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【レポート】日本保健師活動研究会「20周年記念シンポジウム」
保健師の実践活動から、強みと意義を考える


 2022年5月28日、日本保健師活動研究会が「20周年記念シンポジウム」をオンラインで開催した。
 コロナ禍により2年遅れての開催となったが、特別講演やグループワークを通して、これからの保健師の活動について活発な意見交換が行われた。

保健師の実践活動を探究、20年間の振り返り

 日本保健師活動研究会(会長:平野かよ子先生/宮崎県立看護大学)は、保健師の実践活動を尊重し、保健師活動の方法やマインドを明らかにすることを目的として活動している、自治体保健師や産業保健師、保健師教育関係者を中心とした団体である。
 研究や理論ありきではなく、保健師の公衆衛生や地域での活動事例や、住民・関係者と公衆衛生活動の共有化を図った事例を分析することで、保健師独自の活動方法を明らかにし、公衆衛生看護学の体系化に資する活動を探究している。


平野かよ子会長

 このほど開催された「20周年記念シンポジウム」(司会:中板育美先生/武蔵野大学)では、平野かよ子会長が日本保健師活動研究会の「あゆみ」を年表に沿って解説した。

 2001(平成13)年5月に「日本公衆衛生看護研究会」として発足した後、2008(平成20)年3月には保健師を構成員とする4団体と連携して「日本保健師連絡協議会」を発足させたこと、2014(平成26)年2月に、学術的であることに縛られず"公衆衛生看護"の自由な追求を担保するため、会名を「日本保健師活動研究会」として再出発したことなど、公衆衛生を取り巻く時流の変化に対応しながら進めてきた、会の活動を振り返った。

 2020(令和元)年から新型コロナウイルス感染症が大流行したことで、感染症対策という役割で公衆衛生と保健師の知名度は上がったが、これからも公衆衛生が本来持つ人々の健康の保持・増進という役割と責任を、保健師の実践活動の側面から追求していくと、平野会長は展望を語った。

地域共生社会の実現、「保健師の強み」とは


佐藤信人先生

 続いて、佐藤信人先生(宮崎県立看護大学 特任教授)による特別講演「保健師の強み、そして意義」が行われた。佐藤先生は、介護保険制度の施行に厚生労働省介護保険制度施行準備室長補佐として携わり、"ケアマネの父"と呼ばれている。

 講演の冒頭、佐藤先生は保健師の強みについて、健康でなくなることを望む人はいないため、「すべての国民から支持されること」であり、その活動意義は、国民からの支持を活かしながら「地域住民と共に、人々に健康で楽しみのある幸せな暮らしを実現する社会をつくること」だとした。

 佐藤先生は幼い頃に経験した保健師とのエピソードを皮切りに、現代までの日本の人口や出生数などの推移を参照しながら、人を大切にしながら社会改良に向けた学習を担う、保健師活動の意義を語った。
 令和3年3月31日付けで公表された「地域福祉計画策定体制」にも、中核的な役割を担う専門職として保健師が盛り込まれており、地域住民や地域の多様な主体が参画する「地域共生社会」をこれから構築していく中で、保健師の出番やチャンスがあることを伝えた。
 また、地域共生社会を構築する中で「他人の心の傷、痛み、不安などを、自分のこととして感じとることができる気持ち」をもった住民が増えていくよう、地域の人々の心を動かすことが保健師の仕事であると佐藤先生は述べた。

 佐藤先生ならではの幅広い視線に基づく示唆に富む講演となったが、最後に改めて、行政に所属する専門職として「地域のため」を旗印にすることでさまざまな活動を正当に遂行できるという"保健師の強み"を紹介して、講演を締めくくった。

実践活動にもとづいたディスカッション


松浦美紀氏による話題提供

 最後に、Zoomのブレイクアウトルームを使用したグループディスカッションが行われた。
 松浦美紀氏(新宿区保健所衛生課長・統括保健師)による話題提供「新型コロナ感染症対応を通じて保健師の専門性を考える 新宿区の場合」の後、各グループにわかれて「保健師の専門性やその意義」をテーマにした活発な意見交換がなされた。

 グループワーク後の振り返りでは、コロナ禍の中でも「オンライン対応を増やすなど、関係を途切れさせないように努めた」といった経験や、「コロナの対応で地域の保健師としての活動が滞ってしまった部分があるが、改めて自分たち保健師の強みを考えなければならない」といった意見が出された。

*  *  *

 コロナ禍の影響で2年遅れの開催となったが、特別講演や参加者同士の意見交換を通じて、これからの保健師活動に対する認識が深められる有意義な時間となり、シンポジウムは盛会裡に幕を下ろした。

日本保健師活動研究会 会員募集のおしらせ

 日本保健師活動研究会では、時代が変わっても保健師活動の本質を大切にし、悩みながらも保健師活動を共有し、未来に向かいぶれずに活動しています!

~活動内容~
・総会・研究集会・ホームページによる情報交換・ニュースレターの発行
・保健師(公衆衛生看護)を語る会や保健師活動継承等の企画支援

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年会費:正会員4,000円、学生正会員1,000円、賛助会員一口5,000円以上
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