オピニオン/保健指導あれこれ
中学生・高校生 2万人を対象にした思春期アンケート調査
No.6 高校生の性交経験と生活環境・保健指導について
厚生労働省 子ども・子育て支援推進調査研究事業
2018年10月15日
高校生の性交経験の有無と各悩みの関連性
性交経験の有無と健康感について(回答:高校生7,904人)
性交経験の有無と孤独感について(回答:高校生7,895人)
性交経験がある高校生も、ない高校生も健康感は同じでした。 性交経験がある、または性交経験のない高校生の中で、孤独感「ひとりぼっちだと感じている子の割合」は一見変わりないように見えますが、性交経験があり、いつもひとりぼっちだと答えている人は4.5%でした。一方、性交経験がなくて、いつもひとりぼっちだと答えている人は1.5%でした。その差は3倍でした。性交経験の有無とネットいじめについて(回答:高校生7,922人)
性交経験の有無と希死念慮について(回答:高校生7,868人)
ネットいじめを受けた率は、性交経験なしの子の1.5%に対して、性交経験ありの子では5.2%、3倍以上になりました。 性交経験のありの方の10%が「過去に死ぬことを試みた」と回答しています。性交経験のない方の2倍です。 アンケート調査だけで原因を追究することはできませんが、「性交経験」「ひとりぼっち」「いじめ」「死にたい」、これらと強い関係があったものがありました。それは「1日のスマホ・ネットゲーム利用時間」でした。 利用時間が6時間以上の子は、1時間以内の子に比べ、性交経験が6倍、ひとりぼっちが3倍、いじめが3倍、死にたい気持ちも3倍でした。つまり、ひとりぼっちだから、死にたいと思うから、スマホを頼りにする。スマホを利用する時間が長いから、ネットいじめに合う危険性も高くなるかもしれない。そして、性交経験の機会もスマホ利用で増えるという悪循環が考えられます。性交経験の有無と悩みの割合について
19種類の悩みに対して、性交経験のあった方とない方、それぞれ何%の方がそれぞれの悩みをもっておられたか調べました。ほとんどの項目で性交経験ありの方のほうが、悩みの保有率が高く、特に性に関することの悩みは、10倍から30倍になっています。学校での保健指導と性体験の有無について
グラフでは、学校で習った性教育の内容と、それらについて「習った」と回答した学生の率を学年別に記載しています。ミドリで示すのが命や身体について、ピンクで示すのが先ほどの性感染症、人工妊娠中絶、妊娠出産など主に性に関することです。 性についての知識を習得された(学校で教わった)中学3年から高校1年にかけてピンクのグラフが急に上昇していることから、学生は教えられることによって、習得されていくということが改めて見えてきました。これは保健教育の大切さを再認識する結果です。 教育によって、思春期の危険行動も予防できるかもしれないということがわかりました。最後に
今回の調査で「家族の会話」と「教育」の重要性を感じました。 子どもだけでなく、大人も家族がどのように会話をしていったらいいのか、どのように教えていったらいいのか悩んでいるのではないかと思います。 学校教育だけに頼るのではなく、家庭教育、コミュニティでの教育も充実させていくことが必要だと思います。 少しだけ、今回の調査で得られたスマホ・ネットゲーム利用の時間と思春期の課題の関係をお示ししましたが、決してスマホは悪者でなく、保健教育の分野にもスマホに活躍してもらえるようにできればと思います。 今回のアンケート調査結果や、思春期の保健課題など、皆様からご意見がいただければ幸いです。 ご意見投稿はsukoyaka@kurume-u.ac.jp(久留米大学 研究班)までよろしくお願いいたします。「中学生・高校生 2万人を対象にした思春期アンケート調査」もくじ
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