ニュース
高血圧治療ガイドライン2014 糖尿病の降圧目標は130/80mmHg
2014年04月09日

日本高血圧学会は「高血圧治療ガイドライン2014」(JSH2014)を公表した。日本高血圧学会GL作成委員会(委員長:島本和明氏)が都内で開催した記者発表会では、学会のGL作成委員と査読委員、内部評価委員、関連14学会ならびに日本医師会や日本薬剤師会などからも協力を得て、計151人の委員が策定にあたり、「最新のエビデンスにコンセンサスも取り入れたアップデイトな内容」にしたことを強調した。
今回の改訂では、高血圧の診断基準(降圧薬治療開始基準)は従来の「収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上」を維持した。一方、血圧を下げる努力目標である降圧目標を「若年・中年者高血圧」の場合、「130/85mmHg」から「140/90mmHg」に改訂し、診断基準と統一した(診察室血圧)。後期高齢者(75歳以上)は「140/90mmHg」から「150/90mmHg」に変更した(診察室血圧)。 JSH2014の要点は以下の通り―― (1)序章でディオバン関連文献の扱い、ジェネリック医薬品の扱いなど、次回改訂への課題を含めて、作成過程を詳しく紹介した。
(2)主な変更点を46項目で前付けして、変更を理解しやすくした。
(3)後付けの降圧薬一覧に副作用の表を付け、1冊で診療に必要なほとんどの知識を網羅できるようした。 特に重要な変更点は次の通り―― 1. 「家庭血圧」は、朝夕2回測定し、1機会で2回測定の平均を原則として、「診察室血圧」と評価が異なる場合は、家庭血圧の評価を優先する。 2. リスクの階層化で「正常高値血圧」を除外し、初診時の高血圧管理の図と整合性をとり分かりやすくした。 3. 第1選択薬は、β遮断薬を除き、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬(サイアザイド系利尿薬、サイアザイド類似薬)の4剤にした。併用もこの4剤で行う。ただし、β遮断薬は、心不全、頻脈、狭心症、心筋梗塞後では第1選択薬として推奨する。 降圧目標では、中年者で診察室血圧140/90mmHgとするなど事実上の緩和とみられる改訂も行われたが、島本氏は「高血圧の診断基準値と降圧目標値を統一し、治療開始値との"ギャップ"という矛盾を解消する措置をした。ただし、130/85mmHgを目指した方がいいのは変わらず、降圧目標の緩和を意図したわけではない」と説明した。
糖尿病合併高血圧の降圧目標は130/80mmHg
糖尿病合併高血圧の降圧目標は、130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)に据え置かれた。血圧が140/90mmHg以上ではただちに降圧薬を開始するとした。
欧米では収縮期血圧を140mmHgに緩和する動きが広がっており、米国糖尿病学会(ADA)は昨年、降圧目標を140/80mmHg未満に緩和し、ESH-ESC2013ガイドラインでも140/85mmHg未満となった。
「日本は、心筋梗塞よりも脳卒中の発生が多い。心筋梗塞の多い欧米とは疾病構造が異なり、エビデンスの解釈も脳卒中予防に重点をおく。糖尿病合併高血圧患者では厳格な血圧管理が求められ、脳卒中を主体とした心血管病を予防するにはやはり130/80mmHg未満を目指すべき」と島本氏は説明した。
また、糖尿病合併高血圧患者における降圧薬として、ARB、ACE阻害薬を第一選択薬として推奨した。
JSH2014は、日本高血圧学会公式サイトで公開されるほか、より簡便にしたダイジェスト版や文献集、患者向けGLの発行も予定されている。
日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2014
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年08月21日
- 歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
- 2025年07月07日
- 子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
- 2025年06月27日
-
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】 - 2025年06月17日
-
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断 - 2025年06月02日
- 肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
- 2025年05月20日
-
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化 - 2025年05月16日
- 高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
- 2025年05月16日
- 【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
- 2025年05月12日
- メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
- 2025年05月01日
- ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】