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「米ぬか」成分に血圧降下作用 米ぬかペプチドが血管機能を改善 食品素材として活用
2019年07月23日
サンスターグループは、玄米の胚芽と表皮にあたる「米ぬか」のタンパク質を酵素で分解して得られた「酵素処理米ぬか」が血圧降下作用をもつことをヒト臨床試験で確かめた。
さらに、酵素処理米ぬかに含まれる新規ペプチド「LRA」が、血管内皮で一酸化窒素産生を促すことで血圧を降下させるメカニズムを実験で明らかにした。
さらに、酵素処理米ぬかに含まれる新規ペプチド「LRA」が、血管内皮で一酸化窒素産生を促すことで血圧を降下させるメカニズムを実験で明らかにした。
玄米や米ぬかの成分が血管機能を改善 血圧降下作用も
日本人は古来より玄米を常食してきたが、現代では多くの人が玄米の胚芽と表皮にあたる米ぬかを取り除いた精米を食べている。取り除かれた米ぬかは、タンパク質やミネラルなど多種の栄養素を豊富に含むものの、食品素材として十分に活用されていない。
一方、高血圧は自覚症状の無いまま脳卒中や心筋梗塞など死に直結する病気の原因となり「サイレントキラー」と呼ばれている。高血圧症患者は日本に4,300万人、予備群も含めると総人口の約半分と推定されており、その予防に効果的な食品素材の開発が期待されている。
近年では食品由来のタンパク質から生理活性を有するペプチドを生成し、高血圧や糖尿病など生活習慣病の予防をはかる研究が活発になっている。
サンスターは、これまで玄米および米ぬかの糖尿病患者の血管機能改善作用や糖代謝の改善についての研究を行い、健康食品への応用を進めてきた。
そして、米ぬかの血管機能改善の機能性に着目し、米ぬかを酵素処理して得られる多種のペプチドを分析する中で、血圧降下作用をもつ新規ペプチドを2017年に発見した。
高血圧予備群の臨床試験で血圧低下 米ぬかから新規ペプチドを発見
サンスターが血圧降下作用のある新規ペプチドとして発見したペプチド「LRA(ロイシルアラギニルアラニン)」は、ロイシン、アルギニン、アラニンの3種のアミノ酸が結合したトリペプチド。
今回の研究は、その効果をヒト臨床試験で確認し、また血圧降下のメカニズムを解明するために行ったもの。
同社は、米ぬかを酵素(サーモリシン)処理して得られた酵素処理米ぬかの血圧降下作用をヒト臨床試験で検証した。対象となったのは高血圧予備群39人(収縮期血圧:130~139mmHgかつまたは拡張期血圧:85-89mmHg)およびI度高血圧者48人(収縮期血圧:140-159mmHgかつまたは拡張期血圧:90-99mmHg)とし、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を行った。
参加者が1日4粒の酵素処理米ぬか配合錠剤(1日あたり1gの酵素処理米ぬかを摂取)または酵素処理米ぬか無配合のプラセボ錠剤を12週間摂取したところ、酵素処理米ぬか摂取群の12週目の収縮期血圧は、プラセボ群と比較して有意に低下した。
高血圧予備群のみの解析では、収縮期血圧が有意に低下し、収縮期血圧の平均値は130mmHg未満となった。
さらに、血管内皮細胞のモデル細胞であるHUVECにおいて、酵素処理米ぬかの中の血圧降下関与成分であるLRAが、血管内皮局在型一酸化窒素産生酵素(eNOS)のリン酸化を促進する(=一酸化窒素産生を促進する)ことを明らかにした。
血圧降下作用を活かした健康食品の開発へ
この血圧降下メカニズムは、LRAが血管内皮で一酸化窒素産生を促進して血管平滑筋を弛緩させることによって生じたものと考えられる。
高血圧予備群の方はすぐに投薬治療が施されるわけではないものの、総死亡、冠動脈疾患、脳卒中のリスクが上昇することが知られている。
生活習慣の改善によりI度高血圧へ移行しないようにするだけでなく、血管へのダメージを抑えるためにも血圧を低く保つことが重要となる。
今回の研究で、酵素処理米ぬかは高血圧予備群の収縮期血圧を低下させることが期待できる結果となったことから、同社は今後は、今回の成果をもとに研究開発を進め、LRAの血圧降下作用を活かした健康食品の製品化を目指すとしている。
サンスターグループRice Bran Supplement Containing a Functional Substance, the Novel Peptide Leu-Arg-Ala, Has Anti-Hypertensive Effects: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Study(Nutrients 2019年3月28日)
Vasorelaxant and Antihypertensive Effects That Are Dependent on the Endothelial NO System Exhibited by Rice Bran-Derived Tripeptide(Journal of Agricultural and Food Chemistry 2019年1月4日)
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