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暑さに対策してウォーキング 熱中症を予防するための10ヵ条 夏も安全に運動

 7月になり暑さが本格化している。日中は35℃、夜間でも25℃を超えることが珍しくなくなった日本の夏。ウォーキングなどの運動を中断しようと考える人も少なくないだろう。暑い日に安全に運動をするためのポイントをまとめた。
暑さ対策をすれば運動を続けられる
 「夏に増える熱中症はひどい場合は生命に関わる疾患です。しかし、運動は継続することが大切です。十分な暑さ対策をしていれば、必要以上におそれる必要はありません」と、米国のマイアミ大学スポーツ医学研究所のキャロリン キエンストラ氏は言う。

 「1年を通じて活発に体を動かすことは、あなたの体と心にとって有益です。しかし、最高気温が30度を超える日には、簡単な予防措置を講じることを忘れないでください」と、キエンストラ氏は指摘する。

 「大量の汗をかき、体内からわずか2%の水分が失われることで、あなたのパフォーマンスに悪影響が出てきます。運動の前後の水分補給はとりわけ重要です」。

 キエンストラ氏は暑い日に安全に運動するために、次のことをアドバイスしている。

● 暑いときは水分補給が欠かせない

 汗は体から熱を奪い、体温が上昇しすぎるのを防いでくれる。しかし、失われた水分を補わないと脱水になり、体温調節能力や運動能力が低下する。そのため暑いときにはこまめな水分補給が必要となる。
 水分の摂り方としては、基本的には出た分を補うことが良いが、実際に運動中にその量を完全に補うことは難しい。汗をかいていてないと感じる場合でも、適切に水分補給をすることが大切だ。
 まず運動をする20〜30分前ぐらいにコップ1杯程度の水分を補給し、あとは、運動中もコップ半分ぐらいの水分を補給する。血圧の高い人や心臓に問題のある人では15分に1回くらい水分補給を行う。

● 運動の前後に体重をはかる

 運動前後に体重をはかることで、失われた水分量を知ることができる。水分補給量の目安として、運動による体重減少が2%を超えないように注意する。運動の前後に、また毎朝起床時に体重をはかる習慣を身に付け、体調管理に役立てよう。
 肥満の人は標準体重の人に比べて、同じ運動量でも熱の産生量が多い。体脂肪が増えすぎると、熱が外へ逃げるのをブロックするので、体温が上昇する原因となる。
 血圧が上がりやすい、血糖値が上がりやすいといった体質は変えられないが、肥満は改善が可能だ。肥満を解消することは、健康維持のためにも重要となる。

●塩分(ナトリウム)の補給が効率的

 汗からは水分と同時にナトリウム(塩分)も失われる。ナトリウムが不足すると熱疲労からの回復が遅れるので、適度に補う必要がある。
 身体には約0.9%の食塩水と同じ浸透圧の血液が循環している。汗にはナトリウムが含まれており、大量に汗をかいてナトリウムが失われると、水だけを飲むと血液のナトリウム濃度が薄まり、水を飲む欲求がなくなることがある。この状態になると、汗をかく前の体液の量を回復できなくなり、熱中症の原因になる。
 体の状態や運動の内容によって必要な対応は変わってくるが、暑さがひどいときは、0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100mL)を含む補水液などを飲む。補水液は1Lの水にティースプーン半分の食塩(2g)を溶かして、自分で作ることもできる。

● スポーツドリンクに注意

 水分補給にスポーツドリンクを利用する人も多いが、エネルギー補給の目的で糖質を含んでいるものが多いので、減量や血糖コントロールを目的としたウォーキングなどでは効果が減じてしまう。
 スポーツドリンクの特徴は、発汗などで失われるナトリウム、カリウムなどの電解質を含んでおり、吸収を早めるために体液に近付けた浸透圧にしてあること。必要な場合は、糖質を含まない低カロリーのものを利用する方法もある。

● 運動する時間帯に注意

 日中の暑い時間は避け、朝や夕方の涼しい時間帯を利用すると効果的だ。天気予報をみて、気温が上昇したり湿度の高い日には、午前11時から午後3時の運動は避ける。
 気温が上がると心拍数が増えるので、特に運動中に心拍数がいつもより高い場合には注意が必要となる。木陰で休憩を挟みながらウォーキングなどの運動を行うと安全だ。

● 準備は十分に 服装に注意

 運動をするときは、休憩を頻繁にとって、水分を十分に補給することが大切だが、服装にも注意が必要だ。
 熱中症を予防するための服装のポイントは、(1)体の熱をスムーズに放射させる機能のあるもの、(2)外気からの熱の吸収を抑えるもの。
 暑い時には服装は軽装にし、吸湿性や通気性の良い素材を使ったものを使用する。屋外で直射日光がある場合には、色の濃いものを身に付けるのを避けて、帽子を着用しよう。

● 体を熱さに慣れさせる

 高温多湿の環境での体温調節能力に、暑さへの慣れ(暑熱順化)が関係する。急に暑くなったときは運動を軽減し、暑さになれるまでの数日間は、短時間の軽い運動から徐々に増やしていくようにする。

● アルコールを避ける

 アルコールは水分補給の代わりにならないので注意が必要。運動中や運動前にアルコール飲料を飲むと、体の脱水が促される。
 アルコールを飲むと、十分に水分補給したと思っていても、実際には体から水分が失われており、熱中症やケガを起こしやすくなる。

● 薬を飲んでいる人は要注意

 利尿剤やSGLT2阻害薬など尿の量が増える薬を飲んでいる人は熱中症になりやすい傾向がある。このような薬を飲んでいる人は、暑い中で運動をする前に医師に相談しよう。

● 暑いときや体調不良のときは無理な運動をしない

 気温が高いときほど、また同じ気温でも湿度が高いときほど、熱中症の危険性は高くなる。また、運動強度が高いほど熱の産生が多くなり、やはり熱中症の危険性は高くなる。
 暑い環境でスポーツをするように鍛えられたアスリートと違い、普通の人が暑い時期に無理して運動するのは危険がともなう。暑いときに無理な運動をしても効果は上がらない。環境条件に応じて運動強度を調節し、休憩を適宜とり、適切な水分補給を心がけることが重要だ。
 また、体調が悪いと体温調節機能も低下し、熱中症につながりやすい。疲労、睡眠不足、発熱、かぜ、下痢など、体調の悪いときには無理に運動をしないことだ。
 体力の低い人や、糖尿病の人、暑さに慣れていない人、熱中症を起こしたことのある人などは注意が必要だ。
暑さ指数を意識した熱中症対策が必要
 日本救急医学会の熱中症に関する委員会(委員長:清水敬樹・東京都立多摩総合医療センター救命救急センター)は昨年、熱中症患者の増加を受け、「熱中症予防に関する緊急提言」を発表した。

 提言では、以下のことを強調している。
・ 暑さ指数(WBGT)を意識した生活を心がけ、運動や作業中止の適切な判断を!
・ 水分をこまめに取ること。おかしいなと思ったらすぐ涼しい場所に誘導を!
・ 適切な重症度判断と応急処置を。見守りつつ改善がなければすぐ医療機関へ!
・ 周囲にいるもの同士が、お互いに注意をし合う!

 WBGTとは、熱中症が起きやすい外的環境を知るための指標で、気温だけでなく、湿度や輻射熱を考慮した判断が可能になる。その内訳は気温:湿度:輻射熱が1:7:2であることから、気温だけでなく、湿度や輻射熱をも考慮した判断が可能になる。

 気温だけでなく、この暑さ指数を意識した生活指導が必須であり、これを用いた屋外活動の可否判断が重要だ。

 WBGTが21度以上では熱中症による死亡事故が発生する可能性があり、運動の合間に積極的に水分補給が必要。28度以上では、激しい運動や持久走などの体温が上昇しやすい運動は避け、31度以上では、運動は原則中止するのが望ましいとしている。小児の場合は、さらに厳格な対応が必要となる。

 屋外活動や運動をする場合は、20~30分程度の間隔での頻繁な水分・塩分補給と休憩を行った上で実施するべきだとしている。

 また、小児や高齢者、持病のある人は体温調節機能が弱い「熱中症弱者」として認識する必要があると注意喚起を行っている。これらの人々は熱中症にかかりやすいので注意が必要だ。
・ 小児では汗腺の発達や自律神経が未熟で、高齢者や持病のある方は自律神経の機能が低下しており、体温調節機能が弱い。
・ 高齢者では全身に占める水分の割合が低く、容易に脱水になりやすい。脱水になると発汗の機能が低下し、体温調整が困難となる。
・ 小児では身長が低いため、地面からの輻射熱の影響を受けやすい。
・ 自分で予防する能力が乏しい。

 周囲にいるもの同士が、お互いに注意をし合い、少しでも異常がみてとれたら、熱中症を疑い適切に対処することが重要だ。

Exercise Safely in the Summer Heat(マイアミ大学ヘルスシステム 2019年6月6日)

熱中症予防情報サイト(環境省)
3日間の「暑さ指数(WBGT)の実況と予測」が公開されている。
熱中症環境保健マニュアル(環境省)
熱中症を発症したときの対処法を解説している。
[Terahata]
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