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高齢者が地域で活用できるパンフレット「おいしく食べて低栄養予防」 栄養状態を自分で把握できる 通いの場などで活用
2021年06月08日

東京都健康長寿医療センターは、高齢者の通いの場など地域で活用できる、低栄養予防のためのパンフレット「おいしく食べて低栄養予防」を作成した。
通いの場に参加する高齢者が、自分の栄養状態を把握し、口腔機能の低下や低栄養などについて、自分のこととして理解できる内容になっている。
通いの場に参加する高齢者が、自分の栄養状態を把握し、口腔機能の低下や低栄養などについて、自分のこととして理解できる内容になっている。
高齢者の栄養はメタボとフレイルの二極化
研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の本川佳子研究員、平野浩彦研究部長らの研究グループによるもの。
日本人の壮年期以降の栄養状態をみてみると、「過栄養(メタボ)」と「低栄養(フレイル)」の二極化の傾向がみられる。
肥満やメタボに対策するため、一般に低カロリー食品が好まれるようになった影響で、「脂っぽいものはできるだけ食べない」「食事では食べ過ぎない」「食事回数を減らす、ときには1日2回も」といったように、粗食を実践している人は多い。
しかし、日本人は性別や年代によっては痩せ傾向が多くみられ、欧米人のカロリー制限などの肥満対策は日本人にとっては適切でない場合がある。
また、フレイルやサルコペニアを予防するために、いろいろな食品を食べ、栄養状態を良好に保つことが必要だが、高齢者の食生活では、いも類、海藻類、肉類など、毎日食べている割合が少ない食品がみうけられる。

高齢者が自分の栄養状態を把握できるよう指導
そこでパンフレット「おいしく食べて低栄養予防」では、まず「低栄養」について解説している。
後期高齢者の質問票から、▼1日3食きちんと食べていますか、▼6ヵ月間で2~3kgの体重減少がありましたか、▼半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか、▼お茶や汁物でむせることはありますかという4項目を取り出し、高齢者自身が栄養・口腔の状態をチェックできる内容になっている。
さらに、チェック項目が多い場合に、どのようなリスクがあるか、何に気を付ければよいかについて説明している。その他にも、食品摂取の多様性、体格指数(BMI)、口腔機能低下のチェック項目も取り入れ、広く活用できものになっている。

会食を行う通いの場の実態を調査
少子高齢化による生産年齢人口の減少や、社会保障費の増加といった課題に対応するため、健康寿命の延伸への取り組みが進められている。厚生労働省は2019年度に健康寿命延伸プランを定め、男女ともに健康寿命を3年以上引き延ばすことを目標に掲げた。
その目標達成のための取り組みのひとつとしいて、地域の「通いの場」の拡充がある。通いの場には、運動機能向上、認知機能低下予防、社会参加促進、口腔機能向上、低栄養予防への効果が期待されている。
しかし、そのなかで低栄養予防が期待される会食などの通いの場については、食事提供、献立作成などの実態が明らかにされていなかった。
そこで同センターは、2019年度と2020年度に、厚生労働省度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)により、会食を行う通いの場の実態把握、そこに参加する高齢者の栄養状態などの調査を行った。
保健師など専門職が関わると通いの場は活性化する
その結果、会食を実施している通いの場に、保健師、管理栄養士などの専門職が関わることで、栄養状態や摂食機能に応じた食事提供や食事中のムセなどへの配慮が行われていることが明らかになった。
その一方で、専門職が関わっている通いの場は全体の約半数という低いことも分かった。
また、通いの場参加者の実測調査にもとづく結果から、通いの場に参加する高齢者では、客観的には摂食機能が低下しているにもかかわらず、本人にはその認識がないといった、自己評価と客観評価の乖離が認められた。
これらの結果から、「おいしく食べて低栄養予防」パンフレットでは、通いの場に参加する高齢者自身が自分の栄養状態を把握し、口腔機能の低下や低栄養について自分のこととして理解できる内容を目指したという。
パンフレットは、東京都健康長寿医療センター研究所ホームページの、2020年度老人保健健康増進など事業に関する研究報告書よりダウンロードして利用できる。
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
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