オピニオン/保健指導あれこれ
がんと就労 ~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)

No.3 人事労務担当との連携

東京医療保健大学 医療保健学部看護学科
佐々木 美奈子
ヒント10.利用可能な制度や柔軟な勤務パターンについて確認し、調整します
 がんを治療中・治療後は、職場復帰できたとしても、体力が治療前の状態まで回復するには時間がかかります。そのため、可能な限り、時間短縮、フレックス制度や在宅勤務制度を利用して無理のない復職を計画することが、結果的には持てる力を早く発揮できることにつながります。

1. 会社の人事制度について確認します
 勤務時間や勤務パターンを変更することにより、負担が軽減できないかを確認します。就労規則を基に利用できる会社の制度を把握します。実際に利用可能かどうか、利用条件の有無、利用の仕方、利用による査定・報酬上の取り決めなどを人事労務担当者に確認します。

 必要に応じて、または本人の希望に応じて、人事労務担当者から本人への説明を依頼します。さらに、利用できる制度がない場合は、社員が安全に働くための制度について進言することもあります。

2. がんをもつ労働者の仕事内容、仕事のスケジュール、職場の状況について把握します
 職場の上司・同僚から社員の仕事内容・スケジュールなどを聞き取ります。職場の負担が過度とならない方法で社員の勤務調整が可能となるかを検討します。同僚の負担が増えることも想定されますので、上司・同僚の不安や不満についても聞き取ることが大切です。

 がんをもつ労働者にも治療の状況、スケジュール、現在の体調・体力、今後の見通しについて聞くとともに、生活状況についても、家庭生活を含め、丁寧に聞き取り、支援につなげていきます。

 人事労務担当者との連携に関する2つのヒントを紹介しました。配置転換や勤務パターンの変更が、本人の今後のキャリアに影響を及ぼすことも多くあります。本人の希望、不安についても十分に聞き取り、納得して復職できる環境を整えることが大切です。配置転換を望まない場合、休職をするなどの措置を取る場合もあります。職場の状況により、選択肢は限られるため、本人の希望通りの配置となるとは限りませんが、まずは、本人の素直な希望を聞き取ることが大切です。

著者プロフィール

  • 佐々木 美奈子
  • 佐々木 美奈子
    東京医療保健大学 医療保健学部看護学科

    経 歴

    1987年 富士電機株式会社 保健師
    2007年 東京大学 大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 講師
    2009年 東京医療保健大学 医療保健学部看護学科 准教授
    2011年 東京医療保健大学 医療保健学部看護学科 教授
    現在に至る

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