オピニオン/保健指導あれこれ
企業で働く保健師のキャリアプランを考える ~攻めの保健師養成を目指して~

No.2 攻めの保健師 サラリーマン編

保健師(株式会社オフィス・アニバーサリー 、産業医事務所)
久保さやか
 前回は、私の専門職としてのキャリアである看護師と産業保健師時代を振り返り、「マネジメント」との衝撃的な出会いについて、ご紹介しました。

 マネジメントを何とかしなければ、何も解決できない事を知ったことは、保健師としての限界を知った事でもありました。従業員の仕事のやり方そのものには、タッチ出来ないと思ったからです。そこで私は、自分がサラリーマンになって、実際にマネジメントをする立場になってみようと決意しました。

自分がサラリーマンになってみた

 

 随分と思い切った事をしたのかもしれません。当時、「これまでのキャリアが勿体ない」と言ってくれた人もいました。保健師としての仕事をするために、保健師の仕事を辞める。逆説的かもしれませんが、私の中では、一貫していました。

 入社したのは、飲食業の側面も持つ製造小売業の会社に、総合職として勤務しました。その会社では、3年程度勤務しましたが、役員秘書や人事部、経営戦略部に所属し、様々な仕事を経験しました。

 これまでの保健師としての経験も活かし、スーパーマーケットやディサービスでの高齢者を対象とした食育講師や、ダイバーシティ推進・被災地支援にも取り組みました。変わった経験としては、株主総会での司会もしたこともあります。また、運営店舗の応援業務として、店頭での販売もしました。

サラリーマンとして働いた一番の感想は?

 

 勿論、すんなり仕事が出来た訳ではありません。サラリーマンとして仕事を進めるには、様々な”お作法“がありました。予算や利益、PLといった会計知識や、決裁などの物事を進める上での必要なルールやルート、会議の運営1つをとっても、これまで培われてきた会社の文化や風土が影響していました。

 サラリーマンの入門者として、上司や同僚から沢山の事を教えてもらい、何とかやっていけました。特に秘書として苦楽を共にした常務には、数字の数え方から教えてもらい、課題図書として出された沢山のビジネス書を必死に読みました。

 サラリーマンとして働いた一番の感想は、「これは、確かにサラリーマンは病む。」

楽しくも辛いサラリーマン生活

 

 課題や目的が上司・同僚と共有されないまま、溢れる業務を指示されたままに、ただひたすらにこなすことや、上司や経営陣への忖度、決まらない長時間の会議等、サラリーマンとして働く厳しさを身に染みて体感しました。マネジメントを実践しようと、会議ファシリテーションも率先して取り組みましたが、役員から呼び出され「余計なことはしないように」と指導されたこともあります。

 また、特に店舗においては、人出不足の課題から非常に厳しい労働状況でもありました。

 当時の上司であった常務とは、そんな社内の状況について危機意識を共にし、社内改革にも挑みました。ちょうど世間的にも過労死自殺の報道があった事もあり、特に残業時間の課題については、労働時間管理の徹底や作業の見直し等が進み、一部解消することができました。

 そんな、楽しくも辛いサラリーマン生活でしたが、また転機が来ました。

病気や死が身近に感じ「当事者」に!
自分の有限である時間を使うなら、関心期・準備期の会社にまずは注力したい!

 

 これまで大きな病気1つしたことがない私でしたが、3年間の間に2回の入院・手術を経験しました。ケアする立場から、ケアされる立場になること、働きながら治療するかもしれないこと、そして何より自分も死ぬかもしれないという不安。医療者として、病気や死が身近であったのに、当事者となってみると想像もしていなかった自分の弱さとも直面しました。

 幸いにして、大事には至らなかったのですが、ここで、新たな挑戦の気持ちが沸き起こってきました。いつか死ぬなら、やりたい事をやってから死のう!

 サラリーマンとして勤めた会社でも、やれることは全てやりました。結果として社内の一部には、変化はありましたし、社内改革などは、もしかしたらもっと時間をかけるべきだったのかもしれないと、今でも時々思い返します。

 ですが、ここで思ったのが保健指導の王道です。無関心期より、関心期・準備期に働きかけ、実行を支援し、無関心期も引っ張る。

 組織も同じなのでは、ないかと思ったのです。自分の時間も有限であるなら、関心期・準備期の会社にまずは注力したい。自分の死を意識したきっかけから、辞めたはずの保健師の知識が背中を押してくれ、次の転機が来ました。

 次回は、いよいよ最終回。産業保健師と人材育成・組織開発に携わる現在に繋げます。

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