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血中のビタミンD濃度が高いとがんリスク低下 日本人3万4000人を調査
2018年03月28日

国立がん研究センターは、血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクに関する多目的コホート研究「JPHC研究」の成果を発表した。
血中ビタミンD濃度が上昇すると、がんの発症リスクが最大で25%低下することが明らかになった。
血中ビタミンD濃度が上昇すると、がんの発症リスクが最大で25%低下することが明らかになった。
骨代謝で重要な役割を果たすビタミンD
「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。
JPHC研究では、過去にも8万5,000人を対象とした大規模調査を実施し、マグネシウムを多く摂取している人は、少ない人に比べて心筋梗塞などの虚血性心疾患になるリスクが低くなるとの結果を発表している。
今回の研究は、1990年と1993年に、岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎の9保健所管内に在住していた人のうち、ベースライン調査のアンケートに回答し、健診などの機会に血液を提供した40~69歳の男女3万3, 736人を、2009年まで追跡した結果にもとづいている。
ビタミンDは、脂溶性ビタミンで、カルシウムとともに骨代謝で重要な役割を果たしている。近年の研究で、細胞増殖を抑えたり、細胞死を促進したりする作用により、がんを予防する効果があると考えられている。
人を対象としたコホート研究においても、血中ビタミンD濃度が上昇すると、大腸がんや肺がんを発症するリスクが低下することが報告されているが、大腸がん・肺がん・乳がん・前立腺がん以外のがんや、がん全体を対象としたコホート研究はこれまで行われていなかった。
血中ビタミンD濃度が高いと肝臓がんリスクが0.45倍に低下
研究グループは、男女3万3, 736人を対象に追跡調査を行い、研究開始から2009年までに、3,734人のがん罹患を確認した。これに対し、4,456人を無作為に選んで対照グループに設定。今回の研究では、がんに罹患する前の保存血液を用いて、血中ビタミンD濃度の測定を行った。
血中ビタミンD濃度を男女別に4等分位(罹患者数が130未満のがんでは3等分位)に分け、がん全体やがんの部位別に関連を検討した。
個人の血中ビタミンD濃度は季節によって変動するので、採血した季節(春夏秋冬)を考慮してグループ分けを行った。年齢、性別、喫煙、飲酒、身体活動、がん家族歴、糖尿病の既往、体格指数(BMI)などのがんと関連する要因を調整した。
その結果、血中ビタミンD濃度がもっとも低いグループを基準としたところ、血中ビタミンD濃度が2番目に低いグループでは、何らかのがんを発症するリスクが0.81倍に低下した。血中ビタミンD濃度が2番目に高いグループでは0.75倍にもっとも低下していた。
また、血中ビタミンD濃度がもっとも低いグループを基準に、もっとも高いグループのがん罹患リスクを部位別にみたところ、肝臓がんの罹患リスクが0.45倍に低下。ほぼ全ての部位で、がん罹患リスクが上昇する傾向はみられなかったという。


血中ビタミンD濃度が一定を超えると予防効果は期待できない
今回の研究から、血中ビタミンD濃度が上昇すると、何らかのがんを発症するリスクが低下したことから、今回の研究結果は、過去の研究で示されたビタミンDのがん予防効果を支持するものだという。
ビタミンDは魚や卵などの食物から摂る以外に、日光に当たると皮膚でも合成される。「適切な食事を摂り、太陽の光を浴びることが、がんのリスク低減に役立つ」としている。
ただし、血中ビタミンD濃度がもっとも高いグループではがん罹患リスクのさらなる低下が見られなかったことから、血中ビタミンD濃度が一定のレベルを超えた場合、それ以上のがん予防効果は期待できない可能性がある。
JPHC研究では以前にも、大腸がんと前立腺がんを対象に血中ビタミンD濃度との関連を検討したことがある。今回の研究は、以前の研究より追跡期間が長く、症例数も増えていたが、明らかな関連はみられないという結果は同じだった。
多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループPlasma 25-hydroxyvitamin D concentration and subsequent risk of total and site specific cancers in Japanese population: large case-cohort study within Japan Public Health Center-based Prospective Study cohort(BMJ 2018年3月7日)
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