虫歯や歯周病を防ぐための5つの対策 80歳までに歯を20本以上

むし歯や歯周病などの口の中のケアで悩んでいる人が多い。いったん口の中の健康が悪化すると、もとの状態に戻すのは難しく、高額な医療が必要になるケースも多い。ふだんから口腔内ケアをしておくことが大切だ。
「80歳までに歯を20本以上保とう」と日本歯科医師会が提唱し設立された「8020推進財団」が行ったアンケートによると、食事が「おいしい」と感じている人は平均で約20本の歯がある人で、「おいしくない」と答えた人は平均で約11本しかなかった。
歯を失う原因となるのは歯周病やむし歯だ。味わいながら食事を楽しむために、よく噛むことが必要で、そのためには口腔内ケアが欠かせない。米オハイオ州のクリーブランド クリニックは、大人が口腔内ケアで注意するべき5つのポイントを解説している。
糖質を含んだ食べ物が歯と歯のあいだに挟まり、歯磨きできちんと除去されないと、歯垢と呼ばれる粘ついた沈着物が生成される。
歯垢に含まれるむし歯菌(う触原性細菌)が糖質から歯のエナメル質を浸食する酸をつくりだす。これがむし歯の原因だ。
日本でも厚生労働省の調査によると、55歳以上の人でむし歯をもつ人の割合が年々増えている。歳をとるとだ液腺の機能が低下し、だ液の量が減少することで口腔内の自浄作用が減り、むし歯菌が住みつきやすくなる。
大人のむし歯は、新たに起こるものより、むしろ治療済みの歯に起こるものが多いので注意が必要だ。むし歯は「かぶせ物などの境目」や「露出した歯の根元」に起きやすい。
むし歯の治療によるかぶせ物や詰め物は、噛む力が繰り返し加わると、歯を接着するセメントが劣化し隙間ができる。その隙間に細菌の塊であるプラークが付着して、内側でむし歯が進行する。
自分でできる口の中のケアの代表は歯ブラシによるブラッシングだ。歯垢や食べカスを取り除き、口の中を清潔にすれば口臭を効果的に予防できる。
歯の表面がきれいに見え痛みも感じないと、異常に気づくのが遅れがちだ。また、加齢、歯周病、強いブラッシングなどによって歯肉が下がり歯の根元が露出すると、そこにむし歯菌が付着してむし歯が起こる。
1本1本の歯を意識して丁寧に磨くことがポイントで、1本につき歯ブラシを20~30回程度小刻みに動かしながら磨けば、歯垢を落とすことができる。歯ブラシの毛先を歯にしっかり当て、歯と歯の間に毛先が入るくらいの力で磨こう。
最近は電動歯ブラシも普及しており、より丁寧に磨きたい人、利き手の関係で左右の磨き方に差がでてしまう人、手先を動かすのが苦手な人などに特に効果的だ。
歯周病とは歯の周りの組織である歯肉や歯を支える歯槽骨に起こる疾患で、「歯周病原細菌」という常在菌が原因だ。免疫力が低下してくると歯周病菌が増え、歯周病を発症する原因となる。
歯周病の予防や治療では、毎日の歯磨きによって歯や歯肉の表面に付着したプラーク(歯垢)を取り除くことが大切だ。本人はしっかり歯磨きをしているつもりでも、きちんと磨けていないことがよくある。
歯科で定期的な検診を受け、プラークコントロールがきちんとできているかどうかをチェックすることが歯の寿命を延ばすことにつながる。
定期検査では、視診やエックス線検査による「むし歯の検査」、歯周ポケットの測定や歯石のチェックなどの「歯周病の検査」、「歯石の除去」などが行われる。歯石は、歯垢が堅くなったもので、歯磨きでは除去できないため歯科で取り除く必要がある。
また、歯科では専門家による徹底した口腔清掃(PMTC)や、歯磨剤よりも高い濃度のフッ化物を歯に直接塗る治療や、フッ化物の入った溶液で洗口する治療などを受けられる。

むし歯や歯周病を予防するには、手磨きまたは電動歯ブラシ、フッ素入り歯磨き粉を使用して、できれば1日に2回以上歯を磨くことが必要だ。
歯磨きによって口腔内を清掃し、食べ物のカスや歯垢などを取り除き、プラークを除去できる。フッ素や殺菌剤、酵素などの配合されている歯磨剤は、歯垢を分解して細菌の増殖を抑える効果を期待できる。
液体歯磨きは、歯磨きの際に一般的に使われる歯磨き粉に配合されている研磨剤が含まれていないので歯面を傷つけることがない。
20~30秒間ブクブクうがいをするだけで済み、手軽に使えるので長続きしやすい。歯磨きをした後の仕上げとして使用すると効果的だ。
ただしタバコのヤニや、コーヒーやワインなどにより、歯の表面が着色しやすい人は歯磨き粉を使用するか、歯科でクリーニングを受ける必要がある。
歯の形成に不可欠なカルシウムや、カルシウムの吸収を助けるビタミンDが豊富に含まれる魚介類や乳製品、海藻類、キノコ類などをバランス良く摂ることが大切だ。
また、野菜にはカルシウムや、歯のエナメル質を強化するビタミンA、歯の象牙質の形成に必要なビタミンCが含まれる。食物繊維の多い野菜は、噛むことで唾液の分泌を促し、歯垢を付きにくくする効果を期待できる。
歯周病は糖尿病の第7の合併症とされている。糖尿病の人は、血糖コントロールが不良であると歯周病が重症化しやすく、歯周病が重症であると血糖コントロールが悪化しやすいという悪循環に陥りやすい。
血糖値が高い状態が続くと体の免疫機能が低下し感染症にかかりやすくなったり、唾液の分泌が少なくなるため口の中の細菌を洗い流す作用が弱くなると考えられている。
口の中の病気の予防・治療が内科の病気の予防・治療にとっても重要だ。定期検診は内科やがん検診ばかりでなく歯科検診も年に1度は受けた方がいい。詳しくはかかりつけの医師に相談しよう。
炭酸入りの高カロリーの清涼飲料などを飲み過ぎると歯の健康を損ないやすい。そうした清涼飲料には酸味としてリン酸やクエン酸などの酸が加えられていたり、果糖や砂糖が大量に含まれていることが多い。
歯は口の中が酸性になると溶けだす。基準となるのはPH(水素イオン濃度)が5.5以下の場合だ。普通の水は中性でPHは7程度だが、香り付けのされているフレーバー付きの炭酸飲料はPHが3.5~4.0のものもある。
口の中が酸性に傾いても、通常であれば唾液によって中性に戻される。しかし、清涼飲料を口にする頻度が多かったり、唾液の減る就寝前に飲む習慣があったりすると歯は少しずつ溶かされてしまう可能性がある。
フレーバー付き清涼飲料の中でもレモンやライム、グレープフルーツのような柑橘系のものはクエン酸が添加されており特に酸性度が高い。
清涼飲料の飲み方によっても歯の溶け方は変わっていく。たとえば口に入れてしばらく溜めて飲むのと、そのまま溜めずに飲み込むのと、ストローで飲むのとではかなり違う。口に溜めて飲むと歯がダメージを受けやすいので注意が必要だ。
Could You Be Ruining Your Teeth With These 5 Bad Habits?(クリーブランド クリニック 2015年2月23日)
8020推進財団
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