No.2 新型コロナ禍にある従業員のメンタルヘルスを守るために
1. ストレスを感じるのは自然なこと
産業保健専門職であっても、コロナ禍でのストレスは看過できないレベルになっているのではないでしょうか。 テレワークの進展によって、保健指導や面接指導をオンラインで行う職場も少しずつ増加しています。しかし原則として、産業保健専門職にとって、職場において働く人と対面で行う活動が主であることに変わりはないと思います。 ご自身の生活の中でも、高齢のご両親や受験生を含むお子さま、あるいはパートナーの方に感染させてしまう不安を抱える読者の方もおられることでしょう。電車やバスでの通勤で、特に首都圏等で満員の状態を避けられない場合には、専門家であるがゆえに、ご心配になる(ストレスを感じる)瞬間もあるかもしれません。 働く人と相対する際に改めて見直しておきたい科学的な事実は、われわれは“哺乳動物”の一種であり、20万年余りの歴史を持つ現生人類の子孫である、ということです。われわれの心身は、文字が開発されて以降の有史と比べ物にならないほど長い年月を経た、文明の無い野生の時代の機能のままです。 現代ではストレスは“不愉快なこと”と捉えられがちですが、太古の昔では生存をかけて行動するための重要なサインがストレスであったと考えられます。生活様式が新しくなれば、当然その状況は経験したことがないものであり、無意識なレベルでも刺激となり、ストレス反応を生じます。 新型コロナによるさまざまな不安を感じ、ストレスの影響を受けている働く人に、それがごく自然の反応であると、産業保健専門職として伝えることで、それら(不安、ストレス)を客観的に捉えてもらうことができます。
2. 職場外のストレス要因にも目を向ける
コロナ禍にある働く人が現実として抱えている悩みごとは、職場外の問題に直面して起きることが少なくありません。たとえば、夫婦間の問題であればパートナーによるモラルハラスメント、子供の問題ではゲーム障害に気が付くこと、そして巣籠もり生活を強いられる老親の認知症の疑いなど、多岐にわたります。しかし、これらは個人的な問題として片づけられがちではないかと思います。 働く人とその管理監督者、産業保健専門職と外部機関の関係者は「4つのケア」と厚生労働省により呼称され、メンタルヘルス対策を共同で担う、とされています。過重労働やパワーハラスメント、セクシュアルハラスメントは、いずれも職場ストレスにあたります。 ストレスチェック制度も職場ストレス要因に限定した対策です。そのために個人的な悩みごとを相談する場は職場にはない、というのが一般的な理解ではないでしょうか。 その一方で精神科医療の現場では、職場ストレスは、精神科疾患に影響する“数ある要因の一つ”に過ぎないと捉えられているでしょう。問診等の場面では家族歴、生育歴、生活習慣、家庭環境、パーソナリティ、いわゆる発達障害の傾向等、個人の問題を掘り下げます。 事業者責任や安全配慮義務の遂行とは直接的な関係はなくとも、働く人のメンタルヘルスを考える際に、個人的な問題から目を背けて職場のストレス要因だけを考えることは、働く人への支援としては、ややバランスを欠いていると考えられます。3. 健康相談の枠組みの活用
事業場外資源の一つに位置づけられるEAP(従業員支援プログラム)は日本ではメンタルヘルス相談機関と呼ばれます。商業化が進み、ストレスチェックや人材紹介を取り扱う業者が増え、メンタルヘルス対策の委託先というイメージが定着しています。 けれども、EAPの発祥の地である本場アメリカでは、職場ストレスに限らず、働く人と職場の生産性の問題を解決する専門家や専門機関として認識されています。亀田高志先生の近刊書籍
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