オピニオン/保健指導あれこれ
健康管理スタッフに大切なメンタルヘルス支援とは

No.1 「ストレス学ハンドブック」誕生で目指すこと

神戸親和女子大学大学院教授
丸山 総一郎
 1. 「ストレス学ハンドブック」誕生の経緯と今日的意義

 ストレスフルな現在社会や職場環境において、『ストレス』を耳にしない日はないかもしれません。Googleで検索すれば、現在3千万件超ヒットします。2015年12月1日の施行に向け、いよいよ、ストレスチェック制度の実施が差し迫った課題となり、「ストレスチェック」という言葉をネットや書籍でもよく目にするようになりました。

 しかし、ストレスに関する知識や技術について、時宜に適った正確な内容をわかりやすく説明することは意外に難しいのです。それが、日本で"ストレス学"ともいうべき体系的な専門書の刊行が待望されながらも、出版されてこなかった所以ではないでしょうか。

 これまでのストレス関連本の多くは、入門書や事典、臨床家向けの実践書、欧米の専門書や百科事典の翻訳、ハウツーものでした。

 そこで、書名を、「ストレス学ハンドブック」とし、ストレスに関する基本的な知識から実践、最新の研究成果までを体系的に網羅した本邦初のハンドブックとして企画しました。そのため、健康管理の現場においても、その具体的な解説は活用しやすく、専門的視点からも大いに参考になる広がりと深さを備えています。

 2. 「ストレス学ハンドブック」の構成と概要
 ―その特徴と執筆陣

 本書は、5部構成となっています。最初の3部は総論(第1部 ストレスとは何か、第2部 ストレスの理論と測定、第3部 ストレス臨床の実際)で、ストレスの発生メカニズム、測定・評価の理論と方法、医学的・心理学的対応や環境調整による対応について、最新の成果までが詳細に解説されています。残りの2部は各論(第4部 現代社会におけるストレス問題の解明と対策、第5部 トピックス)です。

 各論では、現代社会で喫緊に解決すべきストレス問題が系統立てて取り上げられています。具体的には、自殺、うつ病、PTSD、摂食障害、アルコール使用障害、認知症、不眠などの精神疾患、育児、学力低下、発達障害、児童虐待、不登校・ひきこもりなどの乳幼児期から児童・青年期を中心とした問題、その他、離婚、介護、終末期や死別、犯罪被害、情報危機、労災、非正規雇用、セクハラ・パワハラなどをストレスに関連づけ、実態を明らかにしながら、新知見や科学的根拠に基づいた対応や治療の試みをそれぞれの問題に即した切り口で示されています。

 執筆陣は、ストレス研究や臨床の第一線で活躍する研究者・医師総勢45人で、その解明や対策のポイントをわかりやすく、丁寧に解説しています。それゆえ、ストレスについて基本から学びたい初学者や実務家から最新動向をフォローしたい研究者まで、必携のレファレンスとして仕上がりました。

 3. ストレスチェック制度の実施に向けて、保健指導の実践者に望むこと
 ―「ストレス学ハンドブック」の活用の仕方を含めて

 改正法は、「労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止する」こと、つまり旧法案の第二次予防(うつ病等のスクリーニング)ではなく、第一次予防(発病防止)が目的とされました。

 旧法案との大きな違いは、主題が「精神的健康の状況を把握するための検査等」(メンタルへルスチェック)から、「心理的な負担の程度を把握するための検査等」(ストレスチェック)に変わったことです。改正法は、2014年6月25日に「労働安全衛生法の一部を改正する法律」として公布、2015年12月1日には施行されます。旧法案の修正には、調査票に3領域「職場のストレス要因」「心身のストレス反応」「職場の周囲からの支援」を含め、集団分析と職場環境改善については努力義務(推奨)とされました。

 ストレスチェック制度の導入後、「ストレス学ハンドブック」はより一層多様に活用できます。調べたい項目を目次や索引で探して読み、正しい知識や技術を知ると、それまでの不全感が払拭されることでしょう。

 たとえば、日常、復職支援など第三次予防に追われている健康管理スタッフにとって、第二次予防、第一次予防へとさかのぼって支援を展開していくことは容易ではありません。それは原因となる職場ストレス要因の除去や軽減がすぐには困難である場合が多いからです。

 またステークホルダーが増え、人事労務や経営判断に関わる問題に発展する可能性もあります。その時も、この書が役立ちます。どのような状況であっても対応のヒントやコツが発見できます。その他、質問票の評価基準(カットオフポイント)が問題になれば、尺度の妥当性や信頼性、ストレス測定法に関する項目を読むと理解が深まります。

 職場のメンタルヘルス不調の場合、重要なのは、それを生じた原因が仕事上のことか、仕事以外のことかということです。心身のストレス反応にはどちらも反映している可能性があります。プライバシーに立ち入ることは余り出来ませんが、各論で多様なストレス問題への対処を知っておくと、面接指導や健康相談で因果関係プロセスの一端が見えてくることでしょう。

 このように健康管理スタッフ自ら疑問を読み解き、回答を得、気づきや洞察を深めるためのハンドブックとして好適書が誕生したのです。


編:丸山総一郎
発行所:創元社  発行日:2015年3月

 ストレスに関する基本的な知識から最新の研究成果までを体系的に網羅した待望のハンドブック。ストレスの発生メカニズム、測定・評価の方法、医学的・心理学的対応や環境調整による対応、そして自殺やうつ病などストレスが関わるさまざまな問題について、第一線で活躍する研究者・医師総勢45人がわかりやすく、丁寧に解説する。ストレスについて学びたい初学者から実務家、最新動向をフォローしたい研究者まで、必携のレファレンス。(出版社より)

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