オピニオン/保健指導あれこれ
はじめて「産業保健師」として働く人へのエール

No.2 産業保健師が直面する「想定外の出来事」への対応 その時慌てないために

独立行政法人 労働者健康安全機構 大阪産業保健総合支援センター
鈴木 純子

②講師をドタキャン

 話は変わり、今度は個人的な10年以上前の話です。半年以上前から講師を依頼されていた研修会を控え、準備万端の構えでした。しかし、研修会前日に家族の危篤連絡があり、すぐに病院へ駆けつけました。まさに「何が起きるか神のみぞ知る」です。

 病院から研修会に戻ることも考えましたが、片道6時間以上かかるので、家族の看取りを優先し、講師をキャンセルさせていただきました。さすがに研修会当日では、代役の講師をお願いすることも叶わず、参加者には配布資料のみお渡ししただけになってしまいました。

 いまならオンライン研修に切り替えて実施することもできるかもしれません。しかし、慌てないための準備をしていても、予想とはまったく異なる「想定外」が起きてしまうと、何もできないこともあるというお話です。

③航空機事故支援

 最後に、これは私の友人の保健師の体験です。1985年8月12日に発生した「日航機墜落事故」に従業員が巻き込まれ、現地で家族と一緒にご遺体の確認に何日も同行していました。時期が夏だったこと、ご遺体の一部で確認するという過酷な状況で、ご家族のメンタルサポートと、支援に入っている従業員の心身の健康状況のサポートをしたそうです。

 保健師本人も過酷な状況で、食事もとれず精神的に参っていました。私は電話でひたすら友人の話を聞ききましたが、友人はひとしきり泣いた後、再びご家族の支援に向かいました。保健師としてのプロ意識とたくましさを見ました。

 こういう時の「慌てない準備」は何なのでしょう? 自分だったらどうしていたか、最後まで仕事をやり遂げられたか、自問自答しています。このような状況でも、強靭な体力・精神力、つぶれない心が必要そうです。

想定外を「知る」ことが大切

 3つの体験談はいかがでしたでしょうか。家族を含めた自分自身に起きること、職場でのトラブル、社会全体に被害をもたらすテロや感染症、天災など、想定外のことは様々な形で起こります。「その時慌てないように!」と備えていても、やはり、その場に直面すると慌ててしまいます。

 しかし、実体験や経験の共有により、今まで想定できなかったことが想定の範囲内に近づくことはあります。それによって「大慌て」が「小慌て」くらいになるかもしれません。自分だけの視点で物事を見ず、広い視野で観察し「想定外」を減らすことが大切です。

 今回は3つのエピソードを紹介しましたが、 いざという時、私にとって必要だったのは「体力」「つぶれない心」「相談先(一人で抱えないこと)」でした。皆さんにとってはいかがでしょうか?特に「相談先」は急に思いつかないこともあるので、普段からいくつか候補を考えておくとよいでしょう。

 平常時から危機を予見してトレーニングや準備をしておくこと、危機発生時の対応、メンタル面を含めた被害からの回復という基本的な対応は必須です。その時“慌てない”ために、皆さんは何をプラスしますか?

『No.3 「自分は何者であるか」
はじめて産業保健師として働く人に伝えたいこと』▶

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