日本が「結核低まん延国」の仲間入り 1年遅れで達成-21年の結核登録者情報
かつては「不治の病」として恐れられた結核だが、厚生労働省がこのほど発表した「2021年 結核登録者情報調査年報集計結果」で、国内の新規結核患者が人口10万人あたり初めて10人を切り、「結核低まん延国」となったことが分かった。 国の掲げる目標を1年遅れで達成した形だが、近隣アジア諸国の罹患率が高いことから、潜在的結核感染者や結核患者が海外から流入する可能性がある。 今回の結果では受診や診断、発見の遅れも明らかになっており、引き続き結核感染の減少と根絶に向けた対策が求められている。
結核は世界の三大感染症の一つで、日本はこれまで先進国の中では高い罹患率が問題視されていた。そのため国は2016年、東京五輪が開かれる2020年までに、10万人あたりの患者数が10人以下で低まん延国とする世界保健機関(WHO)の基準達成を目標に掲げた。
2020年までには叶わなかったが、2021年の結核罹患率(人口10万対)は9.2で、前年と比べて0.9減少し、1年遅れで目標を達成した。世界と比べると、最も罹患率が低いのはアメリカの2.4。一方近隣アジア諸国は中国が59、韓国が49、シンガポールが46など軒並み高い。
日本は高齢者の患者が多いという特徴がある。新登録患者11,519人のうち70歳以上は7,314人で全体の6割を占める。特に80〜89歳が全体の29.9%、90歳以上が全体の14.2%を占めており、前年と比べて構成比は増加した。
年齢階級別の罹患率を見ても70歳以上の高齢層で高く、70〜79歳は13.7、80〜89歳は36.5、90歳以上は64.6だった。ただ全体として罹患率は年々減少傾向にある。
都道府県別で見ると、人口10万あたりの罹患率が最も低いのは山梨県の4.3。逆に最も高いのは長崎県の13.5で、両者の間には3倍近い開きがある。罹患率と新登録結核患者数は、宮城県、富山県、鳥取県、岡山県、福岡県、長崎県、大分県で増加した。
2021年の結核による死亡数は1,844人で、前年比65人の減少。死亡率の1.5は前年と変わりがなかった。
一方、外国生まれの新登録結核患者数は前年比98人減少の1,313人だったが、新登録結核患者全体に占める割合は前年比0.3ポイント増加の11.4%だった。
また、今回の結果では、受診や診断、発見の遅れが明らかになった。2021年の新登録肺結核患者のうち、有症状の人の中で、受診の遅れ(症状の発現から受診までの期間が2カ月以上)のあった患者の割合は前年比1.7ポイント増加し20.8%となった。
同様に、診断の遅れ(受診から結核の診断まで1カ月以上)のあった患者の割合も、前年比2.2ポイント増加して23.1%。さらに発見の遅れ(症状発現から結核の診断までの期間が3カ月以上)のあった患者の割合も、2.3ポイント増加して22.0%だった。
このうち30~ 59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者で、受診の遅れがあった患者は38.9%、診断の遅れがあった患者は16.5%、発見の遅れがあった患者は36.1%となっている。いずれも2002年以降で最も高い割合だった。
厚労省は、2021年の結核罹患率の減少について、新型コロナウイルス感染症の影響も考えられるとしており、引き続きの対策が求められている。
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