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健康的な生活スタイルが糖尿病リスクを75%減少 生活改善の指導に大きな余地が
2019年09月10日
2型糖尿病を発症した人は、食事や運動など健康的な生活スタイルをもつことで、2型糖尿病を発症するリスクを75%減少できることが、100万人以上を解析した研究で明らかになった。
すでに糖尿病を発症した人でも、死亡リスクを56%減少できるという。健康的な生活スタイルにより、心血管疾患(CVD)のリスクが減少し、がんを含むすべての原因による死亡のリスクも減少する。
すでに糖尿病を発症した人でも、死亡リスクを56%減少できるという。健康的な生活スタイルにより、心血管疾患(CVD)のリスクが減少し、がんを含むすべての原因による死亡のリスクも減少する。
健康的な生活により糖尿病リスクが75%減少
研究は、中国の華中科技大学公衆衛生学部のアン パン教授、同济大学医学院疫学部のヤンボ チャン氏らによるもの。詳細は欧州糖尿病学会(EASD)が発行する医学誌「Diabetologia」に発表された。
最新の調査によると、世界の2型糖尿病の有病者数は5億人を超え、毎年2,200万人が新たに発症している。
これまでの研究で、食事、運動、体重のコントロールなど、健康的な生活スタイルが2型糖尿病を予防・改善するために有用であることが示されているが、生活改善をどれだけ糖尿病のリスクを減少できるかは分かっていなかった。
そこで研究チームは、米国、アジア、欧州、オセアニア(オーストラリア、ニュージーランドなど)で実施された14件のコホート研究を解析。対象となったのは、ベースラインでの平均年齢が38〜73歳で糖尿病と診断されていない男女111万6,248人で、平均追跡期間は2.7~20.8年だった。
喫煙、飲酒、身体活動/座りがちな生活、食事、過体重・肥満、睡眠の時間や質など、生活スタイルの要点を3項目以上組み合わせて、糖尿病リスクを算出した。14件の研究のそれぞれについて、健康的な生活スタイルをポイント加算で細かく分析した。
その結果、健康的な生活スタイルを組み合わせて実行している人では、もっとも不健康な人に比べ、2型糖尿病の発症リスクが75%減少することが明らかになった。
健康的な生活スタイルを順守している人は少ない
「もっとも健康的」と評価された人の割合は、研究によって幅があったが、ほとんどの研究で20%未満と低かった。全体として、健康的な生活スタイルを順守している人の割合は14%で、もっとも不健康な生活スタイルと評価された割合は11%だった。
「ほとんどの国で、理想的に健康な生活をおくっている人の割合は低いものでした。生活スタイルの改善を奨励する大きな余地があります」と、研究者は述べている。
運動や身体活動、食事スタイル、睡眠パターンなどの生活スタイルは、2型糖尿病や肥満に大きく影響する。研究では、食事や運動など健康的な生活スタイルを追加して実行しただけでも、2型糖尿病のリスクを11〜61%減少できることも明らかになった。
糖尿病の人でも死亡リスクが56%減少
さらに研究チームは、2型糖尿病を発症した人を対象に調査した10件の研究をメタ解析した。対象となったのは、米国、アジア、欧州で実施された大規模研究に参加した3万4,385人の糖尿病患者で、ベースラインでの平均年齢は46〜69歳、平均追跡期間は4〜21年だった。
日本人を含むアジア人は、肥満と判定されるほどではない、少し太っているという段階で、2型糖尿病を発症しやすくなることが知られる。遺伝的な要因と食事など生活スタイルの変化などの要因が重なり、糖尿病を発症する。体力や身体活動の低下も、糖尿病の要因となっている。
研究では、2型糖尿病のコントロールにおいて、健康的な生活スタイルがもたらす潜在的なベネフィットについて調査。生活スタイルがもっとも健康的と評価された2型糖尿病患者は、もっとも不健康と評価された患者に比べ、すべての死因による死亡リスクが56%減少することが明らかになった。
さらに、健康的な生活スタイルにより、心血管疾患(CVD)による死亡リスクは49%、がんによる死亡リスクは31%、CVDを発症するリスクは52%、それぞれ減少した。
「多くの国の糖尿病治療ガイドラインは、食事や運動などの生活スタイルの改善が、糖尿病の治療の基本であると定めています。今回の研究はそれを裏付ける結果になりました」と、研究者は述べている。
高所得国では、高コレステロール、肥満、糖尿病などメタボリック危険因子が心疾患の原因の40%以上を占めており、疾患決定要因の理由として抜きんでていた。糖尿病はがんのリスクも高める。
糖尿病の合併症は予防できる
研究者は、今回の研究が主に先進国で実施された調査をもとにしている点、白人を対象とした調査が多い点、比較的高齢の人を対象としている点などを指摘。2型糖尿病は現在、若年者でも増えているので、若い世代の生活スタイルと糖尿病や糖尿病合併症との関連について、「さらなる研究が必要」と述べている。
著者らは、糖尿病を含む非感染性疾患(NCD)による早期死亡の減少は、国連開発計画(UNDP)で定められた「持続可能な開発目標」のひとつに挙げられており、世界的に達成されるべき目標となっている。
「とくに心血管疾患や腎臓病など深刻なダメージをもたらす糖尿病の合併症は、生活スタイルを改善することで多くが予防可能であることが示されています。2型糖尿病とともに生きる人が合併症を予防し、死亡リスクを減らすために、効果的で長期的な介入をすることが、目標を達成するために喫緊の課題になっています」と、研究者は述べている。
「先制医療」は、遺伝的素因や生活習慣などの環境的要因にもとづいて、特定の疾患に罹患するリスクが高いと思われる人を選別し、発症する前に適切に治療的な介入を行い、発症を未然に防ぐ、もしくは遅らせようというという新しい医療。研究者は先制医療の必要についても言及している。
「個人のレベルでは、できるだけ早い段階で、食事、運動、喫煙、飲酒など健康的な生活スタイルを取り入れることをお勧めします。集団のレベルでは、経済的な負担を抑え、持続可能なものにし、個々の人々が健康的な生活スタイルを選択しやすくするよう、政府は対策する必要があります」と強調している。
Healthiest lifestyle linked to 75% reduction in diabetes risk, and a reduced risk of cardiovascular disease and death in those already with diabetes(Diabetologia 2019年9月4日)Combined lifestyle factors and risk of incident type 2 diabetes and prognosis among individuals with type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies(Diabetologia 2019年9月4日)
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