ニュース

【2014年国民健康・栄養調査】 所得が低い人ほど健診を受けず不健康

 厚生労働省は「2014年国民健康・栄養調査」の結果を発表した。所得が低い人ほど栄養バランスの欠けた食事をとっており不健康であることが示された。
 肥満の増加に歯止めがかかった一方で、女性の「やせ」志向が続いており、運動習慣のある人も全体の約3割など、生活習慣改善の必要性が引き続き示された。

 厚生労働省は「2014年国民健康・栄養調査」の結果を発表した。調査は昨年11月、無作為抽出した5,432世帯を対象に実施し、3,648世帯(67.2%)から有効回答を得た。
所得が低い人ほど食事の栄養バランスが欠け不健康
 世帯所得が600万円未満の中・低所得者層は、600万円以上の高所得者層より食事が主食(穀類)に偏り、野菜や乳類の摂取量が少ないなど、栄養バランスが欠けている傾向があることが示された。

 調査では、世帯所得が200万円未満、200万円以上600万円未満、600万円以上に分けて、生活習慣病について比較した。

 17の食品群では、低所得者層は野菜類や肉類、きのこ類、卵類、乳類など半数以上の項目で高所得者層より摂取量が少なく、穀物類だけ多かった。

 主食である穀類の1日当たりの摂取量は、世帯所得が600万円以上の男性で494gだったのに対し、200万円~600万円未満は520g、200万円未満では535gだった。女性もそれぞれ352g、359g、372gと、所得が低いほど量が多くなった。

 一方、野菜の摂取量は所得600万円以上の男性は322g、女性313gだったのに対し、200万円未満では男性253g、女性271gに減少。肉も野菜と同様に開きがあった。

低所得者の人ほど健康診断を受けていない
 健康診断を受けていない人の割合も低所得者ほど高く、男性では600万円以上は16.1%なのに対し、200万円未満で42.9%に上った。女性では600万円以上は30.7%なのに対し、200万円未満で40.8%に上った。

 1日の歩数も所得が多いほど増える傾向があり、男性では600万円以上は7,592歩なのに対し、200万円未満では6,263歩だった。女性では600万円以上は6,662歩なのに対し、200万円未満で6,120歩だった。

 喫煙者の割合も同様で、男性では600万円以上は29.2% なのに対し、200万円未満で35.4%に上った。女性では600万円以上は5.6%なのに対し、200万円未満で15.3%で、3倍近い差が出た。

 厚生労働省では「所得の低い人は時間的にも精神的にもゆとりを得られにくく、食事で多くの食材を使うなど手間をかけることを避けている。健康に対するセルフケアに関しても、意識が回りづらいのではないか」と分析している。
男性のBMIが25以上の「肥満」は28.7%
 男性では、BMI(体格指数)が25以上の「肥満」の割合は28.7%だった。肥満の割合は年代別では50歳代が34.4%ともっとも高かった。肥満は調査開始から増加傾向が続いていたが、ここ数年横ばいが続いており、厚労省は「男性の肥満はまだ高水準ではあるが、増加に歯止めがかかった」とみている。
 一方、女性の「肥満」の割合は21.3%で、50歳代以降で20%を超えている。「やせ」の割合は10.4%で前年度から1.9ポイント低下した。やせは20歳代が17.4%ともっとも多く、30歳代が15.6%、40歳代が10.9%となった。70歳以上でも8.9%に上っており、女性の痩身志向は年代を超えて続いている。

 痩身志向は若い女性ではホルモンバランスの乱れ、高齢者では低栄養の原因になので、厚労省は「健康な体の維持に影響しかねない。高齢期に向けて生活習慣を改善する必要がある」と注意を呼びかけている。

 また、65歳以上でBMI20以下の「低栄養傾向」にある人は17.8%に上り、高齢者(85歳以上)では23.6%に上った。

 エネルギー摂取量とエネルギー消費量が等しいとき、体重の変化はなく、健康的な体格(BMI)が保たれる。「日本人の食事摂取基準」では、体格指数が摂取エネルギーの指標として採用している。
食塩摂取量は年々減少しているが目標に届いていない
 食塩摂取量の1日あたりの平均値は10.0gで、性別にみると男性10.9g、女性9.2gだった。この10年間で食塩摂取量は男女ともに減少しているが、「健康日本21(第2次)」の食塩摂取量を目標値である8gには届いていない。

 年齢層別にみると、食塩摂取量がもっとも多いのは60歳代で、男性では11.6g、女性では9.8gに上った。
運動習慣:60歳代、70歳代以上の3割以上が運動している
 運動習慣のある人の割合は、男性31.2%、女性25.1%であり、その割合は男性では30歳代で13.1%、女性では20歳代で10.1%ともっとも低かった。60歳代、70歳代以上は男女とも30%を超えており、若年世代の健康意識の低さが浮き彫りになった。

 1日の歩数の平均値は、男性が7,043歩、女性が6,015歩であり、10年間で減少している。65歳以上では男性が5,779歩、女性が4,736歩となっており、高齢者で歩数の減少傾向が明らかになった。

喫煙率は19.6%に低下 「たばこをやめたい」人は増加
 現在習慣的に喫煙している人の割合は19.6%で、男性で32.2%、女性で8.5%だった。この10年間で喫煙率は低下しているが、2010年以降は男性で33%前後、女性は9%前後で推移している。年齢階級別にみると、その割合は男女ともに30歳代でもっとも高い。

 現在習慣的に喫煙している人のうち、「たばこをやめたい」と思っている人は、男性で26.5%、女性で38.2%に上った。
健診を受けていない人ほど不健康 肥満や高血圧が増加
 過去1年間に健診を受診しなかった未受診者の割合は、男性で27.8%、女性で37.1%で、年齢では男性で70歳以上(38.6%)がもっとも高く、女性では30歳代(46.7%)がもっとも高い。

 健診の受診状況別に生活習慣等の状況(たばこ、運動、体型、血圧)を比較すると、女性の肥満者の割合は未受診者で高く、また男女ともに現在習慣的に喫煙している人の割合、運動習慣がない人の割合、血圧の平均値は未受診者で有意に高い。
男性の15.5%、女性の9.8%が糖尿病有病者
 糖尿病有病者(糖尿病が強く疑われる人)の割合は、男性で15.5%、女性で9.8%であり、2006年調査に比べ増えていることが判明した。この調査での「糖尿病有病者」は、HbA1c(NGSP)値が6.5%以上であるか糖尿病の治療を受けている人が該当する。

 糖尿病は50歳を超えると増えはじめ、70歳以上では男性の4人に1人(22.3%)、女性の6人に1人(17.0%)が糖尿病とみられる。

平成26年「国民健康・栄養調査」の結果(厚生労働省 平成27年12月9日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月18日
人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
2024年04月18日
健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
2024年04月09日
子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
2024年04月08日
【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
2024年03月18日
メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
2024年03月11日
肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
2024年03月05日
【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
2024年02月26日
近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶