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健康的な食事が老化を遅らせ認知症リスクを低下 運動も効果的 40歳になったら対策が必要

 健康的な食事スタイルは、老化のペースを遅らせ、認知症のリスクを軽減することが、高齢者を14年間追跡した「フラミンガム心臓研究」で明らかになった。

 健康的な食事は、老化にともなう認知症の27%と、死亡の57%で、それぞれの抑制に関連していた。

 認知症を予防する効果があることが確かめられている方法は、もうひとつある。それは「運動を習慣として行うこと」。

 1日わずか10分の運動でも、認知機能を良好に維持するために役立つ可能性があることが示されている。

健康的な食事により老化のプロセスが遅くなる

 健康的な食事スタイルは、老化のペースを遅らせ、認知症のリスクを軽減することに関連していることが、米コロンビア大学老化センターの研究で示された。研究は、米国国立老化研究所(NIA)の支援を得て行われたもの。

 「フラミンガム心臓研究」は、高齢者に多い心筋梗塞や脳卒中などの効果的な予防策を解明するために、米国で1940年代から行われている大規模研究。

 研究グループは今回、その第2世代研究である子孫コホートのデータを解析した。研究開始時に認知症を発症していなかった、平均年齢69.6歳の高齢者1,644人を対象に、14年間追跡して調査した。うち140人が期間中に認知症を発症した。

 参加者の老化の速度などを判定するために、米デューク大学などが開発した、DNAメチル化を用いた「エピジェネティック クロック(EC)」を使用した。これは、遺伝子の働きを決めるエピゲノムのひとつであるDNAメチル化のパターンを調べることで、個人の生物学的年齢を推定するもの。

健康的な食事の遵守率が高いほど認知症と死亡のリスクは低下

 その結果、健康的な食事スタイルの遵守率が高い人ほど、老化のペースが遅くなり、認知症と死亡のリスクが低下することが明らかになった。老化にともなう認知症との関連の27%と、死亡との関連の57%は、食事と老化の速度の遅さとの関連により説明できるという。

 研究グループは今回、健康的な食事スタイルの代表例として、MIND(マインド)ダイエットについて調べた。

 MINDダイエットは、健康的であることが知られる「地中海式ダイエット」と、高血圧改善のための「DASHダイエット」をかけあわせて、米ラッシュ大学などが考案した新しい食事スタイル。心臓病だけでなく、認知症の予防も含めて作られている。

 「地中海式ダイエット」は、野菜・豆類・果物・全粒穀物などの植物性食品と、新鮮な魚介類、地中海地域の特産のオリーブオイルなどを組み合わせた食事スタイルで、肥満やメタボの予防効果があることが知られる。

 一方、「DASHダイエット」は、高血圧の予防・改善のために開発された食事スタイルで、減塩しながら、脂肪分の少ない肉や魚、玄米や全粒パンなどの全粒穀物、野菜・ナッツ・豆類などを積極的にとり、カリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維などを十分にとることが勧められている。

食事の改善は老化を遅らせ脳の健康にも良い

 「今回の研究により、健康的な食事は、老化に関するいくつかのシステムのプロセスにより、認知症の進行を少なくとも部分的には抑制することが示されました」と、同センターで遺伝子や環境が老化にあたえる影響を研究しているダニエル ベルスキー氏は言う。

 「これまでの研究でも、健康的な食生活をおくっている人は、生物学的な老化のプロセスが遅くなり、認知症の発症リスクが低下することが示されています」。

 「食事スタイルや栄養と、脳の老化との直接的な関連性について解明するために、観察研究をさらに実施する必要があります。より多様な集団で食事と老化との関連を確認できれば、認知症の予防・改善に役立てられるようになる可能性があります」としている。

ウォーキングなど運動にも認知症を予防する効果が
1日に10分の運動でも脳の老化を抑えられる

 認知症を予防するために効果的であることが確かめられている方法は、もうひとつある。それは「運動を習慣として行うこと」だ。

 「フラミンガム心臓研究」に関する別の研究では、1日わずか10分の運動でも、認知機能を良好に維持するために役立つ可能性があることが示された。

 米ボストン大学などの研究チームは、同研究に参加した、認知症や心疾患のない2,770人の男女を対象に、平均年齢48.7歳のグループと同71.3歳のグループに分けて調査した。

 その結果、ウォーキングなど、1日10~20分の中等度~高強度の身体活動を行っている人で、認知機能が良好である傾向がみられた。

 さらに中年のグループでは、わずか10分の中強度の身体活動であっても、続けられている人は、言語記憶が良好だった。高齢のグループでは、身体活動の強度ではなく量が、認知機能の高さと関連していた。

 自宅にいるときはソファーに寝そべり、テレビやスマホなどを見ながら長時間を過ごし、体を動かさない。そんな生活を続けていると、将来に認知症の発症リスクが高まるおそれがある。

 研究グループの別の研究では、40歳時に運動能力が低下していると、20年後に脳が早く老化する傾向があることも示されている。

 40歳の時点で運動中に体に取り込まれる酸素の最大量を示す「最大酸素摂取量(VO2max)」が低下し、運動能力が低下していた人は、20年後に脳が早く萎縮していた。40歳の頃にウォーキングやランニングをするとすぐに息切れするという人は注意が必要だ。

 「運動は激しいものである必要はなく、通常のウォーキングなど中強度の運動でも、脳への良い影響を期待できます。もっとも危険なのは、座ったままの時間が長く、まったく運動を行わないことです」と、同大学で内分泌代謝・糖尿病・栄養・体重管理を研究しているニコル スパルタノ氏は述べている。

Study Shows a Healthy Diet is Linked with a Slower Pace of Aging, Reduced Dementia Risk (コロンビア大学 2024年3月14日)
Diet, Pace of Biological Aging, and Risk of Dementia in the Framingham Heart Study (Annals of Neurology 2024年2月26日)
Accelerometer-determined physical activity and cognitive function in middle-aged and older adults from two generations of the Framingham Heart Study(Alzheimer's & dementia 2019年10月15日)
[Terahata]
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