中学生・高校生 2万人を対象にした思春期アンケート調査
No.5 子どもが死にたいと思うとき(悩みについて)
厚生労働省 子ども・子育て支援推進調査研究事業
永光 信一郎(久留米大学小児科学講座 准教授)研究班
今回も、前回に引き続き、「子どもが死にたいと思うとき」についての調査結果をご報告します。どのような悩みを持っている子が、特にそのような気持ちになるのかをアンケート結果から考えていきましょう
友だちとの悩み(回答:中学生12,630人、高校生9,043人)
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友だちとの関係のことで悩みがある中学生の4人に1人、高校生の5人に1人ですね。そして、友だちとの悩みを持っている半数以上が「死にたいと思ったことがある」と回答しました。
友だちやクラスメートから無視されると、死にたい気持ちが高まることがあります。クラスにはいろいろな子がいて、無理に周りに合わせる必要はないことや「一対一で安心できる友だちを見つける」ことや、「クラス以外で安心できるところを見つけましょう」と、伝えていきましょう。
いじめの悩み(回答:中学生12,362人、高校生9,043人)
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いじめのことで悩みがある子は、友だちとの悩みがある場合に比べてもっともっと死にたい気持ちが高まる傾向が見られました。
いじめられているときは、勇気をもってSOSを出すこと。そのSOSをキャッチしてくれる人がいること、SOSの出し方など、日頃から学校や家庭で話し合うことが大切であることを伝えて下さい。
両親との悩み(回答:中学生12,411人、高校生9,043人)
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両親との関係のことで悩んでいる中高生も多いことがわかります。また、両親との関係で悩んでいる子も、死にたいと思う傾向があります。
「誰かから守られている」という気持ちが大切です。そして、両親との関係に悩みがない子の中にも、死にたいと思う子がいることも知っていてください。
性の悩み(回答:中学生12,337人、高校生9,043人)
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性(性交渉・自分の性など)のことで悩んでいる学生も数%います。特に、性別違和といって、自分の性(男性か女性か)に違和感を持っている人には、十分に相談にのってあげる必要があります。
ネットいじめの経験(回答:中学生13,130人、高校生9,034人)
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統計の専門家が計算した結果、ネットいじめが最も死にたい気持ちにさせるリスクが高いことがわかりました。知らない間に、あっという間に中傷が広がるなど、本人が受けるダメージは他のいじめに比べてとても強いので、そうならないよう注意が必要です。
世界各国で同じ問題が起きています。安易な書き込みが人を傷つけることもあることや、被害に会ったときの対応の仕方など、子どもたちに早くから教えていくことも必要と思います。
全世界で同じ問題が起きています。安易な書き込みが人を傷つけることもあることや、被害に会ったときの対応の仕方など、子どもたちに早くから教えていくことが求められています。
成績の悩み(回答:中学生12,814人、高校生9,043人)
将来の進路の悩み(回答:中学生12,797人、高校生9,043人)
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成績や進路で悩んでいる学生は多くいますが、今回の調査結果では、その他の悩みや出来事に比べて、死にたい気持ちになる傾向は高くありませんでした。しかし、将来の進路のことで悩んで、気持ちが沈んだり、何もする気がなくなったりすることもありますので、注意が必要な場合もあると考えています。
子どもの自殺率はやや増加にあります
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子どもたちのどんな悩みや出来事が、死にたい気持ちを高めるかについて、学校関係者、医療関係者、保護者の方々に知っておいて欲しいと思います。
自殺の予防については、「的確にその気持ちをスクリーニングできる」こと、「その気持ちがどのくらい強いか評価して適切な支援を提供する」こと、そして「自殺予防のための介入的な保健教育が大切」だろうと思います。
子どもの自殺率はやや増加していて、自殺は10~14歳の死因の第2位、15歳~19歳では第1位になっています。皆さんと一緒にこれからも、子どもの自殺を防ぐ方法を考えていきたいと思います。