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10分間の運動で記憶力や認知能力がアップ 高齢者向けプログラムに期待
2018年10月24日

ウォーキングやヨガなどの軽い運動をわずか10分行うだけで、脳の学習・記憶をつかさどる海馬が刺激され、記憶力を高められることが、筑波大学体育系の征矢英昭教授らの研究で明らかになった。
「毎日の短時間のウォーキングでも、記憶力や認知能力を改善する可能性がある」と、研究者は述べている。
「毎日の短時間のウォーキングでも、記憶力や認知能力を改善する可能性がある」と、研究者は述べている。
運動をすると脳の神経細胞の数を増やせる
軽いウォーキングなどの運動をわずか10分間行うだけで、記憶をつかさどる脳の海馬が刺激され、直後の記憶力が高まることが、筑波大学の研究で明らかになった。
研究グループはこれまで、独自に開発した実験マウスを用いて、トレッドミルでストレスのない軽運動を行うと、学習・記憶を担う海馬が刺激され、新しく生まれる神経細胞の数を増やせることなどを明らかにしてきた。
しかし、海馬は脳の中心部に位置する小さく複雑な脳部位であるため、ヒトでの検証は難しかった。
そこで今回の研究では、超低強度の運動を10分間行った直後と安静後に記憶課題に取り組んだときの脳の活動を、ヒトの海馬の神経活動を領域ごとに画像分析できる、最先端の機能的MRI技術を使い高解像度で可視化し比較した。
ゆっくりペースのウォーキングで効果を得られる
超低強度の運動とは、若年者では心拍数が100拍/分以下、高齢者では90拍/分以下に相当する運動のこと。最大酸素摂取量の37%以下の強度と定義され、主観的には"かなり楽"だと感じる程度。ゆっくりペースのウォーキング、ヨガ、太極拳などが該当する。
研究グループは、36人の被験者に、10分間ペダルをこぐ極めて軽い運動をした直後に、似ているが全く同じではない2つの物体の写真を600枚ほど見てもらい、どの程度正確に記憶できるかを調べた。
その結果、安静状態で実施した場合と比べて、運動をすると成績が向上した。
超低強度の運動が海馬を活性化し、とくに「歯状回」を中心とした記憶システム全体を引き上げ、脳内の情報伝達が活発化し、記憶能を向上させることが明らかになった。

高齢者や低体力者向けの運動プログラムの開発へ
歯状回は海馬の下位領域のひとつで、海馬に入力される情報は、まずこの歯状回に入力される。神経細胞を増やす「神経新生」にも関わっている。学習・記憶などの認知機能や、精神疾患にも関連していると考えられている。
運動は体力の維持・増進だけでなく、脳、とりわけ学習・記憶を担う海馬にも有益な効果をもつことが分かり、認知症の予防策としても注目されている。
「学習の前に行う短時間の軽運動は、記憶力を高める脳のコンディショニング法として役立つ可能性がある。今回の研究成果を足がかりとして、高齢者や低体力者でも行える海馬をターゲットとした軽運動プログラムの開発につなげたい」と、研究者は述べている。
研究は、筑波大学体育系の征矢英昭教授、諏訪部和也研究員、邊坰鎬助教、筑波大学システム情報系の山海嘉之教授、鈴木健嗣教授、米国カリフォルニア大学アーバイン校Michael Yassa教授(筑波大体育系教授)らの共同研究グループによるもの。詳細は、米国科学アカデミーの科学誌「PNAS」に掲載された。

Even mild physical activity immediately improves memory function, UCI-led study finds(カリフォルニア大学 2018年9月24日)
Rapid stimulation of human dentate gyrus function with acute mild exercise(PNAS 2018年10月9日)
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