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「食中毒」が気候変動による気温上昇で増加 どうやって防ぐ? サルモネラ食中毒との戦い 最新情報

 今年の夏も、気温と湿度が記録的に高い日が続き、細菌による食中毒の発生が多かった。

 気候変動にともなう気温上昇により、食中毒のリスクが増加する可能性があるという研究が発表された。

 サルモネラ菌による食中毒を予防するために、新しい技術の開発が進められている。

今年の夏も食中毒が多発

 今年の夏も、気温と湿度が記録的に高い日が続き、細菌による食中毒の発生が多かった。

 とくに懸念されたのが、卵や鶏肉などからのサルモネラ菌が原因の「サルモネラ食中毒」だ。日本でもサルモネラ菌は、代表的な食中毒の原因になっている。

 卵やその加工品、鶏肉・食肉・内臓肉、養殖魚介などの生鮮食品が原因となるのに加えて、食品の取扱者や器具などからサルモネラ菌が付着することも多い。

気候変動による気温上昇で食中毒のリスクが増加

 サルモネラ菌は、高温・多湿の環境で増えやすい。気候変動にともなう気温上昇により、食中毒のリスクが増加する可能性があるという研究を、米国微生物学会(ASM)が発表した。

 米ウィスコンシン大学は、生鮮食品であるレタスに付着したサルモネラ菌が、高温や多湿の環境下で増殖しやすいことを実験で確認した。

 研究者グループは、気温や湿度が高い期間と低い期間、付着後に何日たつと増殖するかなど、さまざまな条件でサルモネラ菌の個体数を測定した。

 その結果、高温・多湿の環境下で、レタス内のサルモネラ菌は急速な増殖能力を高め、気候変動により気温・湿度の高い日が増えると、感染の可能性が拡大することが示された。

 「サルモネラ食中毒は、米国でも毎年120万人が罹患しています。気候変動は食品の安全問題で深刻な脅威になる可能性があります」と、同大学の植物病理学部のジェリ バラク教授は述べている。

サルモネラ菌による食中毒を予防する方法

 東京都保健医療局は、サルモネラ菌による食中毒を予防するために、次のことを推奨している。

  • 食肉や卵などを取り扱った手指や調理器具は、そのつど洗浄・消毒する。
  • 卵は新鮮なものを購入し、購入後は冷蔵保管する。
  • 卵を生食するときは、表示されている期限内に食べる。
  • 卵を割った後は、ただちに調理して早めに食べる。卵の割り置きはしない。
  • 肉や卵は冷蔵庫で保存する。
  • 調理の際は食品の中心部まで火が通るように十分に加熱する(中心温度75℃1分間以上)。
  • 定期的にまたは必要に応じて検便を行う。
  • ネズミ、ゴキブリ、ハエなどの駆除を行う。

サルモネラ食中毒を防止するために

 米国でも、食中毒の発生を防ぐため全国的な取り組みが行われているが、サルモネラ菌の感染率は過去30年間ほとんど減っていないという。

 「原因となるサルモネラ菌が、どのように伝染するかを解明する必要があります。たとえば、ほとんどの人が汚染された食品や水を介して感染しているのであれば、衛生状態を改善して食品や水の安全性を高めることで感染を防げます」と、米オタゴ大学国際保健学部のジョン クランプ教授は言う。

 世界では、サルモネラ食中毒が原因で死亡する人の数は年間に7万7,500人に上る。とくに衛生環境が良好でない国や地域では、サルモネラ菌の感染は重篤な合併症を引き起こし、致死率は15%にも上るという。

 「重症化したり致命的であることもあるサルモネラ食中毒を防止するための、革新的なワクチンの臨床開発の取り組みも進めています」と、クランプ教授は述べている。

サルモネラ菌を1時間以内にみつけだすシステムを開発

 米ミズーリ大学が進めている別のプロジェクトでは、食中毒のリスクを減らすために、鶏肉などの家禽や卵・食肉のサプライチェーン全体を通じて、サルモネラ菌などを迅速に検出し、軽減するための新しい技術を開発している。

 米国食品医薬品局(FDA)によると、店頭に並ぶ鶏肉の25パックに1パックは、サルモネラ菌に汚染されている可能性がある。鶏肉はサルモネラ菌の感染の主な発生源であり、養鶏産業の支援に重点を置く必要がある。

 「複数のポータブルセンサーから収集されたリアルタイムデータを、センサーに対応した革新的な支援システムで解析し、サルモネラ菌などによる汚染を1時間以内にみつけだすシステムの実現を目指しています」と、同大学工学部でコンピューターサイエンスを研究しているマフムード アルマスリ氏は言う。

 食品を媒介として感染する細菌などの検査では、現在の標準的なやり方だと、結果が出るまでに少なくとも24時間がかかるが、これを大幅に縮めることを目標としている。

 「食中毒を引き起こす細菌は短時間で急速に増殖するため、わずか24時間でも遅れると、食品にさまざまな危険な変化が起こる可能性があります」と、同大学健康科学部のケイト トラウト氏は述べている。

細菌による食中毒 (厚生労働省)
知って安心~トピックス~ (東京都保健医療局「食品衛生の窓」)

Climate Change Increases Foodborne Illness Risk From Raw Produce (米国微生物学会 2024年8月29日)
Time of arrival during plant disease progression and humidity additively influence Salmonella enterica colonization of lettuce (Applied and Environmental Microbiology 2024年8月29日)
Urgent investment needed in deadly disease (オタゴ大学 2022年1月31日)
Complications and mortality of non-typhoidal salmonella invasive disease: a global systematic review and meta-analysis (Lancet Infectious Diseases 2022年2月1日)
An innovative approach to shield against foodborne illness (ミズーリ大学 2024年2月12日)
[Terahata]
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