寿司のネタとシャリは分けて食べるべき?~血糖値への影響を調べた研究結果~
食事の際、炭水化物を先に食べると血糖値が上がりやすいため、「健康のためにはご飯は野菜やたんぱく質のおかずの後に食べるべき」とされている。では、炭水化物(すし飯)とたんぱく質(魚)が一体化している「寿司」についてはどうなのか。食後血糖に悪影響を与えないようにするためには、それぞれを分けて食べたほうがよいことになるのか。そんな疑問に対するひとつの回答が、ゼンショーホールディングスと京都大学の共同研究から示された。
寿司はそのままの形で食べてよい
食後の血糖値に気を配り、日頃から食べる順番を気にしている人のなかには、寿司を食べる際にこんな疑問を抱くことがあるかもしれない。炭水化物とたんぱく質が一体化している寿司は、そのまま食べてよいのだろうかー。血糖値のことだけを考えれば、ネタとすし飯を分けて食べたほうがよいのではー。
ゼンショーホールディングスと京都大学が共同で実施した「炭水化物とたんぱく質の同時摂取がヒトの食後の血糖値変動に与える影響」というテーマの研究結果1)によると、その答えは「寿司はそのままの形で食べてよい」だ。
この研究は18~25歳の健常な男女30名を対象に、寿司の食べ方と食後血糖値の変化を検証したもので、以下2つの測定を行った。
- 【測定①寿司とすし飯をそれぞれ摂取した際の食後血糖値の変化】
■寿司12貫(写真A)、シャリ(すし飯)のみ12貫をそれぞれ被検者に食べてもらい、食後血糖値の変化を測定。 - 【測定②ネタとすし飯を分けて摂取した場合を含めた食後血糖値の変化】
■半シャリ(すし飯の量を半分にしたもの)寿司12貫を用いて、ネタとすし飯を食べる順番が食後血糖値に与える影響についてを測定。
結果は以下のとおり。
- 【測定①の結果】
■寿司を摂取した場合、シャリのみを食べたときよりも血糖値の上昇が抑えられた(図B)。 - 【測定②の結果】
■ネタ→シャリの順で別々に食べた場合と、寿司として同時に食べた場合とでは食後の血糖値の変化に大きな差はみられなかった(図C)。
S:寿司、R:すし飯、RT:すし飯→寿司種、TR:寿司種→すし飯
※p<0.05,p<0.01 ...統計学的に有意な差があることを示しています。
血糖上昇曲線下面積 ...n=30, mean±s.d.One-way ANOVA and Tukey's HSD test (*p<0.05, **p<0.01)
この結果からは、寿司は寿司本来の形で食べても血糖値の上昇を過度に心配する必要がないことが示されたといってよい。
共同研究者である京都大学大学院の林由佳子教授は、結果を踏まえて次のように述べている。
「血糖値のコントロールに関する話に糖尿病や動脈硬化の名称がよく挙げられるのは、血管がダメージを受けることに関係するからです。血管へのダメージを防ぐためには、血糖値のコントロールが大事であることから、サラダから先に食べるベジタブルファーストや肉を先に食べるミートファーストといった食べ方が提唱されています。こうした食べ方には、確かに血糖値上昇が抑えられる効果があります。
しかし、日本食ではおかずとご飯を一緒に食べることが多く、寿司やどんぶり、カレーライスはご飯を一緒に食べることを前提としています。果たして、血糖値のコントロールのために寿司のネタだけを先に食べてシャリを後で食べないといけないのでしょうか? 今回の実験の結果、答えは"寿司は寿司の形で食べてよし"でした。目の前の寿司のネタとシャリを分解することはありません。そのままおいしくいただきましょう」。
寿司を食べるときに気をつけたいこと
今回の研究結果は、寿司を楽しむうえで安心材料となるが、「寿司ならいくら食べても血糖値を気にしなくてよい」ということではない。むしろ、酢飯は砂糖を使用しているため、白米より糖質量が多くなる。加えて、回転ずしではつい食べ過ぎてしまうことに注意したい。日頃から「腹八分目」を意識したいところだが、寿司の場合は自分が腹八分目になる個数を把握しておき、カウントしながら食べると食べ過ぎを防げる。
ちなみに、脂肪の少ない魚の摂取は、インスリン(血糖を下げるホルモン)が効きにくくなっている状態(インスリン抵抗性)を改善することが期待できる2)。そのため選び方を工夫するなら、タイやヒラメといったネタを選ぶとよいだろう。
参 考
1)寿司の摂取による食後血糖への好影響について確認 ゼンショーホールディングスと京都大学が2025年8月28日に学会発表(株式会社ゼンショーホールディングス)
2)Liaset B, et al. Nutr Res Rev. Jun;32(1):146-167, 2019
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