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糖尿病に関わる新たな遺伝子を発見 発症前に発見し保健指導で予防
2016年02月17日
理化学研究所や琉球大学、東京大学などの研究チームは、日本人の2型糖尿病の発症に関わる7つの遺伝子を発見したと発表した。
近い将来に、糖尿病を発症する前の段階でリスクの高い人を発見し、生活指導を行うことで発症を予防できるようになる可能性がある。
近い将来に、糖尿病を発症する前の段階でリスクの高い人を発見し、生活指導を行うことで発症を予防できるようになる可能性がある。
理化学研究所や琉球大学、東京大学などの研究チームは、2型糖尿病患者の2型糖尿病患者1万5,463人の「一塩基多型」(SNP)を解析し、2型糖尿病の発症に深く関わる7つの遺伝子を突き止めた。
日本人の2型糖尿病の遺伝要因を解明
日本の糖尿病患者数は、予備群を含めると2,000万人以上に上る。糖尿病の9割以上を占める2型糖尿病についての研究で、遺伝子をターゲットにした新しい治療法の可能性が示された。
これまでの研究で「ゲノムワイド関連解析(GWAS)」という方法で、83の2型糖尿病の「疾患感受性遺伝子領域」が発見されていたが、その多くは欧米人を対象に行われた解析によるものだった。しかし、今回、研究チームは「日本人における2型糖尿病の遺伝要因を解明するためには、日本人を対象としたGWASを行う必要がある」と、解析を進めた。
2型糖尿病は、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性(インスリンの働きが悪くなること)が合わさることによって血糖値が上昇するタイプの糖尿病。発症には、遺伝因子と環境因子(過食、肥満、運動不足などの生活習慣)の両者が深く関わっている。研究チームは、日本人を対象とした最大規模の約4万人を対象としたGWASを実施した。
研究チームは、東京大学医科学研究所に設置されている、患者などから提供されたDNAを保管するデータベースである「バイオバンク」に登録されている2型糖尿病患者1万5,463人と非患者2万6,183人の日本人集団のDNAサンプルを用いて、GWASを実施。
ヒトのゲノム全体をカバーする約580万の「一塩基多型」(SNP)を調べたところ、疾患感受性との関連を示す遺伝子領域を新たに17ヵ所発見した。
一塩基多型(SNP)は、遺伝情報を担うDNAの塩基配列のうち1ヵ所だけ異なっているものをさす。ヒトの染色体にあるDNA情報は、30億にもおよぶ文字の並び(塩基配列)で構成されている。この文字の並びが遺伝情報となっており、0.3%程度に個人差(遺伝子多型)がみられる。遺伝子多型の違いが病気のなりやすさなどに関係していると考えられている。
糖尿病発症に関わる遺伝子 新たに7領域発見
研究チームはこの遺伝子について、患者7,936人と非患者5,539人からなる別の日本人集団でさらに解析を行い、GWASの結果を合わせて調べたところ、疾患感受性との強い関連を示す7つの遺伝子領域(CCDC85A、FAM60A、DMRTA1、ASB3、ATP8B2、MIR4686、INAFM2)を発見した。
この7つの遺伝子にあるSNPをタイプ別にみると、発症しやすいタイプをもつ人は、そうでないタイプをもつ人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが1~2割程度高かった。
さらにこの7領域を含む90の疾患感受性遺伝子領域内の遺伝子について調べたところ、すでにある2型糖尿病治療薬に加え、他の病気の治療薬として臨床研究中の薬にも2型糖尿病の疾患感受性遺伝子領域をターゲットとしているものが複数あることがわかった。
そのなかでKIF11、GSK3B、JUNはそれぞれがんや白血病などに対する治療薬として、いずれも臨床試験中の薬剤のターゲット遺伝子。これらの薬は2型糖尿病治療に適応できる可能性があり、新たな治療薬開発の一助となることが期待できるという。
理化学研究所は、「2型糖尿病発症のより詳しい機序を解明することで、個人の体質に合わせた治療法の確立につながる可能性があります。また、今後新たに得られるゲノム情報とさまざまな生物学データベースや創薬データベースの情報を総合的に活用することで、より多くの治療薬の開発が期待できます」と述べている。
研究は、理化学研究所統合生命医科学研究センター腎・代謝・内分泌疾患研究チームの前田士郎チームリーダー(琉球大学医学研究科 教授)、今村美菜子客員研究員(琉球大学医学研究科 准教授)と東京大学大学院医学系研究科・東京大学医学部附属病院の門脇孝教授らの共同研究チームによるもので、成果は科学誌「Nature Communications」に発表された。
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