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テレビの視聴時間を減らして糖尿病に対策 糖尿病予備群の段階で心筋梗塞や脳卒中のリスクは上昇

 テレビの視聴時間を最小限にすると、糖尿病に関連する心臓病や脳卒中などを予防できるという研究が発表された。

 テレビの視聴時間を1日1時間未満に制限すると、糖尿病の遺伝的なリスクのある人でも、動脈硬化性疾患のリスクを打ち消せる可能性があるという。

 「座ったままテレビを見ている時間が長引いたら、立ち上がって体を動かし、ウォーキングやヨガ、太極拳などの運動を行うと効果的です」と、研究者はアドバイスしている。

テレビの視聴時間を減らすと糖尿病を予防できる

 テレビの視聴時間を最小限にすると、糖尿病の遺伝的なリスクのある人でも、心臓病や脳卒中などを予防できる可能性があるという最新の研究結果を、米国心臓学会(AHA)が発表した。研究成果は、「Journal of the American Heart Association」に掲載された。

 糖尿病の遺伝的なリスクのある人でも、座ったまま過ごす時間を減らし、テレビを1日1時間以上見ないようにすると、血管や心臓の合併症のリスクが上昇するのを抑えられる可能性があるという。

 「糖尿病のリスクが高い人は、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性の疾患の発症リスクが高いことが知られています」と、香港大学公衆衛生学部のヨンウォン キム氏は言う。

 「しかし、テレビの視聴時間を1日1時間未満に制限すると、糖尿病の遺伝的なリスクに関連する、これらの疾患のリスクを打ち消せる可能性があります」としている。

糖尿病予備群の段階で心筋梗塞や脳卒中などのリスクは上昇

 2型糖尿病になる前の段階は、「予備群」や「境界型」と呼ばれている。健診で糖尿病予備群と指摘されても、多くの人は何の症状もないので、「まだ糖尿病になったわけではないから、食事を改善したり、運動をするのを後回しにしても良いだろう」と思っているかもしれない。

 しかし、糖尿病予備群の段階から、動脈硬化は進行しており、血管の老化が進み、心筋梗塞や脳卒中などのリスクは上昇している。

 「糖尿病の遺伝的要因に関連する動脈硬化性心血管疾患を予防するために、テレビの視聴時間を減らすことが、ライフスタイル改善の目安になる可能性があります」と、同大学公衆衛生学部のメンヤオ ワン氏は言う。

 「座ったままテレビを見ている時間が長引いたら、立ち上がって体を動かし、ウォーキングやヨガ、太極拳などの運動を行うようにすると、糖尿病のリスクのある人であっても、アテローム性動脈硬化性の疾患などを予防できる可能性があります」としている。

テレビを見ている時間が長引いたら立ち上がって体を動かす工夫を

 血管に悪玉コレステロールがたまるとプラークが作られる。アテローム動脈硬化は、血管の壁にプラークが蓄積することで引き起こされ、進行すると、命に関わる心筋梗塞や脳卒中、末梢動脈疾患などの病気につながる。

 血糖値が高くなっている人は、それを放置していると、血管の老化が早まることが知られている。プラークが増えやすく、血管の壁がダメージを受けやすくなる。

 さらに、血糖値を下げるインスリンの効果が発揮されにくくなるインスリン抵抗性があると、動脈硬化がさらに進行しやすくなる。

 「糖尿病のリスクのある人は、それを早期発見して適切な対策を行うことと、座ったまま過ごす時間を減らし、立ち上がってなるべく体を動かす工夫をすることが、健康を改善するための潜在的な介入ツールになる可能性があります」と、米国心臓学会の身体活動委員会およびバージニア大学で運動プログラムの研究をしているデイモン スウィフト氏は言う。

 「糖尿病のリスクのある人は、糖尿病予備群の段階で、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクが上昇します。自宅や職場などで、長時間座ったまま過ごすことの多い人に対する、効果的な保健指導が必要です」としている。

テレビを1日2時間以上見ている人は心血管疾患リスクが上昇

 研究グループは今回、大規模研究である「UKバイオバンク」に参加した、英国の平均年齢が56歳の34万6,916人の成人を、約14年間追跡して調査した。うち2万1,265人が動脈硬化性心血管疾患を発症した。

 参加者ごとに、糖尿病に関連する138の遺伝子変異にもとづき、糖尿病の多遺伝子リスクスコアを算出した。これは、多くの遺伝子変異からの情報を組み合わせることで、特定の病気や症状を発症するリスクを予測する新しい統計的手法だ。

 参加者を、糖尿病の遺伝的なリスクにより3つのカテゴリーに分け、1日のテレビ視聴時間との関連を調べた。参加者のうち、テレビの視聴時間が「1日に1時間以下」という人が21%、「1日に2時間以上」という人が79%に上った。

 その結果、テレビを1日2時間以上見ている人は、1日1時間以下しか見ていない人に比べて、糖尿病の遺伝的なリスクに関係なく、アテローム性動脈硬化性の心血管疾患のリスクが12%高くなることが分かった。

 さらに、中程度から高程度の糖尿病の遺伝的リスクのある人は、テレビの視聴時間を1日1時間以下に制限していると、心血管疾患を発症するリスクは上昇しないことが示された。

 糖尿病を発症するリスクが高く、テレビ視聴時間が1日1時間以下の人では、10年間に心血管疾患を発症するリスクは2.13%で、糖尿病のリスクが低く、テレビ視聴時間が1日2時間以上の人の2.46%よりも低く抑えられた。

Less TV time may lower heart disease risk, even for those with high genetic risk for diabetes (米国心臓学会 2025年3月12日)
Genetic Susceptibility to Type 2 Diabetes, Television Viewing, and Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk (Journal of the American Heart Association 2025年3月12日)

[Terahata]
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