オピニオン/保健指導あれこれ
はじめて「産業保健師」として働く人へのエール
No.1 大規模事業所と中小規模事業の違いとは?
独立行政法人 労働者健康安全機構 大阪産業保健総合支援センター
2023年02月06日
自分にとって働き甲斐のある職場は?
それでは、「大規模事業場と中小規模事業場で働く産業保健師の違い」についてみてみましょう。もちろん、どこの事業場も同じ訳ではありません。筆者の視点から見た一つの考えとしてご理解いただけたら幸いです。「大規模」事業場の場合
ポイント① 複数の産業保健師(看護職)が在籍している
・同じ事業場にいない場合も、本社や統轄の部署があるなど全体をコントロールし、従業員への公平な産業保健サービスを提供する仕組みになっています。 ・多くの従業員を対象とするためプログラム毎の担当制、疾病毎の担当制、部門制など、企業、業態により合理的な分担制になる場合もあります。ポイント② 多職種連携の産業保健チーム活動
・嘱託、選任もしくは専任の産業医もいます。精神科医や、カウンセラー、管理栄養士、歯科医師など雇用されているところもあります。それぞれの専門性を活かし、連携し、協力しながら産業保健サービスを提供していきます。 ・多職種連携の際のコーディネーター役は産業保健師が担います。例えば、復職支援の場合は、本人以外に主治医の意見、場合によっては家族からの情報、上司・人事・労務から事業場の受け入れ準備情報、産業医の判断が必要になりますが、一同に会することは難しいのでスケジュール調整や、事前面談、文書での提出依頼などといった情報収集等、復職支援のための事前調整役としての役割を担います。 ・コーディネーションは保健師のコアな技術ですので、中小規模事業場でも同様の役割を担います。ポイント③ 教育の機会に恵まれている
・教育のシステムが独自に準備されているところもありますが、日本産業衛生学会の産業保健看護専門家制度のキャリアラダーを活用しているところもあります。 ・業務の一環として学会参加や学会発表を位置づけているところもあり、費用の面でのサポートも受けられるところもあります。ただ、恵まれていることに甘んじて自分から積極的に学ぶこと、自分の時間、自分のお金をかけることを躊躇するようになったら成長の機会を失うかもしれません。何のために学んでいるのか、何を学びたいかを見失わないようにしましょう。
ポイント④ 雇用形態
・臨時雇用、派遣だけでなく、有期雇用、正規雇用も多いです。 ・正規雇用保健師はリーダーや管理職への登用というキャリアが望めます。そうなれば責任が生じるのは当然ですが、単独事業所のみではなく全国をカバーすることもあり、出張、時間外労働なども多くなる場合があります。昔の話ですが、私は地方全国をカバーしていましたので毎月8回、札幌から沖縄まで日帰り出張していました。新型コロナウイルス蔓延以降、Web会議ばかりなことを考えるとそんな時代も懐かしいです。
「中小」規模事業所の場合
ポイント① 産業保健師一人職場
・事業所内に相談できる産業保健師がいないところが多いです。 ・一人で判断しなければならないことが日常的にあります。一人で思い詰めてしまわないように、学会や研修会で同業の保健師とつながりを作ることをお勧めします。
ポイント② 対象従業員が少ない
・従業員の人数が少ない分、お互いの顔が見えるサービスの提供ができます。 ・従業員とのコミュニケーションも取りやすく、個々の体調だけでなく、部門や職場全体の変化などの情報も入りやすいです。ポイント③ 事業者側との距離が近い
・良好な関係を築くことで気軽に相談してもらうことができ、大規模事業場に比べて情報交換がしやすい。 ・産業保健師が雇用されている事業所は比較的産業保健に理解があるのかもしれません。最近は「健康経営」ブライト500の取得を目指して保健師を雇用するという事業場もあるようです。それも従業員への産業保健サービス向上につながるので応援したいです。
ポイント④ 産業医と事業場との懸け橋役(時間が限られている)
・月1回の訪問日は産業医と協力して衛生委員会を健康課題検討の場として活用しましょう。 ・限られた時間の中で話したいことを上手に伝えられるよう事前に準備し、産業医への質問・相談を整理しておきましょう。ポイント⑤ 教育の機会
・大規模事業場のような手厚いサポートは受けられないかもしれませんが、日頃の産業保健師活動が認められ、業務調整がうまくできると許可される可能性は高くなります。予算も取ってもらえるかもしれません。 ・将来の自分への投資だと思い、自分の時間とお金を使うことも必要となるかもしれません。学会参加や学会発表は成長への機会になります。一人職場は「井の中の蛙大海を知らず」に陥りがちなので、人と出会い、発表を聞き、いろいろな刺激を受け、最新の知見を吸収してきましょう。
大規模事業場、中小規模事業場について、簡単にご説明しましたが、事業場規模に関係なく、法律は目まぐるしく変わります。誰かが教えてくれるのを待つのではなく、自分で情報を得るために努力することをお勧めします。
働きやすさ、働き難さ、やりがいは個人により異なります。ご自身にとって働き甲斐のある職場はどちらでしょうか?この連載を通じて一緒に考えてみましょう。
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