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食後に中性脂肪が高いと心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇 中性脂肪は食事で上昇 食事や運動で大幅に下げられる

 脂質の管理では、コレステロールの数値が注目されることが多いが、実は中性脂肪も動脈硬化と関連が深い。

 非空腹時の中性脂肪値の上昇は、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを高めることが、大規模な調査で明らかになっている。

 中性脂肪の値は、食事によって上昇する。日本でも、中性脂肪の基準は「空腹時150mg/dL」のみだったのが、「非空腹時175mg/dL」という新しい基準が追加された。

脂質異常症は早期に発見・治療する必要が

 「脂質異常症」は、血液中のコレステロールや中性脂肪などの値が異常に高くなった状態。初期の段階では痛みなどの自覚症状はないものの、治療しないでいると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞・脳卒中などを発症するリスクが高まる。

 動脈硬化を起こした血管では、血管壁の内側にプラークと呼ばれるふくらみができる。そこにコレステロールがたまっており、大きくなると、血液の通り道が狭くなってしまう。さらにプラークが破れると、そこに血液のかたまりができ、血管をつまらせてしまう。

 日本でも毎年、多くの人が心筋梗塞や脳卒中などにより亡くなっている。死亡リスクをくいとめるためには、脂質異常症を早期に発見して、生活スタイルの改善や治療をはじめることが必要だ。

 脂質異常症かどうかは、血液検査の結果により診断される。チェック項目は、悪玉のLDLコレステロール、善玉のHDLコレステロール、中性脂肪の値だ。

 健康日本21(第二次)では、総コレステロールが240mg/dL以上の人の割合を男性 10%、女性 17%に減らすことが目標とされているが、現状は男性 14%、女性 25%となっている。

 また、LDLコレステロールが160mg/dL以上の人の割合を男性 6.2%、女性 8.8%に減らすことが目標とされているが、現状は男性 9.8%、女性 13.1%だ。

食後に中性脂肪が高いと心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇

 脂質の管理では、コレステロールの数値が注目されることが多いが、実は中性脂肪も動脈硬化と関連が深い。

 中性脂肪(トリグリセライド)は、脂肪組織に蓄えられてエネルギーの貯蔵庫として働いたり、内臓脂肪となり体温を維持したり、内臓を保護する役割を果たしているが、増えすぎてバランスが崩れると、動脈硬化を加速させてしまう。

 日本動脈硬化学会は2022年に、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」を改訂し、そのなかで「脂質異常症」の新しい診断基準も発表した。

 中性脂肪の値は、食事によって上昇する。それまで「脂質異常症」の診断での中性脂肪の基準は「空腹時150mg/dL」のみだったのが、ガイドライン改訂により、「非空腹時175mg/dL」という新しい基準が追加された。

 これは、食後の中性脂肪の値が高くなっている場合は、たとえ空腹時の中性脂肪値が低くても、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが上昇することが分かってきたためだ。

中性脂肪は食事の影響を受けやすい 中性脂肪が高いと脳卒中リスクが上昇

 非空腹時の中性脂肪値の上昇は、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを高めることが、デンマークのコペンハーゲン大学の研究で明らかになっている。

 「中性脂肪値は、絶食後8~12時間で測定されることが多いのですが、ほとんどの人は朝食前の数時間を除いて、1日の多くの時間に非絶食状態になっています」と、同大学病院のジェイコブ フライバーグ氏は言う。

 「食事の影響を受けやすい中性脂肪と、心筋梗塞や脳卒中との関連が、これまで見落とされていた可能性があります」としている。

 研究グループは、「コペンハーゲン市心臓研究」に参加した20歳~93歳の1万3,956人の男女を対象に調査した。うち1,529人が脳卒中を発症した。

 解析した結果、非空腹時の中性脂肪値が高いと、脳卒中の発症率が上昇することが分かった。男性の脳卒中のリスクは、非空腹時の中性脂肪値が89~176mg/dLだと30%、177~265mg/dLだと60%上昇した。

 女性でも脳卒中のリスクは、非空腹時の中性脂肪値が89~176mg/dLだと30%、177~265mg/dLだと100%上昇した。

食事や運動などの改善により中性脂肪は大幅に下げられる

 米国心臓学会(AHA)の発表によると、食事や運動などの生活スタイルを改善し、健康的な体重を維持することで、中性脂肪の値の上昇を20~50%減らすことができる。

 「生活スタイルを改善することで、中性脂肪値の上昇の多くを軽減できることが確かめられたのは、良い知らせです」と、メリーランド大学公衆衛生学部・心臓病予防センターマイケル ミラー所長は言う。

 「コレステロールが高くなっている場合は、生活改善は重要ではあっても、それだけで十分に解決できないことが多いのですが、中性脂肪は食事や運動などにより改善しやすいことが分かりました」としている。

 食事や運動などの生活改善、体重管理に取り組むことで、中性脂肪値だけでなく、血糖値や血圧値も下げられ、代謝性疾患のリスクを減らすことができる。

中性脂肪を下げる生活スタイルとは? 肥満のある人には減量を推奨

 研究グループが、過去30年間に発表された500件以上の研究を分析した結果、中性脂肪を下げるために、次の生活スタイルが勧められることが示された。

  • 糖質をとりすぎないようにする
  • お菓子や清涼飲料など多く含まれる単糖であるフルクトースをとりすぎないようにする
  • 動物性食品に多く含まれる体に悪い飽和脂肪酸を1日のエネルギー摂取量の7%以下に抑える
  • 体に悪いトランス脂肪酸をとらないようにする
  • アルコールを飲みすぎないようにする
  • 活発なウォーキングなどの運動を週に150分行う
  • 健康的な体重を維持する

 「健康的な食事や運動に取り組み、肥満のある人は体重を減らすことで、中性脂肪を20~50%と大幅に下げられることが分かりました。中性脂肪値は、空腹時だけでなく、非空腹時に検査をすることも大切です」と、ミラー所長は言う。

 「中性脂肪が高くなっている方には、野菜や糖質の少ない果物を十分に食べ、食物繊維が多く含まれる全粒穀物や、不飽和脂肪酸が多く含まれる魚なども食べることをお勧めします」。

 「米国の成人のほぼ3分の1が、中性脂肪値が150mg/dL以上と高く、最近では20~49歳の若い人でも中性脂肪値が上昇していることが示されています。これは、若い世代でも2型糖尿病や肥満が増えていることが反映されています」としている。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 (一般社団法人 日本動脈硬化学会)
Nonfasting Triglycerides and Risk of Ischemic Stroke in the General Population (JAMA 2008年11月12日)
Dietary, lifestyle changes can significantly reduce triglycerides (米国心臓病学会 2011年4月24日)
Triglycerides and Cardiovascular Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association (Circulation 2011年4月18日)
[Terahata]
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