オピニオン/保健指導あれこれ
行動科学に基づいた保健指導スキルアップ~対象者の行動変容を促すには?~(提供:田辺三菱製薬(株))
No.1 行動科学に基づくアセスメントを活かしたアプローチ(提供:田辺三菱製薬(株))
新潟県立大学人間生活学部健康栄養学科・助教
2021年01月28日
対象者が自ら変わろうとする力をサポートするために役立つ「行動科学」
「野菜をたっぷり食べよう」「お酒はほどほどに」「味は薄味で」など、健康に望ましい食行動は積極的にとり、健康を妨げる行動は控えることは、《一般的》に大切であることを理解している人は多いはずです。 しかし、いざ「日常的に健康的な行動をとる」となると、なかなかそのハードルは高いのが現実です。その例として、以下のようなパターンを経験したことはないでしょうか?
【パターン①:分かっていても、できない】
(例)仕事が忙しくて、家に帰るのは夜中に…寝る前に食べるのは良くないのは知っているが、ビールとつまみは止められない…。
【パターン②:分かっていても、しない (一般的には大切でも、自分にとっては大切でない)】
(例)しっかり食べた方が調子が良くて仕事もできるから、少し太っているくらいが良い!
人の行動、特に食行動は、とても複雑で、単に「生命を維持するために必要なエネルギー・栄養素をとる」といった目的だけでなく、自分が好きな物を好きなように食べられるといった「心理的」な目的や、家族や友人、同僚と一緒に食事を楽しむといった「社会的」な目的など多様な側面があります。
行動変容の「準備性」とは?
行動変容の準備性は、それが高い状態にあれば、新たな行動をとる可能性が高いことを意味し、生活習慣改善の成功率も高くなります。 準備性は、①行動を変えようと決意するまでの段階、②行動を変え始めた段階、③新たな行動を続けていく段階の3つに分かれ、それぞれの段階で、適したアプローチ法は異なります。 例えば、行動を変えようと決意するまでの初期段階では、新しい行動をとることの「メリット」が低く(≒重要性を感じられない)、今の生活で新たな行動をとれる自信(セルフ・エフィカシー)も低い。このような対象者にどれだけ望ましい行動だけを提示しても、実際の行動変容にはつながりにくいのです。 Prochaskaらは、トランスセオレティカルモデル(transtheoretical model:TTM)として、前述3つの行動変容の段階を5つの変容ステージ(前熟考期・熟考期・準備期・実行期・維持期)に分け、各ステージで新たな行動を取り入れるため、どのような変化が起こっているかを10の変容プロセスとして整理しました。
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