座位時間の長い労働者は睡眠の問題を抱えやすい 立ち上がって体を動かし対策 運動で血流を改善
座っている時間が長く、運動不足の生活が続くと、肥満や糖尿病などの身体的な慢性疾患のリスクが高くなるだけでなく、メンタルヘルスにも影響を与えることが分かってきた。
仕事中に座ったまま過ごす時間の長い労働者は、そうでない労働者に比べて、不眠症などの睡眠の問題を抱えるリスクが高いことが明らかになった。
デスクワークが6時間続いた後では、下腿の血流が大幅に減少するが、しかし10分間の休憩をとり、立ち上がってオフィスを歩くだけで、血管の健康を改善できることも分かった。
世界20ヵ国を対象とした調査では、平日に座っている時間は、日本人の成人がもっとも長いという結果が出ている。
座位時間の長い労働者は睡眠の問題を抱えることが多い
仕事中に座ったまま過ごす時間の長い労働者は、そうでない労働者に比べて、不眠症などの睡眠の問題を抱えるリスクが高いことが、新しい研究で明らかになった。
研究は、米サウスフロリダ大学によるもの。研究グループは、フルタイムで働いている労働者1,297人を対象に、約10年の間隔をおいた2つの時点で、睡眠の時間や規則性、入眠時間、不眠症の症状、昼寝、日中の疲労感などについて調査した。
その結果、日中の仕事中に座位行動の多い人は、そうでない人に比べ、寝つきが悪い、眠りが浅く途中で目が覚める、日中に疲労感を感じやすいなどの睡眠の問題を抱える割合が37%高いことが明らかになった。
労働者の80%は座ったまま仕事をしている
「コンピューターでの作業が増えるなど、技術の進歩にともない、座ったまま体を動かさない状態で仕事をしている人が増えています」と、同大学心理学部のクレア スミス氏は言う。
「企業などの従業員の多くは、8時間の勤務時間の大半を座って過ごしていると推定されます。職場での長時間におよぶ座位行動は、睡眠の健康に対しても深刻な影響をもたらします」としている。
健康的な睡眠とは、単に一晩の睡眠時間を7~8時間とれていることだけではなく、入眠障害がないこと、中途や早朝の覚醒がないことなど、質の良い睡眠をとれていることが大切で、一貫した睡眠スケジュールを守ることも必要としている。
調査では、日中の長時間の座位行動が影響し、睡眠不足のパターンにおちいっている労働者は、そうした不健康なパターンに何年もとらわれてしまう可能性があることも示された。たとえば不眠症のような深刻な睡眠の問題をかかえる人の90%は、10年後もそうした症状が続いていた。
「質の良い睡眠を十分にとれていることは、生産性、幸福感、全体的な健康に好ましい影響を及ぼすことが分かっており、従業員と雇用者の両方にとって重要です」と、スミス氏は述べている。
オフィス内のコンピューター作業などによる長時間の座位行動が続いたときは、10分間でも体を動かす時間をつくることを習慣にすると、従業員の血管機能を改善でき、血管の健康を回復できることが、米ミズーリ大学による別の研究でも示されている。
「テクノロジーの進歩により、座ったまま過ごす時間が増え、体を動かさないことが習慣になり、その結果、血管の健康に深刻な影響があらわれていることが懸念されます」と、同大学栄養・運動・生理学部のジャウメ パディラ氏は言う。
研究グループは、11人の健康な男性を対象に、8時間の労働時間のうち6時間を連続して座ったまま作業をしてもらい、その前後の血管機能の変化を比べた。
その結果、座ったまま行うデスクワークが6時間続いた後では、膝窩動脈(下腿の動脈)の血流が大幅に減少することが明らかになった。
しかし10分間の休憩をとり、立ち上がってオフィスを1,000歩ほど歩くと、脚の血流は改善することも分かった。体を動かすことで、血管の内皮機能を示す血流依存性血管拡張反応(FMD)なども改善した。
「長時間座った後に、10分間歩くだけで、血管の健康を回復できることが示されました。座る時間が減ると、代謝と心臓血管の健康状態が良くなることも分かっています」と、パディラ氏は言う。
「時間を忘れて仕事に没頭し、体を動かさない状態が長時間続くことは、誰にでもあることですが、そうした時間が長引いたときには、立ち上がり体を動かすことを意識して行うことが大切です」とアドバイスしている。
Your work habits may be threatening your sleep, USF-led study shows (サウスフロリダ大学 2025年1月7日)
Designing work for healthy sleep: A multidimensional, latent transition approach to employee sleep health (Journal of Occupational Health Psychology 2024年12月)
A walk around the office can reverse vascular dysfunction caused by hours at a computer (ミズーリ大学 2015年9月28日)
Impact of prolonged sitting on lower and upper limb micro- and macrovascular dilator function (Experimental Physiology 2015年4月30日)
座位行動 (厚生労働省)
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