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米を中心とした日本型食生活が健康寿命を延ばす 食育健康サミット2017

 日本医師会と米穀安定供給確保支援機構は、11月9日に日本医師会館大講堂で、ごはんを主食とした日本型食生活の生活習慣病の予防・治療における有用性などについて考える「食育健康サミット2017」を開催した。
年齢・性別も含めたライフステージに着目した対策が必要
 日本人の平均寿命は世界で有数だが、平均寿命と健康寿命の差である「不健康な期間」は大きい。これを解決するために、▽若い女性や更年期女性の骨粗鬆症、▽妊婦の低栄養に伴い、子供が成長してから健康が悪化しやすいこと、▽壮年男性のメタボリックシンドローム、▽高齢者のサルコペニア――といった年齢・性別も含めたライフステージに着目した疾病構造の理解が必要で、一律な生活習慣改善ではなく、ライフステージに合わせた対策が必要とされている。

 ライフステージや性別により、高血圧や2型糖尿病、脂質異常症など、発症する疾病が違うことから、一律的な生活習慣の改善ではなく、それぞれの世代に合わせた改善・対策が必要で、米を中心とした日本型食生活が大きく貢献することが示された。

日本人のライフステージから見る疾病構造と食育の重要性
 帝京大学臨床研究センターセンター長の寺本民生氏は「日本人のライフステージから見る疾病構造と食育の重要性-"伝統的な日本食(The Japan Diet)"研究を踏まえて-」と題し講演。

 日本では肥満が急増しているが、かつては肥満や2型糖尿病などの疾患は少なかった。1975年頃の食生活は米類・脂肪摂取量のバランスが均衡しており、理想的とされている。そのバランスが崩れ、米類の摂取量が減少し、逆に脂肪摂取量は増加した。それに伴い肥満が急増しており、米を中心とした日本型食生活が大きな役割を果たしていたことが示された。

 寺本氏らが行った研究では、30~49歳の男性が動物性脂肪や菓子類の多い食事から、米、魚、大豆、野菜、海藻、きのこなどを組み合わせた日本食に変更すると、体重やコレステロール値などの改善がみられ、壮年期男性の肥満・メタボの改善に日本食が期待できることが示された。
若い女性の低栄養と次世代の健康リスク
 早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構招聘研究員の福岡秀興氏は「若い女性の低栄養と次世代の健康リスク-炭水化物の役割-」と題し講演。

 若い女性の低栄養が経年的に進展しており、低栄養は女性本人の健康だけでなく、次世代の健康にも悪影響をもたらすと危惧されている。

 やせの女性が妊娠したり、妊娠中の体重増加を抑制したりすると、児は小さく産まれる傾向があり、将来的には肥満や糖尿病など多くの生活習慣病を発症するリスクが高くなり、この体質は世代を超えて伝達されやすい。「小さく産んで大きく育てる」ことが良いという社会的な風潮には問題がある。

 現在若い女性および妊婦の栄養状態は必ずしもよくなく、必要で十分な栄養を摂取する必要がある。中でも炭水化物は遺伝子機能の調節に働く重要な栄養素であり、妊娠初期に炭水化物摂取が少ないと児の肥満や2型糖尿病につながる。多様な栄養素をバランスよく摂取できるのが「米を中心とした日本型食生活」であり、次世代の健康を確保するうえでも有用だと考えられる。
高齢者のフレイル・サルコペニアや認知機能の低下を防ぐ対策
 東京都健康長寿医療センター内科総括部長の荒木厚氏は「高齢者のフレイル・サルコペニアや認知機能低下を防ぐための低栄養対策」と題し講演。

 高齢者の低栄養は、認知機能の低下や、近年注目されている「サルコペニア」「フレイル」とも関係しおり、高齢者の食事療法は高血圧や2型糖尿病などの予防・改善、生活の質の維持・向上、認知症、うつ、サルコペニアなどの老年症候群の予防の観点から、きわめて重要と考えられている。

 認知機能を改善する可能性のある食事として、地中海食や米を主食とした日本食が報告されている。また、サルコペニアやフレイルは、タンパク質やビタミンなどの不足が発症や症状が進展することに関係しており、適切な筋肉の機能を保つためのタンパク質摂取や運動が必要となる。

 日本食の食事パターンは魚や肉などから適正なたんぱく質を、野菜、海藻などからビタミンを摂取することができるので、要介護および後期高齢者の死亡リスクを減少できると期待されている。
性・年齢を考慮した栄養と運動の役割
 森谷敏夫・京都大学名誉教授は「性・年齢を考慮した栄養と運動の役割-高齢社会を視野に入れて-」と題し講演。

 高齢社会を視野に入れた健康管理では、栄養と運動両面からのアプローチが重要となる。筋肉は体の約5割を占め、エネルギーをもっとも多く使う臓器だ。筋トレ直後のタンパク質(必須アミノ酸)摂取により、高齢者でも筋タンパク合成が大幅に増加し、運動による筋肉の生成は、脳機能や心循環器機能も改善することが示されている。

 低炭水化物ダイエットは短期的には体重を減らすが、抑うつ・落ち込み・怒り・敵意など感情プロフィールの悪化をもたらすことが報告されている。さらに、2型糖尿病の患者が朝食を抜くと、昼食後の血糖コントロールが不良になるなど、弊害が大きい。

 「ダイエット」はそもそも「正しい栄養」という意味であり、体重減少を目的とするのではなく、食事を見直して運動をすることにより、体脂肪を適正にコントロールすることだと考えられる。米を中心としたバランスのよい食事は、エネルギーの消費効率に優れることなどから、メタボリックシンドロームの改善や自律神経活動の亢進に有効だ。

日本医師会
米穀安定供給確保支援機構
[Terahata]
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