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運動でメンタルヘルスを改善 すべての運動にうつ病を軽減する効果が ウォーキング・ヨガ・ダンス・筋トレを調査

 ウォーキング・ジョギング・ヨガ・ピラティス・ダンス・太極拳・気功・筋力トレーニングなど、運動や身体活動はどんなものであっても、メンタルヘルスを改善するのに有用であることが分かった。

 ウォーキングやヨガなど、低・中度の強度の運動であっても効果を期待できるが、運動の強度を高めると、さらに効果を高められる可能性がある。

 「運動に含めて、社会的な交流や、マインドフルネス、自然とのふれあいなどを組み合せると、よりプラスの効果を得られる可能性があります」と、研究者は指摘している。

運動のメンタルヘルス不調を改善する効果を調査

 ウォーキング・ジョギング・ヨガ・ピラティス・ダンス・太極拳・気功・筋力トレーニングなど、運動や身体活動はどんなものであっても、メンタルヘルスを改善するのに有用であることが、オーストラリアのクイーンズランド大学やオーストラリアン カトリック大学などの研究で示された。

 ウォーキングやヨガなど、低・中度の強度の運動であっても、毎日行うことで効果を期待できるが、運動の強度を高めると、さらに効果を高められる可能性があるという。

 また、運動に心理療法の専門家による適切な指導やアドバイスがともなうと、うつ病を軽減する最大の効果を期待できるとしている。

運動・身体活動はうつ病の治療にも有用

 うつ病になると、憂うつな気分になったり、食欲・睡眠欲・性欲などさまざまな意欲が低下したり、身体的な自覚症状をともなうことが多い。

 ストレスや強い悩み、不安など、心身の健康や社会生活、生活の質に深刻な影響をもたらす精神的および行動上の問題は、「メンタルヘルス不調」として理解されている。

 世界保健機関(WHO)によると、うつ病は世界の成人の5%が発症する、一般的にみられるメンタルヘルス不調だ。重度のうつ病になると、自殺につながる可能性もあり、効果的な治療法が求められている。

 「これまでも、うつ病の人に対して、心理療法や薬物療法と並行して、運動療法が検討されることは多かったのですが、どのような運動をどのように行うと効果的であるか、これまでの研究のレビューや診療ガイドラインでは意見は一致していませんでした」と、スペインのマラガ大学で公衆衛生学や精神医療を研究しているフアン アンヘル ベロン教授は言う。

 「今回の研究で、個々の人やうつ病の重症度、年齢や性別、併存疾患の有無などによって、効果的な運動の傾向はみられるものの、ウォーキング・ジョギング・ヨガ・ピラティス・ダンス・太極拳・筋力トレなど、どのような運動であっても、運動・身体活動はうつ病の治療法として、心理療法や薬物療法と並んで効果を期待できることが示されました」としている。

ダンスによりうつ病が大幅に改善 男性はヨガや気功が効果的

 研究グループは今回、運動療法とうつ病との関連を調べた、1万4,170人の参加者を対象とした218件の研究を解析した。

 対象とした研究には、認知行動療法や抗うつ薬などによる薬物療法などの確立された治療と並行して、運動療法を行った場合の効果を調べたランダム化比較試験も含まれていた。

 運動療法は効果があり、とくにダンスによりうつ病の大幅な改善がみられ、ウォーキングやジョギング、ヨガ、筋トレ、有酸素運動のミックス、太極拳や気功などでも、中程度の改善がみられた。

 ウォーキングやジョギングについては、男女ともに効果的だが、女性は筋力トレーニング、男性はヨガや気功がより効果が高い傾向が示された。また、ヨガは高齢者にとってより効果的で、筋力トレーニングは若い人にとって効果的だった。

 また、ウォーキングやヨガなどの軽い身体活動でも、臨床的に意味のある効果がえられるが、ランニングやインターバルトレーニングなど、強度の強い運動は効果がより大きかった。

 運動療法と薬物療法を組み合せた場合や、また有酸素運動と心理療法を組み合せた場合も、中程度の臨床的に意味のある効果が示され、これらの確立された治療法と並行して運動を行うと、追加の利益がもたらされる可能性が示された。

 高血圧や糖尿病など他の疾患が併存している人でも、運動は効果があり、個人で行う運動でもグループで行う運動でも、やはり効果があることが示された。

社会的な交流や自然とのふれあいを組み合せるとさらにプラス効果

 「今回の調査は、うつ病の診療ガイドラインに、中・高強度の運動を習慣として行うことを付け加える必要があることを支持する結果になりました」と、ベロン教授は言う。

 ただし、対象となった研究のうち、1年以上継続されたものは少なく、参加した患者の多くが身体的・心理的・社会的な障壁を抱えており、重度のうつ病の患者が新たに運動に取り組むのは困難だといった限界もあるとしている。

 「運動に含めて、社会的な交流や、マインドフルネス、自然とのふれあいなどを組み合せると、よりプラスの効果を得られる可能性があります」と、ベロン教授は指摘している。

 「運動の効果について、より多くの質の高い研究で調べる必要がありますが、専門家は、うつ病の治療で主流になっている心理療法や薬物療法と並行して、運動や身体活動を習慣として行うよう患者にアドバイスすることを検討するべきです」としている。

Walking, jogging, yoga and strength training ease depression (BMJ 2024年2月14日)
Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials (BMJ 2024年2月14日)
[Terahata]
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