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皮膚の若さの維持と老化のメカニズムを明らかに 皮膚の老化を抑えるコラーゲンが判明
2019年04月10日
東京医科歯科大学は、皮膚の老化が、「幹細胞競合」により恒常性を維持するメカニズムの疲弊により起こることを明らかにした。幹細胞競合をコントロールする治療法を開発すれば、皮膚の老化を抑えられる可能性がある。
「幹細胞競合」が皮膚の老化に関わる仕組みを解明
研究は、東京医科歯科大学難治疾患研究所幹細胞医学分野の西村栄美教授、松村寛行助教、劉楠氏らの研究グループが、同大学院皮膚科学分野の並木剛准教授らと共同で行ったもの。研究成果は国際科学誌「Nature」オンライン版に発表された。
老化は、細胞が生体内で絶えず生じる損傷やストレスを受けることで起きると考えられているが、これまで臓器が長期にわたり若さと機能を保つ仕組みや、ならびに老化する仕組みについてよく分かっていなかった。
組織・臓器の老化の誘因は、日々発生する内因性ならびに外因性の損傷やストレスであることが知られている。しかし、皮膚では「幹細胞システム」が働いているため、ただちに老化するわけではない。たとえば紫外線を多めに浴びても、ただちに皮膚に老化細胞が蓄積して高齢者のようになることはなく、何十年という長期にわたり、若さと機能を維持する。
幹細胞システムでは、皮膚の表皮をはじめ上皮組織で活発な新陳代謝が行われ、多くの幹細胞クローンが消滅する一方で、一部の残存クローンが増大する。この幹細胞の消滅と残存は一見ランダムに見えることから「中立的幹細胞競合」と呼ばれている。
「細胞競合」とは、組織中で近接する同種細胞間で、環境適応度の高い細胞が低い細胞を集団から排除する現象。それが生涯にわたって本当に中立的に起こる現象なのか、選択的に適応度の高い細胞を選択する細胞競合を反映しているのかについては明らかにされていなかった。
細胞競合が減弱すると表皮の老化が進む
XV2型コラーゲンを発現させると皮膚の老化を抑えられる
このような真皮浅層の繊維芽細胞の消失は真皮の細胞外マトリックスの構築にも変化を及ぼして深部に波及しうるため、臓器としての老化へとつながると考えられるという。
さらに、表皮幹細胞においてXV2型コラーゲンを恒常的に発現させた高週齢マウスを解析したところ、皮膚の老化の抑制効果ならびに再生促進効果が得られ、さらにXV2型コラーゲンの発現を誘導する低分子化合物によって皮膚の再生促進効果が得られることが確認された。
今回の研究は、皮膚の老化を治療する新たな戦略や予防につながる可能があり、研究グループはすでに特許を出願している。他の臓器の上皮組織でも同様に幹細胞競合が臓器の恒常性と老化をコントロールしており、それが健康長寿につながる可能性があるという。
東京医科歯科大学 難治疾患研究所 幹細胞医学分野Stem cell competition orchestrates skin homeostasis and ageing(Nature 2019年4月3日)
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