ニュース

認知症で行方不明になった高齢者が過去最多 10年で2倍に 【認知症の行方不明対策3ヵ条】

 日本では、認知症などの高齢者の徘徊による行方不明が社会問題となっている。

 認知症による行方不明は、いつ発生するか分からない。東京都健康長寿医療センターは、認知症の人の行方不明対策として3つのことを挙げている。

 認知症者の行方不明による死亡事故を未然に防止するシステムの開発も進められている。

認知症で行方不明になった人は10年で2倍に増加

 日本では、認知症などの高齢者の徘徊による行方不明が社会問題となっている。

 警察庁の調査によると、認知症で行方不明になった人の数は、2022年には全国でのべ1万8,709人に増えた。統計をとりはじめた2012年から、10年でほぼ2倍に増えている。うち491人の徘徊中の死亡が確認されている。

 この数は、警察に行方不明者届が出された人に限られたものなので、実際はもっと多くの人が行方不明になっているとみられる。

 東京都健康長寿医療センターは、認知症による行方不明の研究を行っており、行方不明者には中等度以上の認知症が多いが、家族からみて軽度、あるいは認知症とは思えない状態であっても、行方不明になることがあることを明らかにしている。

 行方不明とは、高齢者が1人歩きをして、家族や介護サービス担当者などがその居場所を把握できなくなった状態。徒歩に限らず、自転車や自動車、バスや電車などを利用することもあり、家族が同居していても、一瞬目を離した隙にいなくなることもあるという。

認知症の人の行方不明への対策3ヵ条

 同センターの調査では、行方不明から発見までの期間が長かったり、行方不明時に独居であることが、発見時の死亡と関連していることが分かった。

 行方不明になってから3日目以降では、生存する可能性は急激に低くなるという。また独居の場合、行方不明になったことに気づくのが遅れ、それが捜索開始の遅れにつながり、結果として発見の遅れにつながりやすい。

 また、死因は溺死と低体温症が多い。認知機能の低下が重度であると、危険を回避する能力が低下し事故に遭いやすいと考えられる。

 行方不明者を発見した人の半数は、探していた人ではなく偶然みつけた人だ。もし様子がおかしい高齢者をみつけたら、勇気を出して声をかけてみることも大切。

 認知症による行方不明は、いつ発生するか分からない。同センターでは、認知症の人の行方不明対策として次のことを挙げている。

(1) 行方不明はいつ発生するか分からない
 認知症の人の家族は、軽度の認知症でも行方不明になることがあり、行方不明はいつ発生するか分からないことを意識しておく必要がある。

(2) 事前の対策が重要
 家族などの高齢者が行方不明になったときに、慌てずに対応できるようにするため、事前に対策をたてておくことも大切。
 市町村ではさまざまな行方不明対策を講じている。また、地域包括支援センターやケアマネジャー、主治医などの専門職、役所・役場なども相談先になる。

(3) 行方不明になったときはどうすれば良いか
 認知症の人などが実際に行方不明になったときには、慌てずに対応する。行方不明は時間との勝負でもある。
 警察への行方不明者届の提出、地域包括支援センターやケアマネジャー、役所・役場などへの連絡など、できるだけ多くの機関や人に協力を求める。

高齢者の行方不明による死亡事故を防止するシステムを開発

 福岡大学や飯塚市立病院などは、高齢化社会に向け、独居高齢者を見守るシステムの開発に取り組んでおり、このほど認知症者の行方不明による死亡事故を未然に防止するシステムの開発に着手した。

 徘徊は「徘徊に早く気づく」ことが難しく、徘徊開始から捜索につなげるまでのタイムラグをなくすことが重要となる。開発中の「無断離院・徘徊検出システム"IKUXA イクサ"」は、これらの問題を解決し、死亡事故ゼロを目指すもの。

 これは、ネットワーク化されたセンサデバイス・システムを用いて、屋内(室内)から屋外(室外)への無断離院・徘徊を正確に検知し、端末に通知するシステム。

 高齢者の寝る・座る・立つ・動く・転倒などを検知する小型センサーにより、転倒や溺水などの緊急事態を早期に発見するシステムや、在宅の認知症高齢者の徘徊を早期に検出し、介護者などのスマートフォンなどに通知するシステムも開発する。

認知症による行方不明ーいのちを守るために必要なことー (東京都健康長寿医療センター)
認知症の人の見守りネットワーク事業 (福岡市)
行方のわからない認知症高齢者等をお探しの方へ (厚生労働省「身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイト」)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶