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脳卒中後の脳の障害は運動プログラムで改善できる 短期間でも効果

 脳卒中を経験した人やその家族にとって興味深い知見が報告された。脳卒中を経験した人は、体系的な運動プログラムに参加することで、身体面だけでなく認知面でも改善を得られることが明らかになった。
脳卒中後の運動は脳にも有益
 脳卒中を経験した人では、最大で85%で行動機能の障害、注意と作業記憶の障害を含む認知障害が起こると考えられている。薬物療法だけで認知障害を改善するのは困難だ。

 「運動や身体活動はさまざまな面で、脳卒中を経験した人にとって大変に効果的です。脳卒中の発症後の認知力の回復を促す有効な戦略となる可能性があります」と、ピッツバーグ大学のローレン オーバーリン氏は言う。

 「認知」とは、主に行動や注意・作業記憶などの脳の高次機能をさす。運動は、行動への注意・処理速度を改善することが明らかになった。

 米国脳卒中学会(ASA)の国際会議で発表された研究は、735人の脳卒中患者を対象とした13件の介入試験の結果を解析したものだ。参加者の脳卒中からの平均経過年数は約2.5年だった。

 リハビリテーション・プログラムの継続期間に関係なく、運動をした患者は運動していない患者に比べて、認知力が優れていることが確かめられた。

 たとえば、中等度の有酸素運動と筋力・バランスのトレーニングを併用することで、脳卒中患者の認知力の向上に有効であるという。

 長期間でなくても、4?12週間の運動プログラムでも効果があり、脳卒中から3ヵ月以上経過していても有効であることが分かった。
12週間の短期プログラムでも効果がある
 効果のあったプログラムは有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動、ストレッチなどを合わせたもので、系統だったものが必要だという。

 「12週間という短いプログラムであっても、認知力を改善するのに効果的であることが分かりました。脳卒中が慢性化している患者でも、運動の介入を行うことで認知力の改善を期待できます」と、オーバーリン氏は言う。

 運動が脳卒中後の知能向上に効果をもたらす理由としては、脳への血行改善、新たな脳細胞の増殖と細胞間の接続の促進、炎症の軽減などが考えられる。

 リハビリテーションに有酸素訓練を組み込むことは重要だが、運動能力に限界のある患者では、運動強度を調整し、徐々に強度を高めていくなどの対応も必要となる。

 「運動は脳卒中患者の生活の質と認知力の改善に大きな影響を及ぼします。運動の効果を再評価し、脳卒中の一次診療に組み込むことが重要です」と、オーバーリン氏は述べている。

Exercise can significantly improve brain function after stroke(米国心臓学会 2017年2月22日)
[Terahata]
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