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運動がアルコールによる脳へのダメージを軽減する
2013年04月22日

ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動には、アルコールの飲み過ぎによって起こる脳のダメージを修復する効果がある。加齢に伴う認知能力の低下を遅らせることも期待できる。米コロラド大学の研究者が発表した。
脳には、神経細胞が集まっている「灰白質」、神経線維の集まっている「白質」などの層がある。アルコールを過度に摂取し続けると、灰白質が減少し、脳が小さくなる脳萎縮が起こることが過去の研究であきらかにされている。 アルコール以外にも、高血圧や肥満、加齢なども脳萎縮の原因だ。高齢化が進み脳萎縮が進展すると、記憶力、注意力、意思決定力などさまざまな面で障害が出てくる。 「大量に飲酒する人では脳萎縮が高い割合でみられることは分かっていました。飲酒量と脳萎縮の程度には正の相関がみられることも報告されています」と、コロラド大学ボルドー校のホリス カーロイ氏(神経科学)は話す。 一方で、運動を習慣として続けている人では、アルコール飲酒による脳萎縮が改善されている傾向があることも分かっていた。「脳でどのような変化が起きているのかを調べる必要があります」と、カーロイ氏は説明する。 研究チームは、飲酒習慣がある60人の被験者を対象に、「磁気共鳴画像装置(MRI)」によって、脳の画像診断を行った。「拡散テンソル画像(DTI)」という新しい検査法により、脳の神経の走行を詳しく分析した。 被験者の3ヵ月の運動の頻度をアンケート調査したところ、週に1回しか行わないという人から、合計7時間の運動をしているという人までさまざまだった。 結果は、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を行っている人では、大量飲酒を習慣としていても、脳萎縮が少なく、運動量が多い人ほど、脳萎縮の改善効果が高い傾向が示された。 「脳の健康を維持するのに、健康的な食事や運動が役立ちます。特に運動は重要で、定期的な運動により、脳の血管や神経を保護する効果を得られる可能性があります」(カーロイ氏)。 運動をどれだけ行えば、飲酒による脳のダメージを防げるのかは、今後の研究で詳しく調べる必要があるという。 「ただし、運動をしていれば、アルコールを好きなだけ飲んでいいというわけではないので、注意してください」と研究者は指摘している。 Aerobic exercise may protect cognitive abilities of heavy drinkers, says CU study(コロラド大学 2013年4月16日)
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