「花粉食物アレルギー症候群」17歳の1割以上に発症を確認特にりんご、キウイ、パイナップルに注意
国立成育医療研究センターのアレルギーセンターは、近年急増している「花粉食物アレルギー症候群」について、出生コホート研究における17歳の1割以上に発症が見られた、とする報告を発表した。
特に注意すべき食品としてりんご、キウイ、パイナップルを挙げている。
花粉食物アレルギー症候群の原因で最多はりんご
食物や花粉、ダニなど、アレルギーの原因となる「アレルゲン(抗原)」が体内に入ると異物とみなされ、排除しようと「免疫グロブリン(IgE)抗体」という物質が作られる(=IgE感作)。感作の成立後にアレルゲンが再度体内に入ると、アレルギー症状が引き起こされる。
そのような中で、花粉症を持つ人が、花粉と似た構造を持つタンパク質を含む果物、野菜、豆類などを食べると、口の中やのどなどにアレルギー症状が現れたり、アナフィラキシーショックなどの重篤な症状に進行したりすることがある。この病気を「花粉食物アレルギー症候群(PFAS)」という。
同センターは2003年から一般の小児を対象に出生コホート研究(成育コホート)を行っている。出生コホート研究は、子どもが生まれる前から成長する期間を追跡して調査するもの。
これまでの研究で、5歳時点で10.6%だったアレルギー性鼻炎の症状を有する子どもが9歳時点では31.2%、13歳では68.8%に達し、年齢とともに上昇していることがわかっている。花粉と食物に含まれるアレルゲンが似ていることから、花粉症の増加に伴いPFASも増える恐れがある。
そのため同センターでは、生育コホートから17歳の青少年458人分の血清と質問表調査からPFASの有症状況を分析。その結果、17歳青少年全体の63.8%が過去1年間に鼻炎症状を経験していた。
また54.4%に花粉アレルギーがあり、11.2%が花粉食物アレルギー症候群(PFAS)を発症していた。PFASの原因食品として多かったのはりんご(45.1%)、キウイ(41.2%)、パイナップル(39.2%)だった。
乳幼児期のアトピー性皮膚炎を始まりとし、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎と異なる時期にアレルギーが出現することが多く、「アレルギー・マーチ」と呼んでいる。今回の研究でも、PFASの43.1%にアトピー性皮膚炎の既往が認められたことから、アレルギー・マーチの仮説を裏付けていると考えられる。
研究グループは「青少年のアレルギー疾患管理において、PFASを認識することの重要性を改めて強調するものと考えられる」としている。
災害時の対応等も掲載「アレルギーポータル」
2017年の厚生労働省告示(アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針)で「国は、関係学会等と連携し、アレルギー疾患を有する者を含めた国民が、アレルギー疾患を有する者への正しい理解のための適切な情報にいつでも容易にアクセスできるようウェブサイト等の充実を行う」と示されている。
そのような中、厚生労働省の補助事業として一般社団法人日本アレルギー学会が運営する「アレルギーポータル」では、アレルギーの基礎知識から医療機関、災害時の対応などの情報がまとめられている。
花粉症についても詳しく解説されており、「花粉-食物アレルギー症候群はどのような病気か」と題する動画もある。
近年急増する「花粉食物アレルギー症候群」17歳で1割以上に発症~交差反応でりんご、キウイに特に注意~(国立成育医療研究センター/2025年10月21日)
サイト「アレルギーポータル」
9歳の約75%がアレルギー検査で陽性! 小児アトピー性皮膚炎や喘息症状(喘鳴)の経過には複数のタイプがあり 経過や症状に合わせてベストな治療を行うことが重要」(国立生育医療研究センター/2020年8月5日)
出生コホート研究13歳時点で 68.8%が鼻炎症状、81.8%は IgE 抗体陽性 湿疹が乳児期から持続するタイプは、様々なアレルギー症状の併存リスク高(国立生育医療研究センター/2022年8月24日)
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