ニュース
認知症を抑える化学物質を発見 世界ではじめての薬になる可能性
2015年12月22日

アルツハイマー型認知症で起きる脳内神経細胞の減少を抑える化学物質をみつけたと、国立長寿医療研究センター、理化学研究所、同志社大学の共同研究チームが発表した。
この化合物は不整脈の治療に使われている薬に含まれており、臨床試験で効果と安全性が確認できれば効果的な新薬になる可能性がある。
この化合物は不整脈の治療に使われている薬に含まれており、臨床試験で効果と安全性が確認できれば効果的な新薬になる可能性がある。
認知症の進行を防ぐ薬の開発につながる成果
アルツハイマー型認知症は、神経細胞内にある「タウ」と呼ばれるタンパク質が異常なかたちで集積して、神経細胞が減少することで発症する。
最近の研究で、脳の機能低下には神経原線維の変化、神経脱落が伴うことが明らかになっており、これを抑制することで認知症の進行を抑えられると考えられている。
研究チームは、実験マウスの脳でタウタンパク質の凝集過程を詳しく調べ、「オリゴマー」(分子の塊)を形成した状態「顆粒状タウオリゴマー」が、「タウ線維」の形成につながることを明らかにした。
このタウ繊維が増えると、脳神経は構造が破壊され死滅していく。そのため「顆粒状タウオリゴマー」がつくられるのを防ぐ効果的な治療が求められている。
研究チームは、理化学研究所が保管する天然化合物ライブラリーの中からタウが凝集するのを抑える化合物を探索した。
その結果、不整脈や気管支ぜんそくの治療薬である「イソプロテレノール」にも含まれている化合物がタウ凝集を抑える効果があることをマウスの実験で確認した。
実験は、タウが過剰に作られて認知症のような症状を起こすモデルマウスを使って実施。その結果、通常3ヵ月で神経細胞が目立って減少するが、イソプロテレノールを餌に混ぜて投与したところ、タウ線維がつくられなくなった。
「タウ線維」がなくなると神経細胞は減少せず、脳機能の低下や行動異常も抑えられることを確かめた。
アルツハイマー型認知症では、脳にタンパク質「アミロイドベータ」が蓄積することも分かっている。従来の薬の開発は、主にアミロイドベータに着目し行われてきた。現在国内で4種類の薬が承認されているが、症状の進行を確実に止め、回復する決定的な治療薬はまだない。
「今回の研究では、タウに着目して効果的な新しい治療薬を開発することを目指している。認知症の進行を止める世界ではじめての薬になる可能性がある。人での効果をできるだけ早く明らかにしたい」と研究者は述べている。

掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
- 2025年02月10日
- [高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
- 2025年01月23日
- 高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月06日
-
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」 - 2024年12月24日
-
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~ - 2024年12月17日
-
子宮頸がん検診で横浜市が自治体初の「HPV検査」導入
70歳以上の精密検査無料化など、来年1月からがん対策強化へ