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中年期の"1日2食以下"が高齢期の身体的フレイルと関連 高齢期の食品摂取多様性が予防因子に

 国立長寿医療研究センターの研究グループが、中年期に「1日2食以下」の欠食習慣がある人は、高齢期に身体的フレイルを発症するリスクが高いことを明らかにした。さらに、高齢期に食品摂取の多様性が高い場合には、中年期の欠食によるフレイルリスクが軽減される可能性も示された。

 本研究は、中年期からの食習慣改善の重要性を示すとともに、高齢期の食の多様性の意義を新たに提示している。

壮年期・中年期の欠食習慣と高齢期フレイルの関連を検証

 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター(以下、国立長寿医療研究センター)は、これまでに75歳以上の地域在住高齢者において、朝食欠食がフレイル有病率と関連することを報告している。フレイルの主要因である筋量・筋力低下に対し、高齢期のたんぱく質摂取量および朝食の質向上が筋力低下抑制に寄与する可能性が示されている。
 一方、壮年期(25~44歳)および中年期(45~64歳)の食習慣が、高齢期(65歳以上)のフレイル発症リスクにどの程度影響するかについては、これまで知見が限られていた。

 そこで、本研究では、愛知県知多市在住の65歳以上の高齢者約5,000人を対象に、過去の欠食習慣と高齢期の身体的フレイルとの関連を明らかにすることを目的とし、調査を実施した。

中年期の「1日2食以下」が高齢期フレイルと有意に関連

 研究は、国立長寿医療研究センター(理事長:荒井秀典)の老年学・社会科学研究センター、予防老年学研究部の西島千陽研究員、島田裕之センター長らのグループによるもので、専門学術誌「Journal of the American Medical Directors Association」に掲載された。

 対象者は愛知県知多市で実施された大規模コホート研究National Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromes(NCGG-SGS)に参加した65歳以上の高齢者5,063名(平均年齢73.7±5.5歳、女性54.8%)で、認知症や認知機能低下のある人は除外された。
 壮年期と中年期の食事回数は回想による自己申告で、高齢期は現在の食事回数を確認し、「1日2食以下」を欠食習慣ありと定義した。2020年改定の日本版CHS基準を用いて、フレイルまたはプレフレイルに該当した人を「身体的フレイル」と判定した。

2020年改定 日本版CHS基準

項 目 評価基準
体重減少 6ヶ月で2kg以上の(意図しない)体重減少
筋力低下 握力:男性<28kg、女性<18kg
疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度 通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動 ①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答

判定:3項目以上に該当:フレイル、1~2項目に該当:プレフレイル、該当無し:健常

出典:プレスリリース「高齢期の身体的フレイルと過去の欠食習慣(1日2食以下)との関連についての調査研究」表1
(国立長寿医療研究センター、2025年10月15日)

 対象者のうち、壮年期に欠食ありと回答した人は3.6%、中年期は2.8%、高齢期は4.1%だった。また、身体的フレイルまたはプレフレイルに該当した人は53.8%だった。

 さらに、壮年期~中年期の欠食パターンを3分類し、将来のフレイル発症との関連を統計的に評価した。各世代を通して欠食なしの人と比べると、中年期のみで欠食があった群、壮年期から中年期にかけて継続して欠食があった群のいずれも、高齢期に身体的フレイルを発症するリスクが有意に高いことが示された。

出典:プレスリリース「高齢期の身体的フレイルと過去の欠食習慣(1日2食以下)との関連についての調査研究」図2
(国立長寿医療研究センター、2025年10月15日)

 この結果をふまえ、研究グループは中年期の欠食に特に焦点を当てた追加解析を行った。中年期に欠食があった場合、高齢期に食事回数を改善してもフレイルリスクが残存する可能性が示唆された。

出典:プレスリリース「高齢期の身体的フレイルと過去の欠食習慣(1日2食以下)との関連についての調査研究」図3
(国立長寿医療研究センター、2025年10月15日)

高齢期の食品摂取の多様性が、欠食によるリスクを軽減

 さらに研究グループは、高齢期の食品摂取多様性(食品摂取多様性スコア)にも着目し、中年期の欠食の有無と高齢期の身体的フレイル発症との関連を検討した。
 まず、高齢期の食品摂取多様性スコアが低い場合、欠食歴のない群と比較して、欠食歴のある群ではオッズ比2.54と高く、フレイルとの有意な関連が認められた。一方、食品摂取多様性が高い群では、欠食歴とフレイル発症との関連は有意でなく、影響が緩和されていた(オッズ比1.35)。

 つまり、中年期に欠食習慣があった場合でも、高齢期に多様な食品群をバランスよく摂取することで、身体的フレイル発症リスクが軽減される可能性が示された。

フレイル予防には中年期からの欠食改善と高齢期の食多様性が鍵

 近年、1日2食以下の欠食習慣、中でも朝食欠食の習慣を持つ中年期の人の割合が増加傾向にあるが、朝食欠食は糖尿病、脳出血、肥満の発症リスクとの関連が報告されている。そのため、40~74歳を対象とした特定健康診査では「朝食を抜くことが週に3回以上ある」という質問項目を設け、食習慣の状況把握を行っている。
 令和5年「国民健康・栄養調査」によると、欠食の要因として、不規則な生活習慣以外に、仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がない、経済的に余裕がない、面倒くさい、瘦身願望などさまざまな理由が背景にあるとされている。

 本研究は、中年期に欠食習慣があっても高齢期に食の多様性を確保することで、フレイル発症リスクを低減できる可能性を示した。中年期からの食習慣の見直しが、将来のQOLに大きく影響することを改めて示したことから、医療・保健指導の現場では、欠食理由(忙しさ・家計・生活リズムなど)を踏まえた継続的支援と、中年期からの食習慣改善が重要となる。
 研究グループは、今後1日3食の規則的な食習慣をいかに促進するかについて、効果的な介入方法の検討が必要であると指摘している。


* 食品摂取多様性スコア:10食品群(肉類、魚介類、卵類、牛乳・乳製品、大豆製品、緑黄色野菜類、果物、海藻類、いも類、油脂類)を毎日摂取する場合を1点、他の摂取頻度を0点として食品摂取の多様性を10点満点で評価する指標

参考情報

高齢期の身体的フレイルと過去の欠食習慣(1日2食以下)との関連についての調査研究 ~中年期(45から64歳)に欠食習慣のある人は、高齢期に身体的フレイルになりやすいことなどが示唆された~|国立長寿医療研究センター(2025年10月15日)
Past meal-skipping habits associate with physical frailty in later life: a retrospective cohort study|Journal of the American Medical Directors Association(2025年10月9日)
令和5年「国民健康・栄養調査」の結果|厚生労働省(2024年11月25日)

[保健指導リソースガイド編集部]
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