オピニオン/保健指導あれこれ
LGBTについて、学校保健分野・地域保健分野・産業保健分野で考える
No.2-3 LGBTと自殺、社会的養護、家族形成:児童養護施設での対応
岡山大学大学院保健学研究科 研究科長
2020年02月20日
児童養護施設のスタッフも研修が必要
2015年の文部科学省の通知もあり、学校保健におけるLGBTの子どもへの支援は徐々に広がっています。しかし、児童養護施設の子どもにおける性の多様性に対してはあまり目が向けられていません。 当然ながら、社会的養護を受ける子どもの中にもLGBT当事者は存在していると考えられます。海外では、社会的養護を受けていない子どもにおける割合より高率ともされています。 一般社団法人レインボーフォスターケアによる「児童養護施設における性的マイノリティに関するヒアリング調査」では、2016年11月、601の児童養護施設に郵送法にて質問紙を送付し、220施設から回答を得ています。 性的マイノリティと思われる児童の存在については、「現在いる」10%(23施設)、「過去にいた」29%(63施設)、「現在いて、過去にもいた」6%(13施設)との結果でした。また、在籍していた性的マイノリティと思われる児童の人数は、のべ144名(現在:40名 過去:104名)となっていました。 トランスジェンダーの可能性があると考えられる「(戸籍上)男児だが女児のようなふるまいの児童」43名、「(戸籍上)女児だが男児のようなふるまいの児童」44名、「異性のようなふるまい(性別不明)」8名であり、また、同性愛(両性愛)的傾向のある児童は、戸籍上の男児28名、戸籍上の女児26名、性別不明5名という内訳でした。
差別されることがあってはならない
2017年に厚生労働省がまとめた「新しい社会的養育ビジョン」の中では、「子どもの意見表明権の保障、アドボケイト制度の構築」の項目の中で、「特別な配慮を必要とする、何らかの障害のある子どもや性的マイノリティの子どもなどについて、差別されることがあってはならず、このような子どもに対し、児童福祉施設の職員や里親等は適切な対応ができるような技能を身につけるようにする必要がある。」としています。 学校の中での支援が進む中、文科省の通知なども参考にして、児童養護施設での研修が行われ、社会的養護を受けるLGBTの子どもへの対応が進むことが期待されます。「LGBTについて、学校保健分野・地域保健分野・産業保健分野で考える」もくじ
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2023 SOSHINSHA All Rights Reserved.
最新ニュース
- 2023年01月31日
- 【新型コロナ】休校中に生活リズムが乱れた子供は睡眠時間が減少 夜型の生活をしている子供は要注意
- 2023年01月30日
- 【職場の保健指導】生活改善プログラムでは職場の雰囲気を変えることも必要 健康支援も個別化を
- 2023年01月30日
- 男性が育児に参加すると子供の成長に良い影響が メンタルヘルス不調が減少 男性の育児参画が必要
- 2023年01月30日
- 肥満者へのオンライン生活指導は効果がある 個別化した情報提供と専門家の助言が重要
- 2023年01月30日
- 患者を介護する「家族介護者」にも医療・介護の専門職のケアが必要 健康行動の適切な助言も専門職の役割