No.3-2 これからの保健指導ー行動科学を搭載したIoTを用いた保健指導の可能性と期待ー(提供:田辺三菱製薬(株))
減量に成功した人は、どのような人であったか?
前回、体重記録をつけようとするレベルの行動変容ステージにある人が、アプリ『TOMOCO』を使用し、体重を記録すること(セルフモニタリング)は、「減量の成功」とも関連する可能性がうかがえました。では、実際に減量に成功した人は、なぜ成功したのでしょうか。もちろん、自分で体重記録をつけるほど、生活習慣の改善に対する行動変容ステージが高く、何もサポートがなくても、成功した人かもしれません。
一方、アプリの使用状況や、その中で、行動変容の鍵となる「目標設定」をどのように行っていたか?を評価することで、アプリの機能の活用法や、そのための支援の仕方が見えてくると思います。
そこで今回は、アプリによる保健指導を受け、減量に成功した人の特徴を、減量に成功しなかった人や、そもそも体重記録をつけていなかった人と比べてみました。
1ヶ月後に減量に成功していた人の特徴は?
まず、対象者を「1ヶ月後に減量できた人」と「減量できていない人/記録をつけていなかった人」の2グループに分け、「開始時のBMI(kg/㎡)」、「アプリの起動割合(%)」の差を調べました。加えて、アプリによる保健指導で重要視する「目標設定:Plan」「自己評価:Check」「見直し(目標の再設定):Act」に関する評価を比べた結果が以下になります。
アプリ『TOMOCO』による保健指導では、目標を「食事」「運動」「その他(服薬など)」から少なくとも1つ、最大でそれぞれから1つずつの計3つを同時に立てることができます。
開始時(初回)に立てた後は、「自己評価」と「見直し(目標の再設定)」を1ヶ月ごと、または、目標を変更したタイミングに行ってもらうことで、行動変容を促すことを狙っています。
目標を立てた後は、それぞれの目標に対応した具体的な取り組み内容(=トライ)を選ぶように誘導し、対象者の日常生活や課題に合った方法で、目標達成を目指していきます(★参考:「No2.行動科学を搭載したIoT有効活用のすすめ」)。
![](http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/opinion/4834038f2bdc56e05a8d26b8c2ef60ae348d9cff.png)
目標の評価は、「全くできなかった(1点)」~「とてもできた(10点)」の10段階で自己評価をしてもらい、その得点に合わせて、同じ目標で継続することを勧めたり、変更することを勧めたりできるようになっています。
自己評価の高すぎる目標は、もともと取り組めていた行動になっているなど、メタボリックシンドローム(身体状況)の改善には不十分な行動である場合があります。
一方、低すぎる目標では、行動変容に対する自信が下がり、取り組む意欲も低下する場合があります。そこで、『TOMOCO』では、自己評価の結果によって、おすすめする目標を変え、適度に達成できる目標(自己評価で7~8点くらい)を立て、継続できるような支援を行えるようにしています。
また、アプリで評価できる「歩数」も多い特徴がみられた。
![](http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/opinion/d6cf20492c90060229c3275b39736326cefe0ead.png)
1ヶ月後・3ヶ月後ともに、減量に成功した人の特徴は?
![](http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/opinion/8b197f5886281c38a2d0e512378c8afdaeabb97c.png)
このことから、早期におすすめ目標の中から、自分に適したレベルの(適度に達成できる)目標を選択し、自己評価を繰り返しながら、一貫して取り組めている可能性が考えられます。
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![](http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/opinion/4d88e9da26f514441eaef37345ccaa44383c26f4.png)
アプリを活用した保健指導への期待と課題
今回は、アプリ『TOMOCO』で保健指導を行うことの可能性について、実際の動機付け/積極的支援で試行することで検討してみました。
その結果、対象者がアプリを継続して使用できれば、対象者自身で、「目標設定」→「セルフモニタリング(体重記録や目標の振り返り)」→「自分に適した目標を早期に見つける」→継続することを支援でき、減量などメタボリックシンドローム(身体状況)の改善にもつながることが期待できました。
一方、アプリを継続して使用できた人は限られることもうかがえ、今後は、どのようにすれば、継続して使用してもらえるかを考える必要があるかもしれません。
例えば、動機づけの状態が充分でない人や、アプリの目標設定やセルフモニタリングがうまく進められない(または必要性を感じられていない)人には、事前に対面などで丁寧なサポートを行うことで、望まれる効果が得られるかもしれませんね。
令和2年度の診療報酬改定では、栄養食事指導の領域でも、2回目以降の外来栄養食事指導で情報通信機器を用いて実施した場合、報酬点数が認められるようになりました。
行動科学の理論・モデルなどを取り入れたアプリ等のIoTは、栄養食事指導にうまく活用していくことで、対面のみの場合と比べ、適時に(高頻度で)、対象者の主体性を重んじた「目標設定」「評価」「見直し」ができる可能性があります。
よりきめ細やかな支援で、対象者の行動変容を促し、対面での栄養食事指導の効果を高められることを期待したいと思います。
「行動科学に基づいた保健指導スキルアップ~対象者の行動変容を促すには?~(提供:田辺三菱製薬(株))」もくじ
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