オピニオン/保健指導あれこれ
がん患者さんのアピアランス・サポート
No.4 抗がん剤の副作用のよる爪のトラブルとケアについて
みなとアピアランス・サポート相談室アピアランスアドバイザー・ネイリスト
2018年10月23日
患者さんが抱える爪のトラブルをケアしたい看護師からネイリストへ転職
「脱毛」ほど知られてはいませんが、抗がん剤や一部の分子標的薬の副作用の1つに「爪の変形や変色」があります。 病院で12年間、看護師として働いていたときに、抗がん剤の副作用を始め、患者さんが抱える爪のトラブルを目の当たりにし、ネイルケアの重要さを感じていました。 当時の看護師としての立場ではできることに限りがあり、爪のケアまでは配慮が行き届かない現実がありました。2017年に看護師を辞め、現在は「みなとアピアランス・サポート相談室」のアピアランスアドバイザーとして、がん患者さんのネイルケアを担当をしています。爪は生活を送る上でとても大切なところです。
爪のトラブルで痛みや炎症があれば、健康な人でも手を使った作業がやりにくくなったり、うまく歩くことができなくなったりします。がんなど病気を抱えている患者さんであれば、こうした小さな炎症からも大きく体調を崩す可能性がありますので、アピアランス(外見、見た目)としての問題に加え、痛みや炎症を引き起こす可能性もあり、正しいケアが必要です。 抗がん剤の副作用で爪にトラブルがある方のネイルケアにはいくつか注意点があります。その注意点やポイントをここでお伝えいたします。 がん患者さんや薬の副作用で爪にトラブルがある方へ是非、お伝えしていただければと思います。爪に起こる抗がん剤の副作用
爪に起こる抗がん剤の副作用には「巻き爪」「爪が黒く変色」「爪にスジが入る」「爪が薄くなり、割れる」といったものがあります。爪は付け根にある爪母細胞で作られますが、抗がん剤によりこの部分が影響を受けて、爪の細胞分裂や増殖が損なわれることによって副作用が起こります。影響を受けた部分が爪に現れるのは、抗がん剤治療が終わって数ヶ月たった後です。 抗がん剤の副作用に対するネイルケアで、まず行うのは「甘皮ケア」です。手足を温かいお湯につけてふやかした後、余分な甘皮を取り除きます。結果、爪母細胞の環境を改善、健康で丈夫な爪が生えてくるのです。アピアランス相談室で心がけているネイルケアとポイント
・さらに甘皮ケアの後に保湿のオイルを塗るのですが、甘皮周りをキレイにすることでオイルの吸収がよくなり、さらに良い爪が生えてきます ・抗がん剤の副作用で、指先にしびれが出ることもあるのですが、そうした方には、極力、圧をかけないように爪を切り、ネイルファイル(やすり)をかけるときも、1回ずつゆっくり、弱くかけるように ・使用しているネイルポリッシュは、がん患者さんのQOL向上を目的に開発されたもので、主成分が水で保湿効果があります。抗がん剤治療中の患者さんは、吐き気があったり、匂いにも敏感だったりしますが、この製品は有機溶剤が使われていないので、気になる揮発性の匂いが全くありません。 ・施術時間の調整など体調に合わせたケアをします。自分でできる、簡単ネイルケア
1.お風呂で、綿棒を使った甘皮ケア 一般の方でもできる簡単な方法をご紹介します。お風呂で湯船に浸かり、甘皮がふやけてやわらかくなったら、綿棒を浸かって、爪の付け根の方向に押します。綿棒は先が丸くなっていてやわらかいので、指や爪を傷つけることもありません。 2.お風呂上がりは、保湿オイル 爪用の保湿オイルが売られていますので、お風呂での甘皮ケアの後に塗ります。爪を作る爪母細胞の環境が良くなり、元気な爪が生えてきます。爪の付け根に保湿オイルを塗ると、乾燥を防いで元気な爪が育つ
そして忘れてはいけないのが爪の裏側。爪はくっついている皮膚の部分から水分を補給していますが、伸びて指の皮膚から離れた部分は、乾燥し、もろくなります。裏側にも保湿オイルを塗るようにしましょう。爪の裏側にも忘れずに保湿オイルを
3.手には保湿クリームを 手が乾燥すると、爪にも影響が出ます。また乾燥するとささくれができやすくなりますが、抗がん剤治療中だと、そこから傷ができたことがきっかけで感染症になることもあります。 4.手袋で手の保護を 抗がん剤治療中は手がしびれたりして、感覚が低下しているため、気づかないうちに指先を傷つけてしまうことがあります。指先を守るために、保護用の手袋をつけるようにしましょう。入浴や炊事の時に使えるものが販売されています。 また、ネイルポリッシュ(ネイルカラー)を塗るのは、爪の変色を隠すというアピアランスの効果がありますが、もろくなった爪を保護し、二枚爪などを防ぐという役割もあります。ジェルネイルは爪を傷める可能性があるので、おすすめできません。気になることがあれば相談へきてください
仕事の場ではもちろん、食事会やレジでお金を出す時など、指先が気になる状況は意外と多くあります。また、自分自身が毎日見る指先をケアすることでQOLの向上にもなります。アピアランス相談室にいらっしゃる方は女性だけでなく男性もいますし、年齢も様々です。 「爪の悩みなんて…」と思わずに、どうぞ気軽に相談にきていただきたいと思います。「がん患者さんのアピアランス・サポート」もくじ
著者プロフィール
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みなとアピアランス・サポート相談室アピアランスアドバイザー・ネイリスト
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