働く人のストレスに効果的に対策 わずか10分間の「マインドフルネス」でメンタルヘルス改善 スマホアプリの効果を検証
「マインドフルネス」を短時間でも行うことが、働く人の健康を促進し、不安症やうつ病などのメンタルヘルス不調を予防するのに役立つという研究が発表された。
ウォーキングなどの運動にマインドフルネスを組み合わせることで、精神的な健康と幸福度が高められることも示されている。
マインドフルネスを日常生活に取り入れることを支援するスマホアプリが開発された。
わずか10分間のマインドフルネスでメンタルヘルス不調を改善
近年の社会情勢や、労働環境の急激な変化にともない、働く人の多くは仕事や職業生活に不安やストレスを感じている。働く人のストレスを軽減するために、効果的な方法はないだろうか?「マインドフルネス」を短時間でも行うことが、健康を促進し、不安症やうつ病などのメンタルヘルス不調を予防するのに役立つという研究を、英国のバース大学が発表した。
マインドフルネスを日本語に訳すと、「気付くこと」「意識すること」という意味。(1) いまの瞬間の自分の気持ちや身体に注意を向け、(2) 偏見や願望、過去の経験や先入観などにとらわれず、出来事をありのままにみる、という2つの要素が重要になる。
ストレス緩和やリラックスに役立つウォーキング、ヨガやストレッチ、瞑想などを実践することが、メンタルヘルスの改善に役立つという研究が発表されている。
たとえば、1日のなかで10分間、自分に注意を向けるための時間を確保し、ゆっくりと深く呼吸をしながら集中力を高めることなどが、マインドフルネスの実践になる。
メンタルヘルスを高めるシンプルで強力なツールが必要
研究グループは、91ヵ国の1,247人の成人を対象に、30日間のマインドフルネス教室に参加する人(マインドフルネス群)と、参加しない人(対照群)に分けて比較した。
その結果、マインドフルネスに取り組んだ群は対照群に比べて、▼うつ病のリスクが19.2%減少し、▼不安症のリスクが12.6%減少し、▼幸福度が6.9%改善し、▼健康に気を配る行動が6.5%増加した。
「マインドフルネスのプラス効果は、30日後もほぼ維持されました。実践した人からは、気づき、自制心、忍耐力、喜びなどの気持ちなどが高まったという声も聞かれました」と、同大学で心理学を研究しているマーシャ レムスカー氏は言う。
「マインドフルネスは、短時間でも毎日実践するだけでメリットがあり、メンタルヘルスを高めるためのシンプルで強力なツールとなりえることが示されました」としている。
マインドフルネスを導入しストレスや不安を軽減
マインドフルネスに取り組むことで、ストレスホルモンであるコルチゾールが減り、認知力を向上する可能性があることなどを示した研究は増えている。
英国のノッティンガム大学心理学部などの別の研究では、ストレスのネガティブな影響が少ないのは、仕事に不安を感じることの少ない労働者や、マインドフルネスの高い労働者であることが示された。
研究グループは、英国のデジタル化が進んだ職場で働く142人の従業員を対象に、インタビューにもとづく調査を実施。
その結果、職場に「マインドフルネス」を導入すると、従業員のストレスや不安、過剰な負荷を軽減できることが示された。
「多くの職場でデジタル化が進み、働き方も変化しています。従業員は絶えず進化するデジタル技術に適応しなければならず、そのことをストレスに感じることもあります」と、同大学のエリザベス マーシュ氏は言う。
「マインドフルネスによるストレス管理を学ぶことは、働いている人の健康を改善するのに役立つ可能性があります」としている。
マインドフルネスで運動の効果を高める
バース大学が発表した別の研究では、ウォーキングなどの運動にマインドフルネスを組み合わせることで、精神的な健康と幸福度を高められることが示されている。
研究グループは今回、運動や身体活動とマインドフルネスの関連を調べた35件の試験の結果を解析した。
「マインドフルネスを活用すれば、運動がもたらすプラスの効果をさらに引き出せる可能性があります」と、同大学で運動療法を専門としている心理学者であるマーシャ レムスカー氏は言う。
「運動を行う習慣のない人が、新たに運動の取り組むことを習慣にするのは、最初は大変なことと感じられます。そういう方々をサポートするツールが必要です」。
「運動とマインドフルネスを組み合わせることで、自分の生活スタイルについて、異なる見方をできるようになると、自分の欠点をより受け入れやすくなり、批判的になることがなくなり、健康的な習慣を続けるのに役立つと考えられます」としている。
「たとえば、インターネットやSNSなどで、ネガティブなニュースや投稿などを必要以上に長い時間見てしまい、落ち込んだ気持ちになったといった経験を誰もがもっています」と、同大学コンピュータサイエンス学部のサラリン ザスマン氏は言う。
「8人の参加者を対象に、このアプリを1日に10分間、5日間にわたり使用してもらう試験を行ったところ、アプリを利用した参加者は、不安が軽減され、マインドフルネスが高まったと実感したことが示されました」としている。
このアプリでは、大人向けの塗り絵などのシンプルなパズルに、10分間集中して取り組むことが求められる。塗り絵が色を塗った直後に消えたり、早く塗ろうとするとブラシが小さくなるなど、利用者がゆっくり集中して取り組めるよう工夫されている。
このアプリを利用することで、▼現在に注意を向け、▼無意識に画面でスクロールする時間を中断し、▼ほんとうに好きなことに時間を割くようにすることを促す狙いがあるという。
「調査では、スマートフォンなどの画面をつい見てしまい、使用時間を管理できていないことに不満を抱いている人が78%に上ることが示されています。必要に応じてスマホなどの使用を減らし、情報をブロックする時間を作ることが、メンタルヘルスに好ましい影響をもたらすこともあります」と、ザスマン氏は指摘している。
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Effects of combining physical activity with mindfulness on mental health and wellbeing: Systematic review of complex interventions (Mental Health and Physical Activity 2024年3月)
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