オピニオン/保健指導あれこれ
健康保険組合が挑戦したデータヘルス計画とコラボヘルスの推進
No.2「国に先駆けてどのようにデータヘルス計画にチャレンジしたのか」
内田洋行健康保険組合 事務長
2015年08月17日
健保組合が本来やるべきことへの挑戦(発症・重症化予防の現状分析)
健保の本質はなにか、本来やるべきことはなにか、今なにが足りないのか、などを自問自答しました。そもそも、加入者の健康リスクが可視化できていないので、有効な打ち手がイメージできない。
私の結論は、先ず、「生活習慣病の発症・重症化予防の現状分析」を外部専門業者に委託して「健康リスクを見える化」し、医師の指導の下に有効な計画を立案し保健事業に抜本的な対策を実行することでしたが、この案は組合会前の事業主との会議で「健保財政が厳しい折に新規投資は如何なものか」と受け入れられませんでした。
しかし、その後の(株)LSIメディエンスとの度重なる協議の結果、No.1で記載しましたとおり、健診業務の委託と検査項目の見直しによる「コスト削減効果(おつり)」で、「発症・重症化予防の現状分析」に「再投資する」という内容で、組合会(平成25年2月)に諮り承認を得ることができました。(勇気ある第一の突破)
組合会終了後の平成25年3月~5月の間にデータ分析・解析(健診結果&レセプト)を行い、その結果を6月14日の組合会で報告し、理事の皆様より高い評価を得ました。その前日(6月13日)の日経新聞に「健保はデータヘルス計画を策定せよ」と発表され吃驚しました(参照:No.1に関連内容記載)。 この分析・解析につきましては、加入者への保健介入やアプローチ対象者の選定には医学的知見が必要であることから、医師、歯科医師が在籍しヘルスケアサービス開発や医療費解析実績の豊富な(株)ミナケアに委託し現在に至ります。
強い願望が功を奏す(厚生労働大臣宛の企画・提案書作成)
やむに已まれず、平成25年8月に自ら厚生労働大臣宛の肝入りの企画・提案書を作成しました。企画・提案内容はICTを活用したデータヘルス計画をサポートするシステムの開発による実証事業です。外部のデータ解析事業者や、健診・保健指導の専門事業者、健康データ測定事業者、システムベンダーなどを束ねてコラボレーションを行い、健康増進を目的とした新たな仕組み(システム)を創出することでした。
残念ながら、又もや内部会議で受け入れられず、企画・提案書は私の机の中で眠ることになりました。しかし、この肝入りの企画・提案書(強い願望)が後で功を奏し成功要因になったのです。
私は、私淑している中村天風さんの言葉「新しき計画の成就はただ不屈不撓の一心にあり。さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に」が大好きです。どんな艱難辛苦が待ち受けようとも挫けない、岩をも通すような一念でやりとげる、そのように純粋に思い続けることが成功の秘訣だと信じています。(稲盛和夫:京セラフィロソフィP249より)
私は、同志と一緒にメンバーのチームワークを重視し、不屈の精神でデータヘルス計画、コラボヘルス、健康経営を力強く推進して参ります。
必死の挑戦(データヘルス計画モデル事業の公募申請)
平成26年2月6日付の厚労省の事務連絡「平成25年度レセプト等データ分析に基づいた保健事業の立ち上げ支援事業の実施についての公募申請(提出期限:2月17日必着)」が届きました。なんと、その日は2月27日開催の組合会の議案書作成の真最中でした。健保組合の方ならお解りと思いますがこの時期は超多忙なのです。一瞬、目がくらみ血の気が引きました。しかし、なんとしても公募申請を勝ち取りたいという強い願望が頭の中に充満し、即、常務理事(松井陽一)に相談し「熱く語り」申請書提出のご了解を得ることができました。
私としては、好機到来であり、25年8月に作成済の厚生労働大臣宛の企画・提案書を再利用することで申請書を短時間に完成させることが可能であると判断した訳です。そして、土日出社で組合会資料作成と申請書作成の両方を完成させたのです。(勇気ある第二の突破)
その結果、補助金上限1,500万円のデータヘルス計画モデル事業を勝ち取ることに成功しました。これは、私が平成17年に農林水産省の実証事業「ICタグを活用した食品トレーサビリティシステムの開発実証事業」のプロジェクトマネージャーを経験していたから出来た神業であり、(株)ミナケアの申請書作成に対するご支援の賜物であると心より感謝しております。
当健保のホームページにデータヘルス計画書(オリジナル作成版/組合共通版)を公開していますのでご覧ください。内田洋行健康保険組合 ホームページ
http://www.uchidakenpo.or.jp/index.html *資料はこちらからPDFにてご覧いただけます。
・発症・重症化予防の分析・解析 組合会本番で承認(組合会資料25年2月)
・重症化予防の現状分析・解析(組合会資料25年6月)
「健康保険組合が挑戦したデータヘルス計画とコラボヘルスの推進」もくじ
- No.1 一体どうすれば良いのか、どのように財政・保健事業の改革を実行したのか
- No.2「国に先駆けてどのようにデータヘルス計画にチャレンジしたのか」
- No.3「学び:素晴らしい仲間との出会い」
- No.4 「夢を見た:コラボヘルスの推進」
- No.5 「日本初、世界初への挑戦:先進的な保健事業の実証事業」
- No.6 「当健保が主導で推進したコラボヘルスと健康経営の3つの成功要因(血流)」
- No.7 「生まれ変わる行動変容の習慣化(健康寿命の延伸に向けて)」
- No.8 「国を挙げた日本健康会議、ならば、UCHIDA健康会議の開催だ!」
- No.9 「歩く広告塔:世界メディアの取材/他」
- No.10「日本国は大企業も中小企業も健康経営 ~まったなし!~ の時代に突入」
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