ニュース

糖尿病治療薬の「メトホルミン」にがん治療の効果 安価な薬でがんを治療

 古くから糖尿病治療薬として使われているメトホルミンに、がん治療薬としての効果もあることが明らかになった。既存薬を全く別の疾患の薬として利用する「ドラッグ・リポジショニング」の成果だ。
メトホルミンは使用実績が多く安価な薬
 メトホルミンは1950年代から糖尿病の治療に使われており、60年以上の使用実績のある薬だ。米国では米食品医薬品局(FDA)が1990年代に認可し、現在では糖尿病治療の第一選択薬となっている。

 メトホルミンは日本でも糖尿病治療薬として広く使われている。1錠250mgの薬価は10円未満と安価だ。有効性があり価格も安いので、糖尿病患者の経済的負担を少なくするメリットがある。

 メトホルミンの特徴は、インスリン分泌促進作用はないが、それ以外の幅広い膵外作用を併せもつという点だ。メトホルミンは肝臓における糖新生の抑制、筋肉など末梢での糖利用の促進、消化管からのグルコース吸収の抑制などの作用があり、血糖降下作用を示す。

 メトホルミンは、1970年代にビグアナイド薬であるフェンホルミンによる乳酸アシドーシスが報告され問題となり、日本では用法・用量が一部制限されるようになった。しかし1990年代になって、世界的にビグアナイド薬が見直され、メトホルミンを使った大規模臨床試験が欧米で実施された。

 その結果、メトホルミンは、それまで広く使用されてきた経口糖尿病薬であるSU剤と比較して、体重増加が認められず、インスリン抵抗性を改善する効果があるなど、メリットがあることが明らかになった。また、メトホルミン服用者での乳酸アシドーシスの発生頻度は、フェンフォルミンに比べて低いことも明らかになった。

 多くの研究者は、メトホルミンは副作用が少なく、使用実績が多く、さらに後発医薬品でも入手可能なために安価であることから、最良の選択肢のひとつだと結論している。

 そのメトホルミンに、がん治療薬としての効果もあることが、岡山大学などの研究で明らかになった。

糖尿病の飲み薬の特徴を知れば安全・効果的に治療できる

メトホルミンを投与するとがんが縮小
 これまでに、メトホルミンを長期間服用した患者は、それ以外の薬剤を服用した患者に比べ、がん罹患率、がん死亡率が有意に低いことが分かっていた。岡山大学の研究グループは「メトホルミンの作用を従来のがん治療法と組み合わせることで、治療効果のさらなる改善につながる可能性がある」と述べている。

 体内には1日に数千個ものがん細胞が発生しているが、必ずしもそれらすべてがんの発症にはつながらない。その理由のひとつは、からだに備わる免疫機構がこれらのがん細胞を排除しているからだ。

 人間の体には生まれながら、「自己」と「自己でないもの」を区別し、「自己」でないものを食べたり殺したりする仕組みが備わっている。体内に発生するがんのもとになる異常細胞も、この免疫システムによって排除されている。がん細胞は通常の細胞にはみられない有の目印(がん抗原)が発現している。このがん抗原は細胞表面に出ていて、これをリンパ球の一種であるキラーT細胞が「がんの目印」として認識し攻撃を仕掛ける。

 がんを治療できない原因のひとつは、がんに対する免疫応答の低下(免疫疲弊)だ。がん細胞は、生体防御のために備わっている免疫系の攻撃をかわしながら徐々に成長して生命を脅かす一方、免疫細胞はがんとの長期の戦いにより疲弊していく。

 がん抗原を認識・活性化されたT細胞はがん組織内に入った後、さまざまな抑制性の免疫チェックポイント分子を発現し、またがん細胞自身はチェックポイント分子のリガンドを発現しており、これらの相互作用がん特異的T細胞を次第に疲弊に追い込む。

 メトホルミンには、免疫細胞の疲弊を解除し、がんを攻撃する機能を回復させる作用があると考えられている。がんに攻撃を加えるキラーT細胞である「細胞傷害性T細胞」の糖代謝を向上させ、その活性を強める効果があるという。

 研究グループは、糖尿病ではない正常マウスにがん細胞を移植しがんのマウスを作製。メトホルミンを与えたところ、がんが縮小することを発見した。

 メトホルミンの抗がん作用がんの周りに浸潤していく細胞障害性をもつ「CD8陽性T細胞」の活性増強を介し、がん細胞を攻撃する「キラー活性」を増強すると考えられている。がんのマウスにメトホルミンを与えると「CD8陽性T細胞」の数の増加と機能の回復が著しいことを確認した。

 「メトホルミンの作用を従来のがん治療法、例えばがんペプチドワクチン、チェックポイント阻害抗体、抗がん剤、放射線療法、手術などと組み合わせることができれば、治療効果のさらなる改善につながる可能性がある」と、研究グループは述べている。

「メトホルミン」が寿命を延ばす アンチエイジング効果を確かめる試験

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻 腫瘍制御学講座 免疫学
Immune-mediated antitumor effect by type 2 diabetes drug, metformin(Proc Natl Acad Sci USA 2015年2月10日)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2021年06月29日
産業保健師活用テキスト『産業保健師がいること』のご紹介
2021年06月28日
【生活習慣病の医療費】トップは入院では「脳血管障害」、入院外では「糖尿病」 特定健診と特定保健指導が重要 健保連
2021年06月01日
実行しやすい健康改善プランを提案するAI(人工知能)を開発 健診データから1人ひとりに最適なプランを選択
2021年06月01日
日本の代表的な6研究機関が連携 36.6万人規模のゲノムコホートを構築 「個別化医療・個別化予防」の早期実現を目指す
2021年05月26日
2021年度版【保健指導アトラス】を公開!保健指導に携わる人が知っておきたい法律・制度
2021年05月20日
【オピニオン新連載】緊急事態宣言下で前進した特定保健指導のオンライン化と働き方 ―総合健康保険組合の取り組み―
2021年05月18日
心理的ストレスが腸内細菌を乱すメカニズムを解明 うつ病に腸内細菌叢が大きく関わっている 「脳腸相関」を解明
2021年05月17日
5月31日は世界禁煙デー、6月6日まで禁煙週間
禁煙で新型コロナに負けないカラダになろう!
2021年05月10日
「腸内環境」は植物性食品で整えられる 肥満やメタボの人は「腸内エコシステム」が乱れやすい
2021年05月10日
【新型コロナ】リモートワークで生活リズムが乱れ睡眠不足に 自然光の変化に合わせた室内照明で睡眠の質を向上
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 11,068 人(2021年現在)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 2.7%
  • 保健師 44.8%
  • 看護師 10.8%
  • 管理栄養士・栄養士 19.8%
  • その他 22%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶