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「足の冷え」「むくみ」は血管の老化が原因 足の動脈硬化を改善
2018年02月15日

寒い冬につらさが増す「足の冷え」や「むくみ」「しびれ」。実は足の血液の流れが低下することが密接に関係している。深刻な病気が隠れている場合もあるので、注意が必要となる。治療法は進歩しているので、まずは検査を受けることが大切だ。
冷えやむくみを改善するために「血流」が大切
例年になく寒い日が続いている今年の冬。血流が悪化して「足の冷え」や「足のむくみ」「しびれ」に悩む人が少なくない。
2月10日は「フットケアの日」だった。「フットケアの日」は、日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会、日本メドトロニックが2012年に制定したもの。
「フットケアの日」に合わせて、サンパックは20~50代の女性1万人を対象に「女性の足の悩みに関する調査」を実施した。
それによると、足の悩みが多い季節として「冬」と答えた人が79.9%に上った。具体的な悩みを聞くと、「冷え」(39.8%)、「かかとのヒビ割れ」(31.0%)が多く、「むくみ」「足全体の乾燥」はそれぞれ9.1%だった。
調査では、血流を良くすることでどのような効果があると思うか聞いたところ、「冷え性の改善」(89.8%)、「むくみ改善」(74.5%)という結果となり、多くの人が冷えやむくみに対して、血流が重要であることを理解していることが分かった。
一方で、血流を良くするために実践している具体的なケア方法を聞いたところ、「何も行っていない」という人が32.0%、つまり約3割の人が全くケアをしていないことが判明した。
毛細血管は酸素を運ぶ重要なルート
さらに、足の悩みについて聞くと、「冷え性で布団に入っても足が温まらず、全く眠れない」(67.4%)、「冷え性で寝る前にお湯で足を温めようと試みるが、足先が暖まる前にお湯が冷める」(30.5%)、「部屋が臭うなと思ったら、自分の足の臭いだったことがある」(21.6%)、「慣れない靴を履くとすぐに靴擦れし、絆創膏にお世話になる」(72.1%)といった回答が寄せられた。
「足の冷え」について、常葉大学健康科学部の久保明教授(銀座医院院長補佐・抗加齢センター長)は、「毛細血管は、酸素を運んでいく重要なルートです。毛細血管のコンディションが整わないと、体の組織に十分な酸素が行き渡らなくなる可能性があり、足の冷えや疲労感という、血管の老化である動脈硬化の一歩手前の状況につながります」と述べている。
また、医療ジャーナリストの増田美加氏(NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員)は「手足の冷えなどを改善するためには、血液の流れる道を整備することは必須であり、血液の質の向上はもちろんのこと、血液の流れる毛細血管を正常化することが重要です」とコメントしている。
足の動脈の病気で多い「末梢動脈疾患」(PAD)
今回の「血流」と「足の悩み」についての調査をみると、足の血管(毛細血管)を健康に保ち、動脈硬化を予防することが大切だと気付かされる。
足の動脈は、足の指先に向かって血液を送り、酸素と栄養を供給している。
足の動脈の病気で多いのが、動脈が途中で狭くなったり詰まってしまう動脈硬化によって、酸素不足や栄養不足を起こす「末梢動脈疾患」(PAD)だ。足のPADは日本では「下肢閉塞性動脈硬化症」とも呼ばれている。
下半身に向かう動脈は、骨盤の部分で枝分かれし、太もも・ふくらはぎを通って、足の指先に向かって血液を送っている。このふくらはぎ、太もも、骨盤の中を通る太い血管そのものが狭くなったり詰まったりすると、血液が十分には流れず、酸素不足、栄養不足となる。
PADになると、しびれや痛み、悪化すると潰瘍ができたり、ひどい場合には壊死することもある。全身の動脈硬化を伴うことも多く、心筋梗塞や脳梗塞に罹患する危険性が高まる。
糖尿病・高血圧・高脂血症・喫煙習慣があると悪化しやすい

治療は進歩している 治療により症状は改善
それでも改善されない場合は、薬物治療と運動療法が行われる。間欠跛行の薬物治療では、血液をサラサラにする抗血小板薬を使い、病状の進行を抑え、ほかの部位の動脈の閉塞を予防する治療が行われる。
運動療法では、医師の指導の下で1日30分以上の歩行訓練を週3回、3ヵ月以上続けると多くの場合で改善する。ウォーキングを続けることで細い血管が発達し、足への血流が改善する。
間欠性跛行のある場合は、少し歩いたのち、足が痛くなる前に歩くのをやめ、しばらく休んでからまた歩くという運動療法が効果的だ。
薬物や運動療法でも症状が改善しない時は、途絶えた血流を再開させる血行再建術が行われる。
血行再建術には、動脈硬化を起こした血管を内側から広げる血管内治療と、詰まった血管を迂回してその先の血管につなげるバイパス手術がある。
血管内治療では、カテーテルを通じて風船を膨らませ、血管を拡張させるバルーン治療や、ステントを血管内で広げて固定するステント治療がある。
これらの治療は、ここ数年で飛躍的に技術や治療器具が進歩しており、これまでは治療不可能であった部位についても、治療の幅が拡がってきている。
PADは全身の血管疾患でありトータルケアが重要だ。治療により症状が良くなるだけではなく、今後起こりうる血管疾患の予後も改善しうることが可能となる。
サンパックフットケアの日(日本フットケア学会)
日本下肢救済・足病学会
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン(日本循環器学会)
「PAD」(末梢動脈性疾患)(米国糖尿病学会 2014年9月24日)
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