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大豆イソフラボンが「サルコペニア」を軽減 筋肉細胞の減少を抑える効果
2018年01月31日

東京工業大学は、食事の0.6%という少量の大豆イソフラボンを摂取すると、筋萎縮を軽減できることを実験で確かめた。大豆イソフラボンはサルコペニアを軽減する食品素材として期待できるという。
大豆イソフラボンがサルコペニアを軽減
超高齢化社会を迎える日本では、ロコモティブシンドロームのひとつである「サルコペニア」(加齢性筋減弱症)が大きな社会問題になっている。サルコペニアを軽減する食品素材として、大豆イソフラボンが期待されているが、大豆イソフラボンを摂取することで筋萎縮を軽減できるかは分かっていない。
これまでに大豆イソフラボンによる筋萎縮予防の効果を報告した研究はあったが、異常な多量(食事の20%)を用いており、人への応用を考える上で問題を抱えていた。
そこで東京工業大学の研究チームは、食事の0.6%という少量の大豆イソフラボンをマウスに摂取させる実験を行い、除神経(神経の切除)に伴う筋萎縮を軽減することに成功した。
大豆イソフラボンの摂取はアポトーシスを軽減し、除神経による筋細胞数の減少を食い止めることで筋萎縮を抑制したという。大豆イソフラボンが、サルコペニアを軽減する食品素材として期待できることが示された。
研究は、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の佐久間邦弘教授、ニチモウバイオティックスの天海智博社長、豊橋技術科学大学環境・生命工学系の田畑慎平院生らの共同研究グループによるもの。詳細は「欧州栄養学会機関誌」(European Journal of Nutrition)オンライン版に発表された。
大豆イソフラボンは筋細胞数の減少を食い止める
人間の骨格筋は身体の50~60%を占め、運動や、体温を維持するために重要な働きをしているが、加齢、病気や障害により萎縮する。これを軽減するためのサプリメント(食品成分)の探索が行われており、大豆イソフラボンは有効な候補となっている。
しかし、筋萎縮予防に効果的であるとしたこれまでの研究は、食事中に20%の大豆イソフラボンを含んでおり、多量過ぎるため、人への応用は不可能だった。少量の大豆イソフラボンを摂取することで、筋萎縮が軽減できるのかどうかについては不明だった。
研究グループは、除神経(神経の切除)により筋細胞が萎縮したマウスを使い実験した。その結果、筋細胞の萎縮程度は、食事の0.6%という少量の大豆イソフラボンを摂取した群でも有意に小さいことが分かった。
除神経を施した骨格筋細胞内ではアポトーシスが起こり、筋細胞数が減ることで筋萎縮につながる。大豆イソフラボンの摂取は細胞内のアポトーシスの割合を減少させ、筋細胞数の減少を食い止め、筋萎縮を軽減したと考えられるという。
研究グループは、「大豆イソフラボンの摂取が、サルコペニアを軽減できるのかどうかについて、今後、さらに詳しく検証していく」と述べている。
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院The influence of isoflavone for denervation-induced muscle atrophy(European Journal of Nutrition 2017年12月13日)
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