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保健指導と介護予防を一体的に実施 フレイル対策を強化 厚労省が方針
2019年03月20日

厚生労働省と都道府県の担当課長が行政動向を共有する会議で、フレイル(虚弱)への対策が、高齢者の疾病予防と介護予防の中心的な取り組みとして位置付けられることが示された。
フレイル対策 「後期高齢者医療広域連合」が実施主体
会議では、高齢者を効率的に支援し、対象者を幅広く抽出するために、保健事業と介護予防を一体的に行う方針が示された。医療費の削減にもつながると期待されている。
急激な高齢化が進行している日本では、65歳以上人口が全人口に占める割合は28%、このうち75歳以上(後期高齢者)の人口は14%となっている。2025年には団塊の世代が後期高齢者となる。
後期高齢者は、複数の慢性疾患に加え、要介護状態に至る前段階であっても、身体だけでなく、精神や心理、社会での脆弱性を抱えやすく、フレイルになりやすい。
特定健診・保健指導の実施対象は74歳までで、後期高齢者の保健事業は市町村に委託されている。糖尿病、高血圧症などの治療を受けている高齢者は、医師とのつながりにより必要な検査を受けられるので、特定健診などが義務付けられていない。
74歳まで実施してきた特定健診・保健指導の情報は75歳以降には共有されていないケースが少なくなく、健診結果をふまえた個別の支援を行う必要がある。
後期高齢者の介護予防事業の実施主体は、医療保険の後期高齢者医療制度にもとづき、都道府県ごとに全市町村で構成する「後期高齢者医療広域連合」となる。
フレイルに対策するため、現役世代のメタボリックシンドローム対策と異なり、フレイル状態に着目した運動、口腔、栄養、社会参加などのアプローチが必要となる。
関連情報
介護予防事業で高齢者の「通いの場」を活用
こうした状況をふまえ、2015年の医療保険制度改革では、後期高齢者の保健事業として、高齢者全般を対象とした一次予防事業と、要支援・要介護に陥るリスクの高い高齢者を対象とした二次予防事業で構成される介護予防事業が設けられた。▼後期高齢者医療広域連合は、高齢者の心身の特性に応じ、保健事業を行うよう努める、
▼事業のメニューとして、健康教育や健診に加え、保健指導・健康管理、疾病予防に係る本人の自助努力に対する支援なども行う、
▼保健事業の実施に当たりNDB(医療レセプトと特定健診に関するデータベース)の活用や、介護保険の地域支援事業との連携を図る、
――といったことが定められた。 これに加え、介護予防事業では、地域の高齢者に「通いの場」などに集ってもらい、地域住民同士の助け合い(互助)を高めていく施策が検討されている。
▼高齢者の「通いの場」を拠点に、フレイル対策を含めた介護予防と疾病予防・重症化予防を一体的に推進する、
▼市町村が「通いの場」の立ち上げや運営を支援するなどして、拠点を拡大する、
▼市町村と地域医師会などが連携し、必要な受診勧奨や保健指導に関する情報の共有などを行う。
――といった施策を進めていく。 2016年度介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業)の調査によると、通いの場の数は7万6,492ヵ所、参加者数は143万9,910人(高齢者人口の約4.2%)。
保健師など専門職が連携 データベースを活用
市町村の地域支援事業で開催されている「通いの場」の高機能化をはかるために、保健師や栄養士、歯科衛生士、リハビリテーションなどの専門職を配置。
さらに、後期高齢者の保健事業を実施する市町村には、国保データベース(KDB)に加え、個別に実施・把握するフレイル状態などのチェックなどの内容も活用することを求めるという。
フレイルのおそれのある人への保健事業に加え、さまざまな地域活動への参加状況などもKDBなどで把握できるようにして、地域社会などとのつながりが見えやすいシステムを作ることを目指している。
地区ごとに、健診の受診率をはじめ各種のデータを整理し、高齢者の健康状態を階層化し、スクリーニングを経て、適切な医療サービスなどにつなげていく考えだ。
関連データの共有・分析や課題の把握・整理をスマート化するため、国民健康保険中央会、国民健康保険団体連合会いった保険者間でより柔軟に情報連携ができる環境作りも必要となる。
市町村における保健事業のうち、特に専門的・技術的な知見を要する取組に対する助言・援助を積極的に実施できるようする。
フレイル予防などに関する知見や、先進的な市町村における取組状況、KDBデータの分析手法などに関する研修の実施などに加え、事業の取組結果に対する評価や効果的な取組を分析する手法の確立を目指す。
全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料について(厚生労働省 2019年3月19日)高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議(厚生労働省)
介護予防(厚生労働省)
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