料の入手および飲酒に関してはとくに制限をすることはなく、自由に日々を過ごすよう指示し、介入から20週間、毎日、アルコール飲料とノンアルコール飲料の摂取量を記録した。その後、性別ごとの対照群と介入群の飲酒量や飲酒頻度の比較、および、研究期間中の飲酒量の平均変化率(介入期間中と8週間の後観察中の飲酒量の介入開始前からの変化率)の男女間比較を行った。

 研究は、筑波大学医学医療系および健幸ライフスタイル開発研究センターセンター長の吉本尚氏、同大体育系の土橋祥平助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Public Health」に掲載された。

筑波⼤学 健幸ライフスタイル開発研究センター
Gender differences in changes in alcohol consumption achieved by free provision of non-alcoholic beverages: a secondary analysis of a randomized controlled trial (BMC Public Health 2024年1⽉10⽇)
Effect of provision of non-alcoholic beverages on alcohol consumption: a randomized controlled study (BMC Medicine 2023年10月2日)
[Terahata]
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