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職場でのストレス反応が高い職員ほど体重増加のリスクが高い 職場環境を改善して肥満に対策 1万人強を調査
2024年11月05日

職場でのストレス反応が高い職員ほど、体重増加のリスクが高いことが、大阪大学が1万人超の教職員を対象に最大7年間追跡した、ストレスチェックと健診のデータ解析により明らかになった。
心身のストレス反応が高い職員は、10%以上の体重増加のリスクが高いことが分かった。
「1万人強の大規模データを利用し、職場での心身のストレス反応が高い人ほど体重増加のリスクが高いことを明らかにしました。今後、職場でのストレス対策の重要性について議論が高まることが期待されます」と、研究者は述べている。
心身のストレス反応が高い職員は10%以上の体重増加のリスクが高い
職場でのストレス反応が高い職員ほど、体重増加のリスクが高いことが、大阪大学が1万人超の教職員を対象に最大7年間追跡した、ストレスチェックと健診のデータ解析により明らかになった。 研究グループは、2016〜2021年度にストレスチェックを受けた大阪大学の教職員1万36人(19〜65歳)を2022年度まで追跡し、ストレスチェックの結果と体重増加の関連を調査した。 その結果、心身のストレス反応が高い職員は、10%以上の体重増加のリスクが高いことが明らかになった。 ストレスチェックの3領域[仕事のストレス要因(A項目 17問)、心身のストレス反応(B項目 29問)、周囲のサポート(C項目 9問)]について調査。ここでの「心身のストレス反応」は、▼不安だ、▼ゆううつだ、▼動悸や息切れがする、▼眠れないといった状況をさす。
心身のストレス反応(B項目)の点数分布と10%以上の体重増加のリスク
心身のストレス反応の項目の点数が上がるにつれて肥満リスクは上昇した
心身のストレス反応の項目の点数が上がるにつれて肥満リスクは上昇した

出典:大阪大学、2024年
職場環境の改善によるストレス軽減が肥満予防につながる可能性
研究グループは今回、心身のストレス反応の点数にもとづいて、下位から0~49%、50~74%、75~89%、90~100%の4群(Q0~49、Q50~74、Q75~89、Q90~100)に分類し、10%以上の体重増加リスクを算出した。 心身のストレス反応がもっとも低い職員(Q0~49)に比較して、Q50~74、Q75~89、Q90~100の職員の体重増加リスクは、それぞれ1.0倍[95%信頼区間 0.8~1.2]、1.3倍[同 1.0~1.6]、1.4倍[同 1.1~1.8]であり、Q75~89およびQ90~100の職員の体重増加リスクが上昇していた。一方、仕事のストレス要因と周囲のサポートでは、体重増加のリスクはみられなかった。 職場のストレスは、大きな社会的問題と理解されており、対策も講じられてきたが、厚生労働省の「労働安全衛生調査」によると、職場でストレスを感じている労働者は2022年には8割を超えており、職場のストレスに対する施策は十分な成果を得られていない。 さらに、2019年からはじまった働き方改革も、残業時間の総時間数の減少に寄与したものの、経営者側の残業代圧縮に逆用され、従業員は短時間で多くの仕事をしなければならない状況におちいり、よりいっそう心身のストレスにさらされるという悪循環につながっている。 「本研究は、1万人強の大規模データを利用し、職場での心身のストレス反応が高い人ほど体重増加のリスクが高いことを明らかにしました。職場環境の改善によるストレス軽減が、肥満予防につながる可能性を示唆する研究成果です。今後、職場でのストレス対策の重要性について議論が高まることが期待されます」と、研究者は述べている。 「国民1人ひとりの健康を維持するためには、肥満防止対策は根幹をなす施策だと言えます。職場の心身のストレスが肥満のリスクであるという啓発を通じて、職場環境への介入により職場のストレスを低下させ、従業員の方々の健康リスク低減が達成されることが期待されます」としている。 研究は、大阪大学大学院医学系研究科の松村雄一朗氏、キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載された。 大阪大学大学院医学系研究科Association of psychological and physical stress response with weight gain in university employees in Japan: a retrospective cohort study (Journal of Occupational and Environmental Medicine 2024年10月2日)
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