ニュース
アジア人は内臓脂肪が過剰にたまると認知能力が低下しやすい 日本人も少し太っただけで代謝障害が
2023年05月29日

アジア人は、内臓脂肪が過剰にたまると、思考・学習・記憶などの認知能力が低下しやすいことが、9,000人近くのアジア人を対象とした調査で明らかになった。
欧米人だけでなくアジア人でも、肥満を予防したり改善することは、認知機能を良好に維持することに影響することが示された。肥満と認知症は、公衆衛生で優先度高い主要な課題になっている。
内臓脂肪の過剰な蓄積と認知能力の低下に関連が
アジア人は、内臓脂肪が過剰にたまると、思考・学習・記憶などの認知能力が低下しやすいことが、9,000人近くのアジア人を対象とした調査で明らかになった。 研究は、シンガポールの南洋理工大学医学部によるもの。研究グループは、同大学が英国のインペリアル カレッジ ロンドンなどと共同で実施しているコホート研究である「シンガポール健康生活調査」(HELIOS)に参加した30~84歳の男女8,769人を対象に2018年~2021年に調査した。 「アジア人集団の健康調査を通じて、内臓脂肪の過剰な蓄積と認知能力の低下に関連があることが示されました。このことは、国際的な遺伝データの統計分析でも確認されました」と、HELIOS研究の主任研究者であるジョン チェンバース教授は言う。 「欧米人だけでなくアジア人でも、肥満を予防したり改善することは、認知機能を良好に維持することにも影響し、将来の認知症のリスクから守るために重要と考えれます。肥満と認知症は、公衆衛生で優先度高い主要な課題になっています」としている。内臓脂肪型肥満のある人は認知テストの成績が低い傾向
「内臓脂肪型肥満」は、腹腔内の内臓の周辺に脂肪が過剰に蓄積しているタイプの肥満で、下半身よりもウエストまわりが大きくなり、その体型から「リンゴ型肥満」とも呼ばれる。 研究グループは今回、内臓の周辺に脂肪が蓄積した人は、記憶力・実行機能・処理速度・注意力などをみる認知テストの成績が低い傾向があることを明らかにした さらに、国際的なデータベースの遺伝データの統計分析を使用して、内臓脂肪と認知力の関係を詳しく調べ、体格指数(BMI)が高いことと、BMI調整後のウエスト/ヒップ比が高いことが強く関連していることを突き止めた。 内臓脂肪型肥満があると、高血圧や2型糖尿病、脂質異常症、さらには心筋梗塞などを、中年期から発症するリスクが上昇することが知られている。今回の研究で、認知機能の低下や認知症のリスクも高めることが示された。肥満を予防し改善することが認知症のリスクから守るために重要
「アジア人でも、肥満を予防し改善することが、認知機能を維持し、将来の認知症のリスクから守るうえで重要な役割を果たす可能性が、集団コホート研究により示されました」と、同大学で心臓血管学を研究しているテレシア ミナ氏は言う。 「内臓脂肪の蓄積は、生活スタイルや環境要因にのみによって起こるのではなく、認知機能の老化とも密接に関係している可能性があります」としている。 過剰な内臓脂肪が代謝障害を引き起こすメカニズムとして、細胞にブドウ糖を取り込むホルモンであるインスリンの効きが悪くなりうまく働かなくなる「インスリン抵抗性」が考えられるという。インスリン抵抗性の要因は、多くの場合で肥満だ。 アジア人のインスリン分泌能力は、欧米人に比べて低いことが知られている。日本人を含むアジア人は、肥満にいたらない小太りの段階で血糖値が上昇しやすいことが知られている。 とくに、20歳のときの体重と比べて10kg以上増えているという人や、ウエストがゆるくなったという人は、それらを2型糖尿病の危険信号としてとらえ、食事や運動などの生活スタイルを見直すことを勧めている。アジア人全体を対象にインスリン抵抗性を軸にして調査
研究グループは今回、シンガポールに在住している中国系・マレー系・南アジア系の人を対象に調査。健診と認知機能の検査、内臓脂肪のCT検査全身などを実施し、体脂肪や代謝パラメータを調べた。 その結果、認知能力の低下にとくに関連しているのは、▼善玉のHDLコレステロールの減少、▼体重に対する内臓脂肪量の割合を示す内臓脂肪率の上昇、ウエスト/ヒップ比が高いことであることが分かった。 一方、中性脂肪値、血圧値、血糖値などのパラメータは、認知能力の低下とあまり関連していなかった。 これまでの研究でも、代謝障害が認知機能の低下の危険因子である可能性が示されている。研究グループは今後、アジア人全体を対象に、過剰な内臓脂肪が遺伝子や生活スタイル、環境因子などとどのように関連しているかを、インスリン抵抗性などの代謝障害を軸にして調査することを計画している。 NTU Singapore scientists find link between excess visceral fat and cognitive performance in Asians (南洋理工大学 2023年3月3日)Adiposity impacts cognitive function in Asian populations: an epidemiological and Mendelian Randomization study (Lancet Regional Health - Western Pacific 2023年4月)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」